俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

Rainbow Rising のミックス違い

Rising

Rising

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レインボーの「Rainbow Rising」のデラックス・エディションがリリースされてから12年経っているので、かなり今更ネタで恐縮ですが、サブスクで聴けるデラックス・エディションのニューヨーク・ミックスとロサンゼルス・ミックスって何なのかなとずっと思ってたんですが、ニューヨーク・ミックスがオリジナルのLPミックスで、ロサンゼルス・ミックスがCD化された際のミックスらしい。

私は草野マサムネ〜ロッド・エヴァンスの流れでレインボーまで辿り着いて改めて聴き直してるけど、実はつい最近レコードコレクターズで取り上げられたばかりとのこと。知らんかったので先日読みました。

で、聴き比べてみたんですが、ニューヨーク・ミックスが自分が聴いてきたミックスではなくて、ロサンゼルス・ミックスが良く知っているミックスだった。自分が持っている盤を確認してみたら1993年くらいに出た廉価版の日本盤CDだった。

www.discogs.com


これは、ロサンゼルス・ミックス。で、この日本盤CDもどこかのタイミングでオリジナルのニューヨーク・ミックスに戻して流通しているとのこと(1999年から、らしい)。

そういえば、昔、90年代中頃にシンコー・ミュージックの炎という雑誌に「Rainbow Rising」のCDの音がオリジナルと違うとかって投書を読んだ記憶がある。
そこには確か「Stargazer」のイントロが違うとかって書いていて、それがずーーっと気になっていた自分は、2003年くらいに日本盤のアナログLPを中古盤屋で買ってきて(300円くらいだったハズ)、Stargazerのイントロだけ聴いてみたら、別に一緒じゃね?と思ってそれから聴いていなかった。

で、今になってわかったけど、イントロっていうのは、ドラムソロ+ピックスクラッチのところじゃなくて、そこが終わった後のリフのところだったということらしい。

確かにスペーシーなシンセサイザーが聴こえるけどそこまで目立たない。その雑誌にはたしか、あれがないと魅力が損なわれるくらいの勢いで書いていたから分かりやすいミックス違いなのかと思ってたらそうでもなかった。別にあれがあってもなくてもそこまで大差ないかな。

それで、この前20年越しに、日本盤アナログをクローゼットから引っ張り出して聴いてみたら、やっぱりこれはニューヨーク・ミックスでした、という。
ちなみにこのLPは渋谷陽一、いまいずみひろし、松本謙之助というお三方の鼎談がライナーノーツのおそらく1976年盤。1980年の再発時は酒井康になっているはず。
ミックスの前に渋谷陽一がレインボーのライナーを書いてたってのがかなり不思議な感じがする。

つまり、このアルバムがリリースされた当初はみんなこのニューヨークミックスで聴いていた。自分はロサンゼルスミックスで聴いていて、当時ミックスが違うものが流通していたなんて思っていなかったので、それがオリジナルだと思って聴いていた。
そんなわけで、個人的にはニューヨーク・ミックスには違和感があるわけですよ。

まあでもオリジナル盤を聴いてきた人は、よりソリッドなロサンゼルス・ミックスには違和感があるんだろうなとは思う。
でもやっぱりロサンゼルスの方が音は良くないですかね?中には絶対にロサンゼルス・ミックスは認めないという人もいるらしい。

オリジナル至上主義なのかなんなのか・・・。
そもそもミックス自体、マスター盤完成に至るまで色々試行錯誤した上での、一つの結果でしかないと思う。
一応、その時点での完成品はこれ、みたいな。
例えば、誰かの鶴の一声でどこかのパートが変わったりとか、政治的な都合で音量が下げられたりとか、流行っているからフェイザー入れてみようとか、そんなノリのミックスだって多々あったはずで、そんなものを後生大事にすることもないのかなと。
最終ミックスよりも良いミックスを求めて何度もリミックスする人がいるのは、やっぱり当時のマスターに不満があるからじゃないのかな。

