俺の記憶ストレージ Part 1&2

寂しさは琥珀となり密やかに輝き出す

サンダー Part15:サンダー解散

5thアルバムの短いツアー終了後、EMIからアルバム未収録曲のコンピレーションアルバムが「The Rare, The Raw And The Rest」リリースされます。未発表曲も盛り沢山。本人がライナーノーツをきちんと書いていて、エルヴィス・コステロにせよ、大滝詠一山下達郎に至るまで僕の好きなミュージシャンは自分のキャリアに向き合って振り返り、ライナーノーツをしっかり書いてくれる、という共通点がある。

 

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これは1999年の6月にリリース。当初国内では輸入盤しか流通してなくて、輸入盤を買ったら、しばらくして国内盤が出たのでしょうがなく2枚買ったんですが、調べたら国内盤のリリースはたった2日遅れだった。輸入盤って本国と同じ日に日本に来てたんですかね?定かでは無いですが、当時のタワレコにはこれの輸入盤しかなかった。

 

1999年中頃からしばらくサンダーとしての活動がなく、9月にはルークがアンディ・テイラーとのデュオで5回のライブを行います。

 

当時の貴重なライブレポがこちらに。

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この時のサポートにサンダーのリズム隊の二人が入っていて、差し詰め、山下久美子のバックバンドが氷室京介を抜いたBOOWY状態。こう書くと、雲行きの怪しさが漂ってきます。

 

このときのセトリがこちら。

01 Quiet Life
02 Sleeping With The Past
03 The 1st Day
04 Lightning
05 This World
06 Road to Paradise
07 Save A Prayer
08 Loving You
09 It Could Be Tonight
10 All I Ever Wanted
11 Don't Count Me Out
12 Can't Stop The Rain
13 Waste Of Time
14 Love Will Find A Way
15 Get It On
16 Lady Madonna
17 Be Good To Yourself 

 

ビートルズT-Rexのカバーもありますが、ほとんどが後にリリースされるルーク・ソロに入っているオリジナル。あとデュラン・デュランのセルフカバー。

 

この会場でのみ発売されたのが「Spanish Sessions」というEPで、日本在住の人にはとても買いづらいシロモノ。実際自分も存在だけ知っていたにも関わらず、2008年にダウンロード販売されるまで聴いたことがなかった。

 

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 そして、青天の霹靂。1999年11月某日、衝撃のニュースが飛び込んできました。

 

「サンダー解散」

 

あまりにもショックでした。

 

まさか解散するなんて。解散の理由は、「現在のロックシーンにサンダーの居場所がない」というものでした。

バンドの終わり方は数あれど、こういう終わり方はそれまで見たことがなかった。大抵、仲が悪くなってとか、音楽性の違いでとか、メンバーが死んで、とか或いはやりきって燃え尽きた、とか。これ以上頑張っても、受け入れてもらうマーケットがない、というのはなんとも・・・。サンダーは日本では人気だったけど、それでも居場所がない。

EMIというメジャーレーベルからドロップされ、キャッスル〜イーグルと独立系弱小レーベルを転々としたサンダー。サンダーの音楽性は年々進歩していても、マーケットのトレンドの移り変わりに左右されて売り上げが伸びない。作品のクオリティの高さとマーケットの評価は比例しないってことがあるんだなと。

 

知人が、UKチャートを見ながら「日本と違って、UKは良い音楽は正当に評価されるんだなぁ」と、言っていたことがありましたが、いやいや、そうでもない。良い音楽があっても知られなければ評価されない。それは日本でもUKでも変わらない。現に、今海外で人気の「ジャパニーズ・シティ・ポップ」なんて、3〜40年前の音楽ですよ。Youtubeがあったから知ってもらえたのであって、その時に評価していて初めて「正当に評価されるんだなぁ」と言うべきなのでは?と。

 

このサンダーの解散当時、インターネットはありましたが、一般に普及しているかというと、全然そんなことはありません。ただ、1997年頃のダニーのインタビューによると、日本のサンダーファンのインターネット活動は活発で・・・みたいなことを言っていたので、それなりの盛り上がりはあったようです。実際、自分もコアなサンダーファンの方が運営しているサイト(ホームページ)で情報を仕入れていました。

ただ日本の統計ではありますが、インターネット普及率は1999年の時点で人口比の21%程度。自分がNECのPCを買ってインターネットを始めたのもこの頃でしたが、まだまだ一般層に浸透していたとは言い難い時期。

これよりさらに前のインターネットが全く普及していない時期は、「CDでーた」みたいな音楽誌を毎週チェックしていかないと情報を仕入れることが出来なくて、ミュージシャンの動向を知ることは結構大変な時代でした。

