竹内まりやさんの3枚組「Turntable」が届きました。
【Amazon.co.jp限定】Turntable (デカジャケット付)
- アーティスト: 竹内まりや
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2019/09/04
- メディア: CD
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1枚目は「Expressions」から漏れてしまったベスト盤的なやつ、2枚目は、レアリティーズ的なもの。3枚めは洋楽カバー集。
その洋楽カバー集にはビートルズをほぼ完コピしたようなトラックが多数入ってます。ビートルズだけでも12曲、と本当に好きなんだなぁと。
ビートルズは以下のラインナップ。
No Reply (未発表)
Tell Me Why (静かな伝説 c/w)
Devil In Her Heart (サンソン 2015 でオンエア)
If I Fell (サンソン 2015 でオンエア)
I'm Happy Just To Dance With You (サンソン 2010 でオンエア)
Drive My Car (サンソン 2017 でオンエア)
Nowhere Man (サンソン 2015 でオンエア)
The Night Before (サンソン 2015 でオンエア)
You're Going To Lose That Girl (サンソン 2015 でオンエア)
One After 909 (サンソン 2017 でオンエア)
Your Mother Should Know (Dear Angie c/w)
This Boy (Dear Angie c/w)
竹内まりや・カヴァー・オブ・ザ・ビートルズ・マスターエディット・12連発 Edit by 山下達郎
ビートルズに関しては新しい解釈とかそういうのではなく、ほぼ完コピで、オリジナルキーでコピーするという制約でやっているんだそうです。「Nowhere Man」あたりのオーバーダブが増えてきた頃の作品はなかなか難しそうですが本物にかなり近いです。
なお、「VIVA MARIYA」に収録されていた「Ask Me Why」はオミット。まあ録音が古すぎるし、アレンジもオリジナルとは違うし、実は本人も忘れてるのではという疑惑があります。
ほとんどがサンデーソングブックの夫婦放談とかでオンエア済みの音源ですが、「No Reply」だけは本邦初公開なんじゃないかな?おそらく。演奏は杉真理さん率いるBOXの面々。
達郎さんはこれにはノータッチのようです。
この夫婦、あまり知らない人から見ると趣味嗜好も同じような感じだと思われがちな感じですが、決定的に違うのがビートルズなのかなと、僕は思ってます。
簡単に言うと、まりやさんはビートルズ好きだけど、達郎さんはそうでもない感じ。嫌いではないだろうけど、普通なんだろうなぁと。達郎さんは世代的にはビートルズ全盛期にドンピシャであるにも関わらず、です。
達郎さんといえばビートルズよりもビーチボーイズって感じです。自主制作盤「Add Some Music To Your Day」にもビートルズは出てこないし、そもそもアルバムタイトルがビーチ・ボーイズの曲と同名だし。プロになってからもビートルズのカバーも無ければ、ビートルズオマージュみたいな曲も一曲もない。大滝詠一でさえ「空飛ぶくじら」があるんですが、達郎さんにはない。
ほぼ、唯一と言っていいビートルズアプローチが、まりやさんの「マージービートで唄わせて」のアレンジで、奥田民生を彷彿とさせるアレンジになっています。ただ、これもまりやさん絡みの作品で、おそらくまりやさんからの熱いオーダーがあったような気がします。
Mariya Takeuchi - マージービートで唄わせて
あと、「Forever Friends」のアウトロは「With a Little Help from My Friends」の一節がリフレインとして挿入されてますが、こういうのもあります。ただ、アレンジがビートルズ風かというとそうではないけど。
ビートルズに関しては、2015年のサンソン、納涼夫婦放談で竹内まりやさんをゲストに迎えた回で、興味深い話があり・・・。
2013年のとある公演が、ポール・マッカートニーの来日と同日程になって被ってしまった(おそらく2013年11月15日のこと)にも関わらず、達郎さん側のキャンセルが一つも出なかった、ということでお礼を込めてビートルズの「Yesterday」を歌った、ということがあったそうです。お客さんも冗談で歌っているのかと思って最初笑ってたのだけれど、フルで歌ったので驚いたそうな。まりやさんでさえ、達郎さんがビートルズを歌っているのを聴いたことがないとのこと。
さらに、達郎さんが言うには、「僕らの世代は、ビートルズをやらない事が日本のロックなんだ」と言っていて、要するに、自分の立ち位置をどこに持っていくか、ということですね。
さらに、ちょっとおもしろい音源があります。2012年に放送された大滝詠一のスピーチ・バルーンという番組の最終回で、ナイアガラ・トライアングル Vol.2 から20周年ということで、杉真理と佐野元春を呼んで昔話をするシーン。
スピーチバルーン 第25回「ナイアガラ・トライアングル同窓会」(音源カット)
(竹内まりやのアルバムのレコーディングで杉真理さんが達郎さんと初めて会った時の話)
杉:その時初めて山下くんと会って・・・
大滝:あー、そうなの?1枚めのアルバム?
