山下達郎の「パレード」には、公式発表されているもので4バージョンあります。
・ナイアガラ・トライアングル Vol.1の収録のオリジナルバージョン
※ イントロに坂本龍一のピアノソロ、アウトロにアヴァンギャルドな演奏が入るバージョン
・シングル用のリミックスバージョン
※ イントロとアウトロをカットして、定位を変えたバージョン。ベスト盤にはこちらが収録
・「SONGS」収録のLFデモバージョン
※ 本録音前のデモバージョンで、「桜吹雪」の大サビ付き
・「SONGS」収録のシュガーベイブ解散コンサートのLIVEバージョン
※ 「桜吹雪」の大サビ付き
(あとカラオケもありますがそれは割愛)
で、ちょっと気になることがあったので時系列的に整理してみました。「ちょっと気になること」が何かは後述します。
・1974.4 LFデモ収録
→ ここで「パレード」の初期バージョンのデモが録音されているということは、当初は「SONGS」に収録予定だったのだと思う。
・1974.10 〜 1975.3 SONGSレコーディング開始
→ そして「パレード」は「SONGS」からは最終的に漏れる。レコーディングもされてない模様。SONGSから漏れた理由を最近のサンデーソングブックで話していたが、「SONGS」レコーディングの頃、シュガーベイブとしては、既に古い曲だったので漏れたとのことらしい。ただ、似た路線の「素敵なメロディー」はこの頃作曲されているから、「WINDY LADY」的な路線に移ったから「パレード」が外された、という訳でもないんだろうと思われる。「SHOW」は後期のコンサートでは外されていたらしいけど、このアルバムには入ったということは、単に古い曲だからという理由なんでしょう。「夏の終わりに」とかと同じ感じですかね。
・1975.4 SONGS発売
・1975.11 ナイアガラ・トライアングル Vol.1 レコーディング開始
→ ここで「パレード」が大胆にリアレンジされて録音される。リズム隊は3期シュガーベイブの上原裕と寺尾次郎。キーボードは坂本龍一。ギターは達郎本人。村松邦男と大貫妙子が外れたハーフ・シュガーベイブ。
・1976.2 シュガーベイブ解散宣言
・1976.3 ナイアガラ・トライアングル Vol.1 発売
→ この辺の時系列が今まで曖昧でしたがシュガーベイブ解散直前にトライアングル Vol.1 がリリースされています。
・1976.4 シュガーベイブ解散
で、シュガーベイブの解散コンサートでの「パレード」が「SONGS」の40周年記念盤に収録されています。
この時のアレンジがLFデモベースのバージョンで、
・跳ね方が派手
・アレンジはギターがメイン
・ドラムが目立つイントロ
・「桜吹雪」の大サビ付き
しかしながら、「ナイアガラ・トライアングル Vol.1」に収録されたバージョンは、
・跳ね方が落ち着いた
・アレンジはピアノがメイン
・大サビなし
になっていて、なんとこれは、シュガーベイブの解散コンサート前に録音されています。
※ちなみに1994年のSongs Sugar Babeというシュガーベイブのレパートリーを演奏したコンサートでは「ナイアガラ・トライアングル」アレンジで演奏されています。
で、何が「ちょっと気になった」のかというと、解散コンサートで「桜吹雪」大サビがきちんと歌われておらず、歌詞を忘れたのか最初がモゴモゴするわけです。で、これが何故なんだろうと。僕はてっきり、シュガーベイブ解散後にナイアガラ・トライアングルのパレードが録音されていたと思ったのですが、これが逆なんですね。つまり大サビが無いバージョンを録音してしまった後のオリジナルアレンジのバージョンを演奏したので歌詞が飛んだのではないかと思ったのです。
新しいアレンジの「パレード」については、キーボーディストとしては素人同然だった大貫妙子ではなく、坂本龍一を起用してキーボードメインのアレンジにした。それで村松邦男がメンバーとして入っていないのでしょう。で、この時に手応えがあってシュガーベイブの解散を決めたんじゃないかと思うのです。公の解散理由としては上原裕が辞めるから、という理由だったようですが、実はその後の山下達郎バンドにも参加するんですよね。つまり、シュガーベイブの解散理由はもっと上手い人と演奏したかったってことなんじゃないかなぁと、個人的には思ったのです。
あくまで後追いで聴いた人の勝手で野暮な推測ですが。