ニューヨーク・ミックスの場合、やけにフェイザーとかフランジャー使っていたり、妙なパンニングがあったり、ベースが聴こえなかったりとスタジオ上での小細工が多い感じがする。
なので耳馴染みがあるということを差し置いても、ロサンゼルス・ミックスの方が好み。

当時、なんとなくこの時代の他のパープル系の作品に比べると「Rainbow Rising」だけ「音の塊」感がすごいなとは思っていた。
「Burn」「Stormbringer」「Ritchie Blackmore's Rainbow」「Rainbow Rising」「Long Live Rock'n'roll」その他、この辺は全部マーティン・バーチがエンジニア。
なのに「Rainbow Rising」だけ音がゴツゴツして分厚いなぁ、と思っていた。
でもニューヨーク・ミックスを聴くと、それほどゴツゴツしてないので他の作品と比べた時の馴染みは良いなぁという気はする。

ちなみに、CD化に際してロサンゼルス・ミックスを作り直した(リミックス)のかと思っていたら、どうやらそういうことでもないらしい。
詳しくは知らないけど、ロサンゼルス・ミックスが元々あって、これをミックスし直したみたい。
つまり(世に出たものとは違うけど)ロサンゼルス・ミックスがオリジナル・ミックス、ニューヨーク・ミックスがリミックスってことかな。
そう考えて聴くと、謎のフェイザーフランジャーとかハンドクラップ等、スタジオで小細工したのもリミックスっぽいなぁという気がする。
ラフ・ミックスというのもあるけど、これはアウトテイク集じゃなくてラフ・ミックス。

  1. ラフ・ミックス
  2. ロサンゼルス・ミックス
  3. ニューヨーク・ミックス

の順。ラフ・ミックスはスタジオ上の小細工はほぼなし。これをベースにロサンゼルスでミックスした。元々のラフミックスも低音が強めで、そこはあまり変えてない。
ただギターは大きすぎたので少し下げたんじゃないかな。あとはちょっとした小細工。「Starstruck」のロニーの叫びのパンニングはロサンゼルス・ミックスにもある。
で、経緯は分からないけど、ニューヨークで再ミックス。この時に、ベースが強すぎるので軽くした。

さらに、一番の謎が最もアメリカン・ロックっぽい「Do You Close Your Eyes」に入っている多くのエフェクト。一番驚くのは2コーラス目から突然入るハンドクラップ。
このアルバム中ではこの曲が最もキャッチーな曲なのだけれど、そういえば思い出してみると、リッチーはレインボーをラジオで掛けてほしくて次作「Long Live Rock'n'roll」をアメリカ市場をターゲットにした、と言われていた。
今聴くと、「こんなのアメリカのラジオがかけるはずないでしょ!」と思うんだけど。
そのリッチー悲願のアメリカ進出は、実はライジングの頃からあって、それが「Do You Close Your Eyes」のニューヨーク・ミックスに現れているのでは?と私は思う。
あとこの曲に限らずロサンゼルス・ミックスは音が太すぎるので、軽くした。
ただ、音が軽くなってもやっぱり「Rainbow Rising」、頼みの綱の「Do You Close Your Eyes」だけアメリカ仕様でもにっちもさっちもいかないのでやっぱダメか、となって、次作で半分くらいコンパクトな曲にしたけどアメリカでの結果は変わらず。
それで1979年にグラハム・ボネットを入れて死ぬほどポップな曲「Since You Been Gone」をシングルとして出してアメリカでもスマッシュヒット、という流れ、かな?
つまり俗に言う、レインボーのアメリカ市場を見据えたポップ化は、実は「Rainbow Rising」から始まっていたのだというのが私の説。

オクラになったはずのロサンゼルス・ミックスがなぜCD化の際に採用されたかは不明。ただニューヨーク・ミックスのちょっと時代がかった音像よりかは90年代はもうちょっとソリッドな音像の方が合っていたというのはあるのかな?