なので、大手のレコード会社がテレビやラジオや雑誌、新聞を使って、(言い方は悪いけど)ゴリ押しすれば、それなりに売れる時代でした。

大手メディア主導でのコントロール下にあったマーケティングが、インターネットが普及するに連れて、その優位性が崩れてきて、インターネットがあればそれなりのマーケティングができるようにはなりました。

とは言え、今度はプラットフォーマーが大手メディア化するんですが、それでも、興味を持てば情報にアクセスすることが容易な時代になった訳です。興味を持つまで、はまだまだ大手メディアに優位性がありますが、一旦興味を持ってもらったら、あとは勝手に情報にアクセスするだけの時代になった。

2003年に復活した後のサンダーは大手レコード会社に力を借りずに自分たちのレーベルで物販やら様々なことを行うことになりますが、それもこれもインターネットがあったからです。インターネットがもうちょっと早く普及していたら、解散してなかったかもしれない。実際、サンダーが復活した2003年頃の普及率は64%程です。

 まあ、ifの話をしても仕方がありません。現実として彼らは解散を選択しました。

 

不幸中の幸いだったのは、メンバー同士が仲悪くて解散したのではない、ということ。

 

「現在のロックシーンにサンダーの居場所がない」というのは、つまり「現在のロックシーンにサンダーの居場所がある」状態になれば戻ってくる、ということなので、ジョン・ボーナムが死んで絶対にオリジナルラインアップで再結成出来ないツェッペリンとか、メンバー同士の仲悪すぎて絶対にリッチーが復帰できないディープ・パープルとは違って、少しだけ望みを持たせた解散ではありました。

 

 伊藤政則さんもこの時の解散発表を驚きを持って書いていましたね。

断言 1998~2008 (BURRN!叢書)

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  • 作者:伊藤 政則
  • 発売日: 2016/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

さて、解散を発表したサンダーですが、仲違いではないので、きちんと解散コンサートを行う、というキッチリとした終わり方を選択しました。

 

1999年の12月に「Farewell Tour」と称して、UKで8公演。

年が明け2000年3月に「Japanese Farewell Tour」と称してなんと9公演。長野や静岡まで行ったのに、札幌はスルー・・・。余程あの時のインフルエンザがトラウマだったんだろうか・・・。

 

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これがその時のフライヤー(チラシ)です。ヤフオクで100円だったので記念に買いました。 クラブチッタ川崎だけで4公演。どんだけ動員するのかと。Big In Japanと言われたMr.Big程の一般知名度はありませんでしたが、いやいや日本での人気は結構すごかったんじゃないかと思いますよ。

 

前回、1999年3月時点での伊藤政則氏のパワーロックトゥデイでの人気アーティストランキングが4週連続1位だった、と書きましたが、その後も勢いは継続し、2000年2月号あたりまでしか確認してませんが、デフ・レパードとサンダーが1位と2位をデッドヒートで争うという。

 

この時のライブの様子は限定VHSの「In Out Put The Kettle On!!!」(後にDVD化)にちょっとだけ収録されてます。「Just Another Suicide」でのクリスのスラップベースソロが見れます。(ケチらずに全部見せてほしい)

 

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この日本公演はCD化され、2000年の7月にリリース。

 

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オープン・ザ・ウィンドウ、クローズ・ザ・ドア

オープン・ザ・ウィンドウ、クローズ・ザ・ドア

  • アーティスト:サンダー
  • 発売日: 2000/07/19
  • メディア: CD
 

 

このアルバムで一番好きなのが「Just Another Suicide」で、途中メンバーのソロ回しがあって、クリスのパートでスティーヴィー・ワンダーの「I Wish」へ。これがかっこいい。

 

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自分が大学に入ってすぐに好きになったバンドがサンダー。そして、自分の大学卒業と同じ時期に日本での解散コンサートを行ったサンダー。僕の大学時代はサンダーで始まり、サンダーで終わりました。大学生活にはいつもそこにサンダーがいた。既に就職が決まっていて、OJTと称して就職先でバイトしていたので、解散コンサートには行けませんでしたが、そんな状況でなかったら東京まで遠征したかった。

 

さらに本当にガチのラストライブが、ロンドンで行われました。それが2000年の5月4日。これで最後です。この時のライブを収録したCDは1万枚限定で発売されました(後に一般発売)。

 

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前も書きましたが、シリアル番号付きのレア盤で、開通したばかりのインターネット回線で不慣れな英語で注文したんですが、届いた時は感涙ものでしたね。

演奏自体はちょっと荒くて、オーラスの「Dirty Love」ではリズム隊がトチるという有終の美を飾れない、ちょっとお粗末な演奏ですが。

しかし、これで本当に終わりです。サンダーを聴きたかったらもう旧譜を聴くしかない。永遠にサンダーの新譜はリリースされない。

 

さよならサンダー。

 

しかし、なぜか物語は続く。story goes on..