俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

サンダー Part14:5th「Giving The Game Away」

 

ギヴィング・ザ・ゲーム・アウェイ

ギヴィング・ザ・ゲーム・アウェイ

  • アーティスト:サンダー
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD
 

 

1999年の2月に待望の新曲がリリースされます。タイトルは「Just Another Suicide」。または「You Wanna Know」と呼ばれていましたが、当初はラジオのオンエアを狙うなら「Suicide」は避けたほうが良いだろうということで「You Wanna Know」と呼ばれていたのですが、少し経ったら、誰も「You Wanna Know」とは呼ばなくなった、という曲。

 

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この頃の流れから推察するとファンキー路線で来るのかと思ったら、意外や意外、アコギのイントロから入る、一瞬フォークロックかと思うような曲。キーは違うけどポリスの「Message In A Bottle」にコード進行が似てる。或いは氷室京介の「Stranger」か。「River Of Pain」のようなAメロとサビでコード進行が同じという循環コード曲です。

 

これまた日本先行発売で、英国でのリリースは日本から遅れること1ヶ月後。英49位。結果的にこれが解散前ラストシングルになってしまいました。

 

3年ぶりの5thアルバムは「Giving The Game Away」で同曲のタイトルからネーミング。こちらも日本先行。「Just Another Suicide」から2週間後にリリースされました。英国では3月にリリース。49位。シングルと同順位。前作4thアルバムは大手レーベルではなかったのに14位というなかなかの高順位でしたが、5thになると最高49位。勢いが落ちてきているのは明らかでした。

 

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内容も内省的な感じで、ソフトな曲が多く、ルークによると、音楽業界的な動向もあり、できるだけロックな曲を作らないようにしてた、とのこと。アルバム・ジャケットもOASISみたいな感じがする。

 

例えばこれとか。

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サンダーファンからの評判もあまり良くない、とメンバーに伝わってるようで、ルークもダニーも、「一番人気がないアルバム」と言っている。確かに当時、肩の力抜けすぎ、とか大人しすぎ、みたいな評価を見た気がする。

 

だけど、ルークはこのアルバムが最も好きだそうです。サンダー解散後のインタビューでも言ってましたし、割と最近のインタビューでも言っていました。サンダー解散後はその時点でのラストアルバムだったからまだわかるにせよ、2回目の解散後も、このアルバムと「Bang!」が好きだと言っていました。

 

ルークのインタビュー(2001年)

「GIVING THE GAME AWAY」(1999年)は、僕が一番気に入っているTHUNDERのアルバムだと思う。最新アルバムだっていうこともあるのかもしれないけど(笑)個人的には最高の曲のコレクションになっていると思うね。ファーストを聴いた直後に「GIVING THE GAME AWAY」を聴くと、バンドがいかに成長したかが判るはずだ。僕もプロデューサーとして成長したしね。これがTHUNDERにとって最後のスタジオ・アルバムになったわけだけど、このアルバムのことは誇りに思っている。凄くいい曲が入っている。悪い曲は1曲もないよ。そう言えるTHUNDERのアルバムはこれだけだね。これまた楽しいレコーディングだった。

 

METALLION Vol.13 (2001年5月)

 

もひとつ、ルークのインタビュー(2017年)

- What’s your favourite and least favourite Thunder albums?

 

Luke: 
Oh crikey! That’s quite difficult because I’m not in the habit of listening to them that often. In the process of making an album you’re listening to it so many times at various stages that by the time it’s finished you tend to not want to hear it for a while. I think there’s nice moments on all the albums. I think that some albums have more nice moments than others, but I think some albums are almost necessary; like a stepping stone to the album that came afterwards. With any band that has a career as long as ours, really, that’s going to happen. I think the stepping-stone albums are probably ‘Giving The Game Away’ and ‘Bang’, and don’t read anything into the fact that we split up after both of them! *laughing* I think both of those albums are stretching out for something; I’m just not quite sure what.

 

- サンダーのアルバムで好きなものと嫌いなものを教えてください。

 

ルーク:

うわぁ~、自分はそんなに頻繁に聴く習慣がないので、なかなか難しいな。アルバムを作っていく過程で、いろいろな段階で何度も聴いているうちに、完成する頃にはしばらく聴きたくなくなってしまいがちなんだ。どのアルバムにも他のアルバムよりも良いところがあると思うんだけど、その後に出てきたアルバムへの足がかりのような、重要なアルバムもあると思う。俺たちと同じくらいのキャリアを持つバンドなら、どんなバンドでもそうなるだろうね。そういうアルバムはおそらく「Giving The Game Away」と「Bang」だろうね。どちらもその直後に解散したことには触れないでくれよ(笑)。どちらのアルバムも伸び伸びとしている。なんでかはわからないけどね。

 

https://www.eonmusic.co.uk/thunder-luke-morley-eonmusic-interview-february-2017.html

 

ダニーとハリーのインタビュー(2005年)

(「Giving The Game Away」について)

