The Thrill Of It All / Thunder
当時特に駄作という評価でもなかったように思うが、BURRNではなんとなくパワーダウンしているみたいな書き方をされていた気がする。
今回の企画を行うに当たって他に駄作扱いみたいなアルバムあるかなぁと思って見ていたら、サンダーのこの作品が駄作と書かれていたのでちょっと取り上げてみた。
曰く、曲が命のバンドなのに曲が弱い。良いのは「Cosmetic Punk」だけ、と書いてあったが、この論評は強烈に違和感がある。
これがBURRNのみで取り上げられたサンダーというバンドの悲劇の典型的なものだと思う。
「Cosmetic Punk」は少しだけディープ・パープルの「Fireball」に似ているから、これだけは良いと言っているのだろうが、しかしこの曲はクオリティ的にはそれほど高くなく単調な曲だ。リフだけが目立つファストなハードロック。
ヘヴィメタル系YouTuberとかライターを見ていると明らかにメタルしか聴かない人がいる。
リスニングスタイルとして否定はしないが、自分とは違う。
メタルを聴き始めた人はまずBURRNから入るという時期があった。
こういう人たちはBURRN視点でしか評論できない。
グランジ・オルタナに寄ったらNG、メロコア・パンクはNG、邦楽はありえない、ジャパメタはBURRNが認めたものならOK、B'zは論外、とこの調子。
こういう意見を聴くと「あ、BURRN寄りの人だ」と思ったものだ。
実際のところ、ほとんどの人の音楽の入口は邦楽のはず。それがメタルに出会ってBURRNを読み出すと覚醒し、メタルが一番、メタル以外認めない、という思想になる。突如政治イデオロギーにかぶれて、周りの人を見下しマウントを取る人がいるがそれに少し近い。
そもそも、このアルバムはハードロックではなく、オーソドックスなロックに近い。そして曲のクオリティで言うと、このアルバムは高いと思う。
個人的な評価だと、3rd「Behind Closed Doors」、4thのこれ、5thの「Giving The Game Away」のクオリティは高い。
ただそれはメタル視点ではない。メタル好きの人に勧めるかというと勧められない。メタル視点だと4thと5thはメタルでもなければハードロックかどうかも危うい。少しファンク・ロック色もあるのでそういう人に取っては全然良くないと思うだろう。
ファンクというのも、第3期ディープ・パープルでグレン・ヒューズがファンクを取り入れだして、リッチーが嫌がって脱退してレインボーを作ったというストーリーがあり、これの影響でファンクもメタルファンにはなんとなく毛嫌いされている感じがある。
クロスオーバーして良いジャンルと悪いジャンルがあるようで、クラシックは完全にOK。ジャズ、カントリーとかブルースもOK。だけどソウル、ファンクはダメらしい。
このアルバムと3rdあたりはリアルタイムだったが、ファンクな曲がかっこいいなと思って聴いていた。
ただ、今思い出してみると、このアルバムも自分の周りでは良いという人もいれば、なんか日和ったな、違うな、という評価の人がいた気がする。
このアルバムを評価していた人はメタルも聴くがソウル・ファンクも聴く人だったが、評価していない人はメタリカ狂だったな。
そういえば、このアルバムからシングルカットされた曲のカップリングがアルバムから漏れた曲(「Somebody To Love」「Lethal Combination」)だったが、これがBURRNでは「ハードロック的」だったからか高評価だった。でもこれよ別に大した曲じゃないのですよ私にとっては。
アルバムの曲の方が数倍良い。
一応ピックアップしてみたが、でも全曲良いと思う。ハードロックじゃないけどね。
Pilot Of My Dreams
Don't Wait Up
Welcome To The Party
Love Worth Dying For
You Can't Live Your Life In A Day
一応、この前のアルバム「Behind Closed Doors」は名盤扱いなのだけれど、曲のクオリティは大した変わってない。
前作の「I'll Be Waiting」とか「To Scared To Live」も全然ハードロックじゃないのよ、そもそも。
たぶんジャケ写も気に食わないんだろうなぁと思う。メタル的ではないし。サンダーとしてはかなり意識的な意思表示だったと思う。