俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

21th Elvis Costello (Part XV) -「Hey Clockface」

(もうすぐ来日なので、かなり昔に書いて下書きに入ったままお蔵入りしてたので、多少加筆して公開します)

2020年リリースの「Hey Clockface」。前作が2年前なのでインターバルは短め。

前後関係としては、前作2018年の「Look Now」リリース前後に、癌が発覚し手術があり、その後に2020年初頭の、COVID-19 騒動があり、2020年の10月にリリースされたのがこのアルバム。

最も詳しいインタビューがローリング・ストーン誌のもので以下のもの。

rollingstonejapan.com


以下は萩原健太さんのレビュー。

kenta45rpm.com



欧州の方では今や過去のものとなったロックダウンやらなんやらと色々あったので、あっちこっちに飛んで録音したようで、ヘルシンキフィンランド)、パリ、ニューヨーク、で録音されている。


曲全体をざっくりした印象で言うと、2019年周辺に書かれた曲をひとまず纏めてパッキングしました、というもの。聴く人によっては統一感がまるでないと感じるかもしれない。
今までのコステロのアルバムとしては、ゆるやかなコンセプトっぽいアルバムの作り方をしていた。例えば、これはカントリー・ブルーグラスとかこれはジャズとか、これはヒップホップとか。


このアルバムは、アヴァンギャルドとジャズとロックをやって、一つの箱に入れてみました、みたいな感じ。1曲の中で複数のジャンルが混在するようなクロスオーバーではなく、いろんなジャンルの曲をやって一つのアルバムに入れた、みたいな感じ。
なので、統一感はないといえばないんだけど、コステロの声とメロディがあるので、それが接着剤になって統一感となっているという感じでしょうかね。

個人的には同じようなトーンで2,3曲続くと疲れてしまうので、別にこういうのは嫌いではない。

どこで録音したか具体的に書くと、

Helsinki ★
Paris ●
New York ▲


● Revolution #49 → アンビエント&スポークン・ワード
★ No Flag → インダストリアル・ロック
● They're Not Laughing at Me Now → サザン・ロック
▲ Newspaper Pane → Beats とのコラボ風のやつ
● I Do (Zula's Song) → なんかニューヨークのジャズみたいな感じ、でも録音はパリ
★ We Are All Cowards Now → Like a 'Mighty Like A Rose'
● Hey Clockface / How Can You Face Me? → ボードヴィル
● The Whirlwind → North っぽいピアノジャズ
★ Hetty O'Hara Confidential → インダストリアル・ロック
● The Last Confession of Vivian Whip → これも North っぽいピアノジャズ
● What Is It That I Need That I Don't Already Have? → National Ransom あたりの雰囲気
▲ Radio Is Everything → スポークン・ワード
● I Can't Say Her Name → 30年代ジャズ
● Byline → カントリーバラード、なのかな?
(不明)Phonographic Memory → スポークン・ワード


www.youtube.com


フィンランドヘルシンキで録音したとのこと。
昔見た日本映画で「かもめ食堂」(2006年)ってのがあって、フィンランドでおむすび屋をやるってだけの映画だけど、これが妙に印象に残っている。
舞台がヘルシンキなので、ヘルシンキの雰囲気は結構これでなんとなく分かる。

北欧ってのはメタルが結構盛んで北欧メタルなんてジャンルがあるくらい。フィンランドはメタルバンド多かったはず。お隣のスウェーデンもメタルが盛んだけど、ABBAとかカーディガンズスウェーデンなのでメタルだけじゃないですね。個人的な好みからすると北欧系のメタルは今でも大の苦手。


ヘルシンキで録音したのは、一人多重録音。中期のYMO(BGM〜テクノデリック)な印象のサウンドかな。リズムトラックは自分の声とか周りのものを色々サンプリングして作ったらしい。
ミニマル・ミュージックっぽい。個人的な好みで言うと別に好きなわけではないジャンル。


パリでの録音は「Le Quintette Saint Germain」(サンジェルマン・クインテット)と名付けられたメンバーで録音。メンバーはおなじみスティーブ・ナイーヴ(鍵盤)に、ベース、ドラム、管楽器、チェロを入れたクインテット(5人組)。

フランス語の発音がわからんのでメンバーは以下参照のこと。
www.elviscostello.info

このメンバーで演奏されたのはジャズですね。Northでやっていたようなジャズボーカルっぽいものから、20〜30年代風のボードヴィル的なジャズまで多種多様。

ニューヨークでは、マイケル・レオンハートやマーク・リボーと共演。
曲としては2曲ですが、マイケル・レオンハートとの共作はもう1曲あってそれがこれ。

SHUT HIM DOWN
www.youtube.com



これは「The Normyn Suites」というマイケル・レオンハートのリーダー作に含まれていて(2022年3月発売)、「Newspaper Pane」「Radio Is Everything」も収録されている。

www.kinginternational.co.jp


コステロ曰く、
『僕は彼に「君のレコード用の作品だということは承知しているが、君と僕の両方のレコードに収録してもいいかな。君はジャズ・ミュージシャンだし、君と僕のファン層は被らないしね」と頼んだのさ。』
とのこと。

ちなみにコステロとしては2008年周辺に「もうアルバム作らないかもね」と言っていたが(以下参照)

shintaness.hatenablog.com

それでもやっぱりパッケージングしてアルバムとしてまとめてられたのがこの作品。

これ、別にミニアルバムとかEPで3枚出しても構わないはず。
ヘルシンキとニューヨークとパリの3パッケージ。
だけど、それをシャッフルして1枚にパッケージングした。

どういうことなんだろう?と思ったけど、この頃のCOVID-19 騒動という特殊な時代をパッケージングしたかったのかな?という気がする。

ちなみに個人的な趣味で言うと、この前後のアルバムは好きだけどこのアルバムは特に好きでも嫌いでもない。