俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

21th Elvis Costello (Part XI) -「National Ransom」

2010年発売の「National Ransom」。10年は本当に速い。この前出たばかりみたいな感覚。

 

ナショナル・ランソム

ナショナル・ランソム

 

 

このアルバムも結構誤解されがちで、前作「Secret, Profane & Sugarcane」と一緒くたにされがちなんですが・・・。

 

アルバム・ジャケットが前作の兄弟みたいなデザイン(どちらもトニー・ミリオネアの作)で、録音は前作と同じナッシュビルでプロデューサーがTボーン・バーネットで演奏メンバーも前作のメンバーに、ピート・トーマス、スティーブ・ナイーブ、マーク・リボー、1曲だけだがデイヴィ・ファラガーを加えたもの。なので前作の踏襲路線かと思ってしまうんですが、これが結構違う。

前作は全体的にカントリー、ブルーグラスがベースの路線でしたが、今回はジャンルが雑多な感じで、アメリカーナ的な装飾がされているという感じです。

ジャズあり、R&Bあり、ロックあり、カントリーあり、フォークあり、の2000年代のコステロの集大成と言っても良いんじゃないでしょうか。

 

「National Ransom」「Five Small Words」「I Lost You」「The Spell That You Cast」あたりの曲は前作にはなかったようなロック的な曲。ニューアルバムが出るたびに毎度のように「ロックなコステロも聴きたい」勢が出てくるんですが、これじゃダメなんですかね?こういうカントリーロックじゃなくて、パンクなコステロが聴きたいなら、諦めて2nd聴けば良いじゃんと思うのは私だけですかね?多様性と幅広さがコステロの魅力だと思う自分は過去の焼き直しをするなら、新しいことやってくれた方が良いと思ってるので。前作みたいなブルーグラス的なジャンルだってコステロがいなかったら多分聴いてない。

アンディ・パートリッジもXTC再結成を願われても…旧譜聴けよ、と言ってます。

 

アルバムのテイストで言うと「The Delivery Man」、バラエティの多さで言うと「Spike」っぽいとも言える。

面白いのは、歌詞カードには、曲毎に西暦が書いてあるんですよ。歌詞の内容だったり、アレンジがその時代のものだったりするということだと思うんです。「A Slow Drug with Josephine」には1921って書いてたり、「A Voice In The Dark」には1931って書いてたり、とその時代風のアレンジなんですね。

ロック畑の人って(特に若い人ほど)どうしても1954〜1956年あたりか、または、ビートルズのデビューの1962年あたりを起点に考えがちで、それ以前のものには興味示さないものなんですが、コステロってロックだけの人じゃないんで、平気で西暦1920年代まで遡ってしまう。クラシックやってたから下手すりゃもっと遡るんでしょうけど。

 

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個人的にはこれ、前作よりも良く聴いた記憶があります。

 

・National Ransom

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冒頭のこれ一曲聴けば、前作と全然違うなーと分かるはず。最高です。

これ、次のライブ盤でインポスターズバージョンで演奏されるんですけど、アレンジが違うんです。アップテンポがスローテンポになるとかじゃなくてアップテンポのまま、跳ね方が違うと全然違う曲に聴こえる。演奏されたメンバーが違うから…と思いきや、ドラムは同じくピート・トーマスで、キーボードにもスティーブが入ってる。ベースはデニス・クラウチで、ウッドベースではありますが。インポスターズバージョンはもっとタイトで、スティーブのVOXコンチネンタルも大きめでギターも歪んでて、初期のコステロみたいなアレンジ。

これは歌詞カードには西暦1929と書いてます。世界恐慌の時。この直前のリーマンショックにインスパイアされたと思われます。

 

・Station of the Cross

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音像も曲も「River in Reverse」に入っててもおかしくない。しかもそのアルバムに入ってるオリジナルよりもこっちの方が良い曲なんじゃないかな?

 

・A Slow Drug with Josephine

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前作ではなかったバンジョーがここで登場(マーク・リボー)。実はノベルティ的なこの曲が一番好きかもしれない。
ブルーグラス的な装飾に惑わされてはいけないと思うのです。メロディアスで展開も多い「ノルウェー曲©ニック・ロウ」で、紛れもなくコステロの曲。
1920年代にコステロが「My Aim Is True」を作ったら「Red Shoes」辺りの曲がこの曲なのかな。自分の考えるコステロの魅力がこの曲に詰まっていると思うのです。これのアレンジをアトラクションズ/インポスターズ風にするとどうなるのかも聴いてみたい気もするし、「Red Shoes」の 20'sアレンジバージョンも聴いてみたい。間奏の口笛なんかは現代だとギターソロに当たるのかな、とか考えるのも面白い。
あと、調子が良いときのポール・マッカートニーってこういう曲書きますよね。

 

・Church Underground 

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これ不思議な曲です。イントロは「Let Him Dungle」とか「Hurry Down Doomsday」みたいな不気味な曲なんですが、聴いているうちに引き込まれていく。

・You Hung The Moon

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スタンダード・ナンバーです、と言われても、ああそうですか、と言ってしまいそうなくらいジャズ・スタンダードっぽい曲。前作には無かったんですよね。ロックもR&Bもジャズもなかった。

・I Lost You

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カントリー・ロック。トラベリング・ウィルベリーズのVol.3が名盤だと思ってるんですが、そこに入ってそうな。

・A Voice In The Dark 

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A Voice In the Dark

A Voice In the Dark

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ホワイト・アルバムの「Honey Pie」って大好きなんですよ。ポールの作った曲の中でも結構上位に来ます。ヴォードヴィル調っていうのか、1930年代ジャズ風って言うのか分からないけど、そんな雰囲気で。 

 

次は「The Return Of The Spectacular Spinning Songbook」というライブ盤なんですが、ライブ盤なんでそんなに書くこともないんですが、一応やります。