「Thrill Of It All」はサンダーを好きになって、初めて発売日に買ったアルバムでして、大層聴き込みました。僕の周りは「軟弱になってイマイチ」派と、「これ格好良いじゃん」派に分かれていましたが、自分と同じように幅広く聴いていた友人がおりまして、その人もこのアルバムが好きで、ライブに行ってみたいよね、と意気投合し、1997年の1月28日、札幌ペニーレイン24でのライブに参戦します。やはり日本市場を重視していたのか、この年は福岡から札幌まで縦断し7公演。しかもこのアルバムのツアー自体も日本から始まるという。まあ、もともとあった英国ツアーがベンの腱鞘炎で延期になった、というのはありますが。
会場は満員で、札幌にもこんなにファンがいたのか!と感激した覚えがあります。自分はステージ左側のルーク側に陣取り、ピート・タウンゼンドばりに腕をぶん回すプレイに見入ります。この日のパフォーマンスがものすごかった。さすがライブバンドとして定評のあるサンダーだなと。ペニーレイン24はキャパ500の割と狭いライブハウスなので、アコースティックなバンドならまだしも、エレクトリックで歪んだギターのバンドだと音像がグチャグチャになってしまうことが常になんですが、そんな中でもダニーのボーカルはめちゃくちゃハッキリ聴こえたんですよね。とんでもなく抜けの良い声だなと驚いた記憶があります。
ただしかしながら、この日の公演でダニーはインフルエンザをもらって、数日後の公演でダウンします。確かに1月の札幌はかなり寒いし、汗だくでライブハウス出たらそりゃ風邪引きますよ、という感じです。
それ以来、サンダーは札幌に来てくれません。絶対にトラウマになっているに違いない。
その時に物販でCDを買うとサインをもらえるというのがあって、それがコレです。実は「Behind Closed Doors」はCDでは持ってなくて、この時に買いました。カセットテープにダビングして聴きまくってヨレヨレだったし。
ツアーを終えたあと、ファンのかねてからの要望だったライブ・アルバムの制作に着手します。サンダーはライブバンドだ、という評判はライブを見たことない人にも知られるようになっていて、いよいよ、というところでした。
ライブ・アルバムは、ベスト盤の頃に企画はされていたようですが、ライブ・アルバムを出すには曲数が足りない、ということで見送られていました。
4thアルバムリリース後、弾数が揃ったと判断されてライブ・レコーディングを開始します。1997年の11月に4日間の日程でウォルヴァーハンプトンとロンドンで録音されました。2枚組のライブ・アルバムに収録するので、色んな曲をカバーして演奏されています。さしづめ、Case Of Thunderと言ったところでしょうか。
この4日間でライブで披露されたのは以下の通りです。
1st Album:
She's So Fine:4
Dirty Love:4
Don't Wait For Me:1
Higher Ground:2
Until My Dying Day:2
Backstreet Symphony:3
Gimme Some Lovin'3
Love Walked In:3
An Englishman On Holiday:1
Until My Dying Day:1
2nd Album:
Does It Feel Like Love?:2
Everybody Wants Her:3
Low Life In High Places:3
Laughing On Judgement Day:2
Empty City:2
A Better Man:4
Like A Satellite:2
3rd Album:
Moth To The Flame:2
I'll Be Waiting:2
River of Pain:3
Stand Up:2
Ball And Chain:2
4th Album:
Pilot Of My Dreams:3
Living For Today:2
Love Worth Dying For:1
Don't Wait Up:2
Welcome To The Party:3
Something About You:1
You Can't Live Your Life In A Day:1
New Song:
The Only One:2
Cover Song:
Nut Rocker (ELP Cover):2
New York, New York (Frank Sinatra Cover):2
Lazy Sunday Afternoon (Small Faces Cover):2
Dance To The Music (Sly & The Family Stone Cover):2
4公演全てで演奏されたのは「She's So Fine」「Dirty Love」「A Better Man」の3曲だけで、できるだけ多くの曲を演奏しようという意図が見えます。
演奏したけど、アルバムから漏れたのは「Don't Wait For Me」「Ball And Chain」「Love Worth Dying For」「Something About You」「You Can't Live Your Life In A Day」と、カバーの「Nut Rocker」。「Ball And Chain」なんて2回演奏されて選ばれず。「Ball And Chain」のライブバージョン自体、オフィシャルには一度しかリリースされてないので(「Live At The BBC」のみ)、是非収録してほしかったですが・・。
1回だけの演奏で選ばれたのは、「An Englishman On Holiday」「Until My Dying Day」という熟れた曲のみです。
「New York, New York」と「Lazy Sunday Afternoon」はライブアルバムから1ヶ月後に発売されたビデオ(VHS)に収録されてます。
内訳としては初期が多いですね。7時間のテープを聴いて厳選したそうなのですが演奏がこなれてるのはやっぱり昔の曲、ってことなんでしょうか。いつかパープルの「Live In Japan 完全版」みたいな感じで、全公演版を聴きたいところ。
さて、ライブ盤リリース前にレコード会社を移籍します。イーグル、というレーベルです。
