俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

ライブ記録:エルヴィス・コステロ&スティーヴ・ナイーヴ 2024 浅草公会堂

日時:

2024/4/12

会場:

浅草公会堂

メンバー:

Elvis Costello (Vo, Gt, Etc.)
Steve Nieve (Key, Vo)

セットリスト:
  1. Watching The Detectives - Shot With His Own Gun - Watching The Detectives
  2. Radio, Radio
  3. Clubland
  4. That Blue Look
  5. So Like Candy
  6. Magnificent Hurt
  7. Battered Old Bird
  8. Unwanted Number
  9. New Amsterdam - You've Got To Hide Your Love Away (Beatles Cover)
  10. Tokyo Storm Warning
  11. Everybody's Crying Mercy (Mose Alison Cover)
  12. Look Up Again
  13. I Still Have That Other Girl
  14. She (Charles Aznavour Cover)
  15. The Man You Love To Hate
  16. More Than Rain (Tom Waits Cover)
  17. I Want You - I Want You (Beatles Cover)
  18. (What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding? (Brinsley Schwarz Cover)
  19. The Whirlwind
  20. Farewell, OK
  21. Alison

参考:Concert 2024-04-12 Tokyo - The Elvis Costello Wiki

メモ:

今回の来日公演のアナウンスがされたのは2023年の11月末日。

www.universal-music.co.jp


札幌在住だし、東京大阪の3公演、そして平日というのはなかなか苦しい。
泊まりになるので最低でも2日休む必要がある。
さらに2月には大阪京都への家族旅行が予定されているのでお金が飛ぶし、4月には子供が中学に入学するのでこれまたお金がかかるし、4月上旬は入学式やら何やらでやたらと忙しい。
行きたいけど、無理そうだなと思っていたら、いつの間にか即日完売。これで一旦諦めがついた。


しかし年が明けて1月末、浅草公会堂で追加公演があるとアナウンスがあり、しかもそれが金曜日だと知る。

www.universal-music.co.jp


4/12なら中学の入学式は終わっているし、金曜日なら1日仕事を休めば行ける。

ここでまた逡巡するのだけれど、コステロのファンならこんなの迷わず行けよと言われるかもしれない。
やっぱりお金がかかるしなぁと。
前回行った2013年の六本木でのライブはたまたま会社の出張と被っていたので2公演見れたけども、札幌からだと往復航空券とホテル代+チケ代になるのでなかなか大変。

しかし、コステロは1954年生まれなので既に69歳。
コステロは来日回数は多い方のミュージシャンだけど、毎年のように日本に来るわけではない。
今回は8年ぶりで、次の来日がいつになるかは全く不明。
仮にまた8年後だとすると77歳・・・いやいやいや。

ほぼ同年齢の達郎さんもいつもライブのMCで言っている。
「この年になるといつ声がでなくなるかわからない」と。

M-1の敗者復活で見てファンになったハイツ友の会。
今年の2月に大阪旅行の折に森ノ宮漫才劇場で見たけど、その後、3月末で解散してしまった。
若手売り出し中のハイツが解散するなんて誰が思いましたか?いつ何が起きるかなんて誰にも分からない。
やっぱり見れる時に見るべきなのだ。

なお、私は決してハイツの顔ファンではないぞ。ラバーガール飛永君と同じ気持ちです。


(そもそも顔ファンなら坂道のファンになっているだろ)


「見たいものは見れる時に見るべし」は真理である。
ただし無理のない範囲でね。


ということで家族に了承を得て、2/8にイープラスで最速プレオーダー受付で申し込み、2/14に無事当選。
航空券はスカイマークの「いま得」で手配し往復で22000円くらい(思ったより安い)。
ホテルは一人だしカプセルで良いかと思い、アゴダ経由で6000円で手配。
チケ代が12000円プラスなんやかんやで13000円、その他移動の交通費合わせて50000円ほど。



あとは公演日を待つだけだったけど、好事魔多し。
公演の1週間前に風邪を引いてしまった。
ちょっと鼻水と熱が出た程度だけど。
奇跡的に前日に平熱に戻ったが体力は回復しておらず、いささか不安な上京。



東京に来たのは2年ぶり。前回は出張だった。
浅草には何度か来たことがあるが、雷門をくぐるのは2005年以来の19年振り。
19年前は一緒に札幌から出張に来た同僚と大黒屋で天丼を食べて浅草をグルグル観光して回っていた。


浅草公会堂に着くと、手形が敷き詰められている。

そういえばこれ、前回来た時に見たが、それが浅草公会堂だったというのは覚えてなかった。
19年後の自分がここでエルヴィス・コステロを見ることになるとは。

浅草公会堂のキャパは1000名程。
座席はまさかの最後列。三階席の最後列。
後ろを来にしなくて良いかとポジティブな気分で乗り切る。


公演前に物販でTシャツやトートバッグが売っていた。Tシャツは大抵買うのだが、¥6,500は流石に高すぎるのでは・・・?