ちなみに個人的な好みを言うと「Rainbow Rising」は周りが言うほど好きというわけでもない。「Tarot Woman」と「Do You Close Your Eyes」は好きだけど「Stargazer」「A Light In The Black」はそこまで好きではない、まあまあくらいかな。
Stargazer」のイントロはたしかにカッコいいが、曲が長すぎる。よく比較されるツェッペリンの「Kasimir」も大した好きではない。
大作で言うなら「Gates of the Babylon」とかサバスの「Heaven and Hell」の方がよっぽど良い。初期レインボーだと1stと「On Stage」の方が良く聴いていた記憶がある。
「Man on the Slver Moutain」とか「16th Century Greensleeves」の方が曲の出来が良い。
ただ、それでもやっぱりこのアルバムもかなり聴いてきたので、ミックスの違いは結構分かる。

ミックスの聴き分けポイントに、「Tarot Woman」のイントロか、「Stargazer」のイントロを勧めている人がいたけど、そこよりも「Do You Close Your Eyes」だと私は思う。
イントロのギター全然違うじゃないですか。ハンドクラップも。

[相違点まとめ]

Tarot Woman

全体的にベースは大きめ。

イントロ

[NY] ギターリフが入ってくるのが1:15で右チャンネルのみ、1:23に別のギターがあり、ゴボゴボ言っている、おそらくもう一つのギタートラックのリフ弾く前の準備のノイズが入ってる?
[LA] ギターリフがフェードインで入ってくるのが1:23で左チャンネルから、1:32に右チャンネルから同じフレーズのギターが入ってくる、ノイズは取り除かれてる

ギターソロ

[NY] 下降フレーズのところでパンニングあり
[LA] パンニングなし

ギターソロ終わり&アウトロ

[NY] ドラムトラック全部にフェイザーフランジャーがかかっている、クラッシュ・シンバルに顕著
[LA] エフェクトなし

最後のボーカル

[NY] ロニーのボーカルのリバーブかなり強め
[LA] リバーブはあるもののそこまで強くはない

Run with the Wolf

全体的にベースは大きめ。ランニングタイムはLAの方が4秒ほど長い

アウトロ

[NY] ギターソロが大きめ
[LA] ギターソロがドラムとベースに埋もれがち

Starstruck

全体的にベースは大きめ。その他、全体的にリバーブなどが違うと思うがその他の曲に比べるとそこまで違いは大きくはない

Do You Close Your Eyes

この曲が一番ミックス違いが顕著。全体的に他の曲と同じくベースは大きめ。ギターサウンドもNYの方はハイが強め、LAはミッドが厚い。

イントロ

[NY] ギターにトレモロ、スイッチング奏法と書いている人もいたがカチカチというノイズがないのでトレモロだと思う、ラフミックスにもそんなのないし。
[LA] トレモロなし

サビ

ボーカルの定位が違う
[NY] 左チャンネルにコーラス、中央〜右チャンネルにメイン
[LA] 右チャンネルにコーラス、中央〜左チャンネルにメイン

2コーラス前のギター (1:32)

[NY] ギター大きめ、これもスイッチングではないと思う、多分軽いアーミング

2コーラス目からのアレンジ

[NY] いきなりここから終盤までハンドクラップが入っていてパーティ感が出ている
[LA] ハンドクラップなし

Stargazer

全体的にベースは大きめ。
ドラムにフェイザーフランジャーがずっと掛かっている。

イントロ

[NY]ドラムソロの後のリフの後ろで波長の大きいフェイザーの掛かったキーボードが入っている

A Light In The Black

全体的にベースは大きめ。
ドラムにフェイザーフランジャーがずっと掛かっている。


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ちなみに、「A Light In The Black」は製作中は「Coming Home」と呼ばれていたらしい(サビの歌詞)。このアルバムリリースの3ヶ月前にディープ・パープル最後のアルバムがリリースされていて、1曲目が「Comin' Home」という曲だったから急遽タイトル変更したのかなという気がする。