英国ではそれに先駆けて1998年1月に「The Only One」という超ポップな新曲をリリース。31位。ここまでポップな曲はそれまでにはなくてビックリしましたね。
これ、5thの日本盤ボーナストラックには収録されましたが、基本的にはアルバムから漏れたシングル曲で、その後のベスト盤などのコンピレーションからも選ばれないのでなかなか不遇の曲なんですが、結構好きなんですよね。この曲のライブバージョンが「Live」に収録されるので、先行シングル的な感じでリリースされました。こっちはスタジオバージョンなので、純粋な先行シングルではないのですが。
私事ではあるのですが、この頃の自分の心のベスト2大バンドは、サンダーとブランキー・ジェット・シティだったんですが(どんな組み合わせ?)、そのBJCもBJC史上稀に見るポップな「赤いタンバリン」がリリースされたのもちょうどこの時期。(そしてどちらも同時期に解散するというシンクロっぷり)
そして、全サンダーファン待望のアルバム、「Live」がついに1998年2月にリリース。2枚組でした。英35位。日本でも5日遅れでリリース。
自分は、買ってすぐに車の中で聴いて、「River Of Pain」の凄さに涙した、という思い出があります。どこで買ったか忘れていましたが、当時のメモを見ていたら札幌アルシュにあったROCKSというハードロック専門店で買ったようです。
ライブ・ビデオもリリースされましたが、これは札幌PIVOTにあったタワレコで買いましたね。これは覚えてます。これも擦り切れるくらい見ました。
特に「Gimme Some Lovin'」でのダニーのパフォーマンスが凄い。会場を支配するってのはこういう事なのかと。
この頃のサンダーのメンバーの年齢は、大体35歳〜37歳くらい。1996年頃から2002年頃の彼らの演奏が自分はピークだと思っていて、この頃はまさにピーク中のピーク。演奏もめちゃくちゃ上手いし、ダニーの声も出まくっているし、この時期のダニーは確実に世界No.1のボーカリストでした。この時期にライブ・アルバムを作ってくれて本当に良かった。
で、ライブビデオも編集が良いんですよね、これが。躍動感があるんですよ。そして余計なエフェクトが入ってない。これ結構重要。バンドの演奏と観客が見えればそれで良いんです。大体1990年代初頭の音楽ビデオに多かったんですが、謎エフェクトを使いたがるんですよ。この前BARBEE BOYSのファイナルライブの映像を見たんですが、余計なエフェクト入りまくっててゲンナリしました。ああいうの陳腐化するのでやめたほうが良い・・・ってのに当時気づいていないから入れてしまうんですが。
この「Dirty Love」の映像なんて、観客とバンドの躍動感が伝わってきて素晴らしい出来。何回見たか分からないくらい見てます。(最後のNaNaNa〜のところで嫌がるクリスに無理やり歌わせようとするダニーがかわいい)
ただ、これまた色々言う人もいるわけで、初期のハードロッカーっぽいルックスじゃないわけですよ。特にダニーが。ベリーショートにして、普段着のようなラフな服装(ブリット・ポップ的な感じ)で歌うわけですが、これが賛否あったんですね。
そもそもハードロックな服装が自分の趣味に合わないってのもあって、なんで文句言われんのか分からないなと。当時、大学の軽音楽部にいましたが、ちょっと上の先輩はやっぱり、メタルTにライダースにエンジニアブーツで長髪みたいな感じではあったんですが、どうも自分の趣味に合わない。で、自分自身は、割とこの頃のダニーみたいな格好をしていたんです。なのでダニー服装に何の違和感もなかった。
この頃、下がアディダスのジャージで歌っていたようで、それにもB誌が文句言ってました。ただ、この頃ジャミロクワイのジェイ・ケイもアディダス着ていたし(そして時を経てサチモスだって着ている)、今現在も街で着るものとしては特におかしな服装ではない。単にB誌的な型にはまらなかっただけのことです。
以下は、この時期のフランスでのライブですね。詳細不明ですが、1998年の3月3日、1998年になってから初のライブだと思います。時期としては「Live」の直後。
こんな映像が残っているとは凄い。すでに「Just Another Suicide」演奏してます。
さて、ライブアルバムリリース後の1998年6月に、ワイルド・チェリーのカバー「Play That Funky Music」がリリースされます。英39位。
これまたジャケが、ハードロックからできるだけ遠ざかろうとしているのがわかりますね。ジャケだけ見たら完全にR&Bのレコード。
日本でも同月に「The Only One」とのダブルA面のEP的な感じでリリースされます。
これまた凄いカバーで、ハードロックバンドがカバーしたハードロック風の「Play That Funky Music」じゃないんですよ。完全にファンク。そんなこともあってイギリスのクラブでヒットしたとのこと。まあ、言わずもがなの有名な曲です。だけど、R&B/ファンクに対して、なんとなく好きだな、くらいの感覚だった当時の自分は、この有名な曲を全然知らず、めちゃくちゃカッコいいじゃん!と興奮したのですね。ただのロック青年だった自分が、サンダーきっかけでこういうジャンルも聴くようになったという、自分にとってはかなりエポックメイキングな曲でした。
アレンジも素晴らしくて、まあ基本的にはオリジナル準拠なんですが、現代的なサウンドになっているし、ダニーが上手い。カンカン言っているパーカッションは消化器を叩いたものだそうです。クラビネットっぽいのが入っているのも、スペイシーなキーボードも、ワウワウ全開のギターソロも何もかもが素晴らしいスーパーカバー。
自分は持ってませんが、ビクターのダンスコンピにも収録されてます。この並びに突如サンダーがいるのは不思議ですが、それだけハマったということでしょう。
自分の中ではスーパーバンドの位置を譲らないサンダー。いよいよ次のアルバムが楽しみになって来ました。
なお、サンダーのストーリー本「Giving The Game Away」だと、この時期は「1996〜2000」と纏められてしまって、要するにEMIドロップから一度目の解散までが結構端折られているわけですが、個人的な音楽的趣味でいうと、1996年から2004年頃までのサンダーがとっても好みなので、もうちょっと詳しく書いてほしかったところです。
続く。