さて、18:00開場。

最近はライブの撮影とか録音を禁止されないことも多く、今回は何も言われなかったのでみんな写真撮りまくり。
私も撮影。このあたりのギアはギター・マガジンあたりで特集求む。

年齢層は高めで還暦くらいの人がメイン層かな?だけど、時折同じ年くらいの人もいる感じ。
10年前はもうちょっと若い人いた気がするけどやっぱりリスナーも合わせて年を重ねていくなぁ。

ちなみに終演後のサイン待ち行列で、聞き耳を立てていたら、
なんか良く知らないミュージシャンだけど外タレなので見に来ました、みたいな家族もいて、「ボーカルの人は良く分からなかったけどピアノの人上手かったね」などと言っていた。そういう人も来ていたようだ。
ピアノの先生がどうのこうのと聞こえたので、誰かにスティーヴ・ナイーヴを勧められたのかもしれない。

一方でコステロという人は偏執狂的なマニアが多い人でもある。それがコステロ
僕の両サイドに座った人は割とマニアな曲に反応していたので少なくともニワカな人ではなさそうだった。


3階席の一番うしろからの眺め。


19:00開演。

ほぼ定刻で暗転し、Magnificent Hurtの chelmico Remix が大音量で流れた後(後で分かったが chelmico の二人が見に来ていたらしい)、コステロとスティーヴ・ナイーヴが登場。
「Watching The Detectives」っぽい構成音の響きだなと思ったらやっぱりDetectives だった。いきなりこれやるのか。

ギターはフェンダー・ジャスマスターだがいつものブラウンじゃなくて、ブルー。
コステロといえば茶色のジャズマスターですよ、普通。これね↓

ラージヘッド、シングルコイル、スイッチたくさん、トレモロアーム、ローズウッド、白のピックガード、これ何のジャズマスターですか?こんなの前から持ってたっけ?
近所の名物店長がいる楽器屋に聴いてみたら、多分これカスタムのモデルで100万近くしますよ、とのことだった。本当ですかギタマガさん、調査お願いします。

良いなあ青のジャズマスター、これ欲しい。

www.youtube.com


気になったので、2022年2月号のギターマガジンのインタビューを引っ張り出してきて読んでみた。

インタビュアー:メインで使っているビンテージのジャズマスターは、リフィニッシュや指板への名前入れが施されていますね?


EC:まず、最初のジャズマスターは俺が手に入れた時、すでに家具に使うような茶色い塗装がされた状態だったんだ。あまりにも醜かったので、自分で赤く塗って使っていた。そのバックアップ用に持っていたジャズマスターはシルバーに塗り、デカデカと指板に自分の名前を入れたものがメイン・ギターとなったよ。

「Watching The Detectives」でプレイしていたのは赤い塗装のほうのジャズマスターだ。ここ数年になって3本目のジャズマスターを手に入れて、ワイヤリングをやり直して使っている。やっぱりビンテージの古いものって配線に難のあるものが多くて、ラジオの音なんかを拾ってしまうことがあるんだ。
歪むようなサウンドにするためにはある程度の手入れが必要なんだけど、それをしてしまうとカラーが失われてしまったりする。そういったことがありながらも、俺のこのシルバーのジャズマスターはグレイトな弾き心地なんだ。

結果、分かりませんね。3本目ってやつなんだろうか。


「Watching The Detectives」は、ドラムとベースが打ち込み。コステロのギターサウンドはオーバードライブとリヴァーブとディレイが目一杯かかったサウンド。これもギタマガに書いてましたが、昔はそもそもクリーントーンで、ブラチョコの頃はアンプだけで歪ませてたけど、最近はエフェクター使っている、と。3階席だったので良く見えましたが足元にはエフェクターのペダルがたくさんありましたね。

コステロデビュー時だと逆に歪んでいるのが普通でクリーントーンは少ない印象。
(なお、シュガー・ベイブのSONGSも歪み禁止令が出ていたらしい)
今は逆にエレキをクリーントーンで弾いていることが少ない印象ですね。いつもあの(ディレイのせいで)ワンテンポ遅れたようなトーン。