杉:2枚目のアルバム・・
大滝:ユニバーシティストリートだよね?
杉:その2枚めのアルバムでコーラス行ったら前の人と一緒で、多分吉田美奈子さんたちとコーラスやってて、次僕がアレンジしてったコーラスをやるって時に、ディレクターの人が「手伝ってやんなよ」って、多分僕なんて駆け出しだったから「達郎、手伝ってやんなよ、こいつらピッチ悪いし」、って感じで手伝ってくれて二人でやったんだけど、ちょっとイメージ違うから、「僕もうちょっとビートルズっぽくやりたいんだよね」って言ったら、達郎くんが「僕らは僕らの音楽しかできないんだよ」って言って(笑)、やな感じ!とかって思って、「いや、ビートルズがやりたい!」って言ってね、なんか嫌なムードが流れてね・・・
大滝;それで「けんかをやめて」って曲作ったの?(爆笑)
杉:で、その後に、(竹内まりやの)兄貴分だったから、相談してきた時に、あいつとだけは(結婚を)やめろって言っちゃったんだよね。未だに達郎くんに言われるんだけど、「『あいつとだけはやめろ』って言ったんだって?」とか・・
大滝;結構あちこちでいわれてたらしいよ(笑)
「UNIVERSITY STREET」の発売日が1979年の5月なので、レコーディングは1978~1979年くらいなので、その頃のお話だと思います。達郎さんで言うと「GO AHEAD!」とか「MOONGLOW」あたりの頃。
杉真理さんがコーラスで参加しているのは「オン・ザ・ユニヴァーシティ・ストリート」「ホールド・オン」「J-BOY」の3曲で、ビートルズっぽいのはどう考えても「オン・ザ・ユニヴァーシティ・ストリート」なので、この曲のことなのかな。ただ「ホールド・オン」も後期ビートルズのポール・マッカートニーぽい感じもあるのでひょっとするとそれかも。
この時も同じ様な感じですね。みんなが散々やってるビートルズを俺らもやってもしょうがないだろ?みたいな感覚があったのだと思います。
同じ様な話は、大滝詠一さんもしていて、ビートルズをやるにしても「Your Mother Should Know」のオマージュみたいな「空飛ぶクジラ」みたいな曲はビートルズで言えばちょっと変化球で、モロにやるのは恥ずかしいとかそういう雰囲気があったようです。大滝詠一がナイアガラ・トライアングルVol.2をやったときも、年下のミュージシャンはそういう感覚が希薄で、佐野元春と杉真理がモロにビートルズオマージュをやったのが羨ましい、と言っていました。
ちなみに、この界隈の人が、中2の頃、何年だったかを調べてみたところ、こんな感じ。
細野晴臣 1961
大滝詠一 1962
伊藤銀次 1964
山下達郎 1966 (早生まれ)
杉真理 1967 (早生まれ)
大貫妙子 1967
松任谷由実 1967 (早生まれ)
竹内まりや 1968 (早生まれ)
矢野顕子 1968 (早生まれ)
佐野元春 1969 (早生まれ)
桑田佳祐 1969 (早生まれ)
早生まれが異常に多いのはまた別途考察の価値がありますね(笑)
ただ、達郎さんと杉真理さんが1歳しか違わないということが結構驚き。