「パレードの謎」を書いてから9年。
shintaness.hatenablog.com
パレードにはミックス違いの謎があります。
パレードのミックス違いの謎
「OPUS」に収録された「パレード」は本当に1982年リミックスバージョンなのか?という謎です。
2012年発売のベストアルバム「OPUS」のWikipediaにはこんな事が書いてます。
OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜 - Wikipedia
1994年にシングル・リリースされた、1982年のリミックス・ヴァージョン。
「パレード」の項にもこんなことが書いてます。
パレード (山下達郎の曲) - Wikipedia
2012年リリースのオールタイム・ベスト『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』にも本作同様、'82年のリミックス・ヴァージョンが収録された。
おそらくネタ元はベストアルバム「OPUS」のライナーノーツ。
パレード '76 (『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』)
シュガー・ベイブ時代に作った、とても好きな作品だが、バンドではレコード化されず、大滝詠一・伊藤銀次・山下達郎三者共同によるアルバム『ナイアガラ・トライアングル Vol.1』 に、ソロ作品として発表した。'90年代になってシングルで再発された際のリミックス・ヴァージョン。
「シングルで再発された際のリミックス・ヴァージョン」、つまり、1982年リミックス。
うーん、本人がそう言うならそうなのか?
パレードには(デモを除いて)3種類のミックス違いがあります。
1976年のナイアガラ・トライアングルのバージョン(オリジナル)と、
「Down Town」の最初シングルのB面、かつ1994年のCDシングルである1982年リミックス、
そして、1995年のベストアルバム、トレジャーズ用に作成した1995年リミックスです。
「パレード」の1994年のシングル盤
1994年版は'82リミックス・バージョンと銘打ってます。
初出ら1982年に「Down Town」がシングルとして再リリースされたときのB面。
www.tatsuro.co.jp
「パレード」が一番最初にリリースされたのは1976年のナイアガラ・トライアングルのバージョンで、イントロに坂本龍一のピアノソロがあり、アヴァンギャルドなエンディングが付いているものですが、1982年ミックスでは、このイントロとエンディングが削除されています。
なお、イントロのピアノソロとパレードのイントロがクロスフェードしているので、単なるエディットだとイントロにピアノソロの最後が被ってしまうので、イントロを完全に排除し、本編のフェードアウトも長くなった新ミックス。
ただし、本編のイントロはそのままフェードインというミックスになってます。
坂本龍一のピアノソロは無くなってるのでフェードインはしなくて良い気がしますがそれは1995年リミックスまでお預け、というところです。
イントロ部分の波形はこんな感じです。フェードインしてるのが分かると思います。
「パレード」のトレジャーズ向け1995年リミックス
1995年にムーン時代のベストアルバム「トレジャーズ」をリリースするにあたって、大滝詠一がリミックスを施しました。ライナーノーツにはこう書いてます。
最後の一曲はちょっとした「おまけ」です。1976年に大瀧詠一・伊藤銀次・山下達郎の3人で制作したアルバム「ナイアガラ・トライアングルVol.1」に収録されている、もともとは私のシュガー・ベイプ時代のレパートリーです。昨年(94年)フジTV系「ポンキッキーズ」に使用されたことから、20年の時を経てシングル・カットされました。ちょっとはずかしい、山下達郎22才の歌声です。ナイアガラのご好意によりこのアルバムに収録することが出来ました。しかも、大瀧詠一氏がこのアルバムのために新たにミックス・ダウンして下さった、ニュー・リミックス・ヴァージョンというぜいたくさです。
イントロ部分の波形はこんな感じ。
フェードインの有無の違いわかりますかね?
あと、1995年リミックスは、エコー処理やギターの音抜けも全然違いますね。
1982年はエコー深め、1995年ではギターサウンドのキレが増してます。
「パレード」の2012年版
では、「OPUS」に収録された「パレード」はどうなっているか。
2012年のリリースなので音量レベルは全体的に上がってますが、フェードインではないです。
並べてみた
3つ並べてみました。わかりやすいでしょう?
実はランニングタイムも僅かに異なり、1982年リミックスの方がわずかにテンポが早い。
ということで、2012年の「OPUS」に収録された「パレード」は1982年リミックスではなく、「トレジャーズ」用にリミックスされた1995年リミックスである、と思います。
タツローマニアでの本人の弁
と、ふとファンクラブ会報誌「タツローマニア」のVol.111(2019年秋号)を読んでいたら、山下達郎本人が、パレードは1995年のリミックスがこの曲のベストのミックスであり、2012年のOPUSでもそのミックスを使った、とはっきり書いてましたね。(転載禁止なので引用しません)
あと、1994年のシングルリリースに関しては本人は関与してないらしい。
それで、1982年リミックスが達郎本人は気に入っておらず、トレジャーズでリミックスをお願いした、ということらしい。おそらく本人が関与していれば1994年の時点でリミックスをしていたことでしょう。
ちなみに、1995年に大瀧詠一にリミックスをお願いしたところ定位などガラッと変えてしまったらしく、一度リジェクトして再度リミックスをお願いしたらしい。SONGSの40周年盤みたいなリミックスですね、全体的なイメージはあくまでオリジナルから逸脱しないように、という。
ここまで徹底してリミックスしたのに、OPUSであえて82年リミックスを使う理由はないですね。