本来の「Watching The Detectives」はコーラスパートだとドラムのパターンが変わり、キーもCになるのだが、このバージョンはリズムパターン一定で、AとFの循環コード。そのためか、コーラスに入ってもコーラスっぽい感じじゃない浮遊感がある。
ただ、コーラスの「She So Cute」のあと、サンプリングされたコステロの声が音程とスピードを変えながら「She So Cute! ↑ She So Cute! ↓」と飛び交っていた。これどうやってるんだろう?
レコードからのサンプリングを手動のタイミングで発動させているのか、はたまたドラムと同じ周期のディレイをボーカル用マイクに掛けて、リアルタイムでディレイ&ピッチシフター発動みたいな(エディ・ヴァン・ヘイレンか?)、ボーカルトリックをやっているのか。
おそらく前者で、「She So Cute! ↑ She So Cute! ↓」のワンセットでビートと同期するようにプログラムされててどこかにスイッチがあるんだと思う。
ドラム&ベースの上で「Shot With His Own Gun」のイントロからなだれ込む。
そのままスティーヴのピアノ・ソロ付きでフルで披露した後は再びドラム&ベースが戻ってきて「Watching The Detectives」へ。
あ、これメドレーだったのか?と思った人は自分だけじゃないと思う。


続いて「Radio Radio」が披露されるけど、最初これ何だっけ?と思ってしまった。曲席の拍手も遅かったから結構みんな気づかなかったのでは?あんなに聴いた「Radio Radio」だけれど、この流れでやるとは思ってなかった。
ティーヴはグランドピアノを弾いたり、VOXコンチネンタルの音を出したりと忙しい。


続く「Clubland」、これスタジオバージョンよりかなり良いですね。ギターはナイロン弦のクラシックギター
スチール弦のアコギより、ナイロン弦の方が音が柔らかくて好き。
ただあれ押さえるの大変でネックも普通太いので、手が大きくて握力がないと綺麗に音が出ません。
高校の音楽の授業で使われているのがナイロン弦。
「Clubland」のクラシックギターバージョンですが、コード自体はよくある普通のメジャー/マイナーコードのはずだけどクラシックギター用にアレンジされたボイシングのコードとアルペジオで、素晴らしいアレンジ。これ弾きながら歌うの相当難しいはずさすがボーカル&ギター歴50年近い男の成せる技だと思った。「Clubland」は元々「Trust」の中でも好きな曲ではあったのだけど、このバージョンは特に素晴らしい。これ音源化しないかなぁ。


次はUnrelased Song の「That Blue Look」、この時点で披露されていたのは、レイキャビク、パリ、アムステルダム、浅草の4箇所のみ。

「So Like Candy」はオーソドックスなアレンジ。これ10年前も聴きましたね。

最新アルバムから「Magnificent Hurt」。これ、ずっと「Pump It Up」に似ていると思ってたけど、リフだけ聴くと「Money」にも似ている。

打ち込みドラムに乗せて「Battered Old Bird」だが、ブラチョコの中で最も聴かない曲なので最初何の曲だか分からなかった。
多分、20年ぶりくらいに聴きました。

ティーヴのピアノ・ソロのあと、聴き慣れたフレーズ。
「Unwanted Number」だ。これ、「Look Now」に収録される前の「For Real」バージョンの頃から好きな曲。
聴けてよかった。これはレアですね。


「New Amsterdam」が始まった時は周りはおおっと騒いでいたけど、実は数秒間は何の曲だか分からなくて飛んでいた。まさか「New Amsterdam」やるとはね・・。メドレーで「悲しみをぶっとばせ」。


「?」で覆われたボックスを操作して(シーケンサーでしょうね)、「Tokyo Storm Warning」っぽいリズムだと思ったら「Tokyo Storm Warning」だった。コステロの仕草を見ているとドラムパートONのタイミングは自操作、音量のUP/DOWNはPAに頼んでいるっぽい。
この曲って、サビが不思議なんですよね。「Tokyo Storm Warning」ってコーラスと別のボーカルが重なっているのだけれど、「Tokyo Storm Warning」コーラスが強すぎて裏のボーカルが聴こえない。二人バージョンだとスティーヴが「Tokyo Storm Warning」を歌ったりするけど、コーラスがない時もあってその時はサビが地味になる。2013年のインポスターズのライブだと、全員で「Tokyo Storm Warning」のコーラス歌ってたんですけどね。


アコースティックブルース「Everybody's Crying Mercy」を挟んで、バート・バカラックに言及(英語リスニングできないけど単語単位なら分かる)。

何やるのかと思ったらThe Songs Of Bacharach & Costello の2枚目収録の超レア「Look Up Again」。これここまで3回しか披露されてない。