ダニー:ルークは......
ハリー:バラードっぽい落ち着いた曲を書いてたよな?
ダニー:ああ、ルークはロックアルバムを作らないようにしていたんだ。ただ単にロック全開といったアルバムとは違ったTHUNDERのアルバムを作ろうとしていた。僕が思うに、当時、ロック・バンドでいることが大変だったからだと思う。だから、僕らは必ずしもオールド・ファッションではないロック・バンドになろうとしていたんだ。最終的には悲惨な結果になってしまったようだけど。ファンには最も人気のないアルバムになってしまったようだから。どうしてかな?僕は凄くいいと思うんだけど。

 

BURRN 2005年5月号

 

ダニーもこのアルバムが好きなようです。 

 

個人的にもサンダーのアルバムで一番好きなのがこれなので、ルークとダニーが本当にやりたいことと、自分の好みが合っているんだなぁと思うわけです。「サンダーは2ndまでが至高」という人は一定数いそうですが、多分そういう人は好みではないんだろうなぁと。

ファンがサンダーに求めるものと、ルークとダニーが一番やりたいことが乖離しているなぁと思うことが、再結成後のサンダーを見てたらよく思うんですね。例えば再結成後の7thアルバム、「The Magnificsent Seventh」は良いアルバムではあるんだけど、ルークのソロとかボウズ&モーリーの趣味全開のアルバムを聴いた耳だと「寄せに行ったな」と思うわけです。サンダーのメジャーファンのニーズに答えてはいるんだけど、自分のようなマイナーファンのニーズからは離れてしまったなと。

 

さて、この「Giving The Game Away」で最も好きなのが「All I Ever Wanted」なんですが、知名度的にも全然知られていないマニアックな曲で、ライブでもなかなか披露されない地味な曲なんですが、最近のベスト盤にはこの曲が入っていて、やっぱり自信作だったんだなと。

 

Greatest Hits

Greatest Hits

  • アーティスト:Thunder
  • 発売日: 2019/09/27
  • メディア: CD
 

 

 

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「Numb」も名バラードで、作者ルークは「なんでこの曲の人気がないのか分からない」と言ってます。ちょうどエアロスミスの「I Don't Want To A Miss A Thing」と同時期で、なんであっちはあんなにヒットするのにこの曲は無名なんだろうと不思議でした。

 

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ストーンズライクな「Rolling The Dice」も典型的なサンダーの曲、と思いきや、ファンキーカッティングなギターソロが素晴らしい。ライブで聴きたい曲なんだけど滅多にやってくれなくて悲しい。

 

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「'Til It Shines」も素晴らしい。「Low Life」と比較される曲だけど、それよりもジワジワクライマックスに雪崩れ込む感じが良い。

 

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オーラスです。この時点のサンダー自体のオーラスでもある、「It Could Be Tonight」も素晴らしい出来のバラード。

 

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ただ、本当にこのアルバムの人気がなかったのかは正直よく分かりません。なぜなら当時の日本ではサンダーの人気が割とあった。その一次資料がこれだ!

 

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当時僕はリアルタイムでこの記事を見て「サンダーってこんなに人気あるの?」と困惑した記憶があります。なんかそんな人気がある感じしなかったんですよ。アルバム出すたびに、レビューでは奥歯にものが挟まった感じで「昔の方が良かったなぁ」的なことを書かれていたので。

 

伊藤政則氏のPOWER ROCK TODAYというラジオ番組のアーティスト人気投票で、このアルバムリリース後の1999年の3月20日から4月10日までの4週に渡ってサンダーが1位になっているわけですね。アーティスト自体の人気投票とは言え、アルバムの出来が悪かったら4週も1位にならないんじゃないだろうかと。セーソクさんがDJをやる番組なんだから、当たり前だけどメタルファンばかりが聴くわけですよ(まあ2位がボン・ジョヴィではあるんだけど・・)。

さらにメタルどころかロックからも離れたアルバムのリリース直後でこれって、一体なんだったんだろう?しかも、ボン・ジョヴィメタリカエアロスミスやら錚々たるバンドを抑えて。ここから1年後に解散してしまいますが、そんなバンドがここまで人気あったのは素直に驚き。

 


「Giving The Game Away」のジャパンツアーはたった2公演でしたが、そのうちの一つが日比谷の野音で、個人的に野音のライブ映像って好きなんですよね。最も好きと言っても良いかも。彼らも日本で最も印象に残っているのが野音のおライブだったそうです。野外といえばサンダーですしね。

 

中盤に行くに従って日が暮れてくんですよ。詳細不明ですが、どこかの番組でオンエアされたんですかね。札幌だと流れてなかった映像。これはレアですね。

 

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1999年5月4日の日比谷野音。この頃、僕は就職活動でいっぱいいっぱいの時期。このアルバム、実は買ってすぐに2回ほど聴いてそれからしばらくあまり聴いてませんでした。あまりにも就職活動が忙しくて、気持ちが音楽どころじゃ無かった。11月に解散発表があった後に改めて聴いてみたらめちゃくちゃ良い事に気づいた、という。その後にリリースされるルークソロの名盤「El Gringo Retro」にも通じる路線でもあります。

 

このアルバムの英国ツアーも10公演ほどで終了してしまいます。結構少ない。やはり、客観的に見てバンドの勢いはかなり衰えました。が、しかしライブパフォーマンスは脂が乗って最高の状態、アルバムも最高傑作。しかしマーケットはまるで反応なし。

 

そして1999年末、ついに彼らはある決断をします。

 

続く。