続いておなじみ「She」。

多分、コアなファンはそこまで求めてない曲なんだろうけど、コステロとしては「日本で人気あると聞いている」ということで演ってくれているんだと思う。でも実は2002年は演ってないんだけどね(当時ヒット中のSmileは演った)。

ただ、これ見てたら去年のヨーロッパツアーでも演っていたし、直近のオーストラリアツアーでも演っていた。
ヨーロッパでも人気なんですかね。
https://www.elviscostello.info/wiki/index.php?title=Performances_of_She

でもやっぱりいい曲。たまに大音量で聴きたくなる。

最新アルバムから「The Man You Love To Hate」、直前のMCでグランドマザーがなんとかかんとかと言っていたので「Veronica」かと思ったら違った。口でバグパイプ風の声を出していてなかなかレアなものを見れました。

「More Than Rain」はトム・ウェイツのカバー。
誰かが「俺は分かるぞ!」とばかりに一人拍手してる人がいましたが、僕は分かりませんでした。

「I Want You」の最後はビートルズの「I Want You」を挟み込む。
ちなみに「I Want You」ってみんな好きなんですかね?ダウナーだし、循環コードだし好き嫌い分かれそうだなと。僕は好きですけど、これ聴くと重たくなるので心して聴く必要がある。

セトリが毎回変わるというのを聞いていたのでネタバレOKだと思って、事前にセトリを見ていた。
「PL&U」がいつも最後の方だとわかっていたのでもう終わりかなと思ったら、そこから「The Whirlwind」、そして「Farewell, OK」。


なんか周りの人みんな撮影してたから良いかなと思って最後の3曲だけ撮影しちゃいました。

www.youtube.com


そうか、この公演で今回の日本公演も終わりだしFarewell, OKだよな、と胸に来るものがあった。

最後は「Alison」で締め。

www.youtube.com


アンコールはないと事前に分かっていたけど、一応最後なので待ってみたが、やっぱりなかった。



さて、全体的に思ったことを。

インポスターズと一緒だと、基本的にピート・トーマスが前のめり気味のビートで、大昔のアトラクションズの頃はコステロも前のめりだったけど、近年のコステロは重心がかなり後ろめ。ギターもディレイがかかっているのでさらに後ろにある感じ、さらにボーカルもタメが多いので、たまにその辺がチグハグな印象を受けることがある。極端に書くと、コステロ以外がインテンポで、コステロが自由、みたいな。
でもコステロ&ナイーヴになるとその辺はかなり自由。
リズムボックスがあっても一つ拍飛ばしてるんじゃない?みたいなこともあるし。
だからこそ、スティーヴが入る時にちょっとキメがずれることもあるし、うまくいくこともある。
この辺が気になるような完璧主義の人には向いていないライブだったのかもしれない。
僕としてはこれがライブだと思いますけどね。


2017年のチャットモンチーチャットモンチー・メカと銘打って打ち込みメインのツアーを敢行して、チャットも2人だったので、それにちょっと似た感覚もありながらも、コステロ&ナイーヴの場合はそれよりももっと即興的な要素があるなと感じた。
ほぼリハーサルしてないんじゃ?みたいなのもあった。別にそれが悪いわけじゃなくてそれがライブなので良いと思う。


ジャズに近いけどそこまでのテクニックはないのでアレンジで装飾をしている、って感じかな?
ティーヴはバカテクですけど、”リトル・ハンズ・オブ・コンクリートコステロはヘタウマって感じですね。
昔よりは上手くなったとは思いますが。

70年代のバンドって割とその場でなにやるか決めたりとか、曲の中で延々とインプロビゼーションやったりとかは多いですね。今でもそういうバンドあるのかもしれないけど、80年代以降はステージ効果とかライティングとかの関係なのかきっちり構成されたものばかりになっていったイメージ。それが行き着くところまで行くと、「ショー」になってしまう。
桑田佳祐は好きだけど、自分が見た桑田佳祐のライブはショーだった。
ショーを見るならわざわざ現地じゃなくても良いかなと僕は思う。
スポンティニアスって言うんですかね?
慣れない言葉、スポンティニアス、こういうライブを生で見たいわけですよ、私は。
なので今回のライブは満足ですよ。


そういえばコステロの音程(ピッチ)がどうのこうのって書かれているの読んだけど、別に普通かなと思った。部分的に喉が掠れている気もしたけど、でも69歳ですよ、しょうがないと思う。
達郎先生だってたまに裏返りますよ。