俺の記憶ストレージ (Part 1 & 2)

溢れ出る 色の渦 巻き込む パレード デイドリーム

枯野に咲く花 - Flowers In The Dirt -

2017年2月某日。自分の在籍していた会社の突然の事務所閉鎖を知らされ、東京転勤か札幌で新たな職探しかの二択を迫られ、なんとか別の会社で働き始めたのはつい先日のこと。こんな状況にも関わらず、13インチのMac Book Pro 2015(Core i5 2.9 GHz / SSD 512GB / メモリ8GB)を買ってしまったりしたのも、会社都合により退職金に相当色を付けてもらったからなのですが、実は先日こういうものも衝動買いしてしまいました。

 

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高かった。定価26,000円でしたが、DVD付属のためAmazonではディスカウントされておりましたが、それでも20,000円でした。ただ、本当にデラックス・エディションでしたね。過去にこういう大きめのセットを買ったのは「はっぴいえんどスターピース」とか「NIAGARA CD BOOK」以来なのですが、それくらいデラックスでしたね。

 

ポール・マッカートニーのデラックス・エディションは近年大量に出ていますが、買ったのは今回が初めてになります。コステロが絡んでるんだから買わざるを得ない。Attractionsが解散状態にあるコステロが気晴らし(Distractions)にポールと共作したのかな?と考えてしまうくらいに、どちらかというとコステロ側にバイアスがかかった感じでこのデラックス・エディションを買いました。

 

2枚組のSpecial Editionと呼ばれる方は、オリジナルの「Flowers In The Dirt」と、オリジナルデモと呼ばれる2枚組。オリジナルデモはコステロと一緒に歌っている、本当のデモですね。ザ・デモバージョン。実はこれは結構海賊版で出回っているのでそんなにレアなものではないと思うんですが、デラックス・エディションにはさらに「1988デモ」という謎のディスクと、DVDが付いてきます。で、この1988デモというのが結構すごい。オリジナルデモに少し毛が生えた程度なのかなと思ったら全然違うアレンジの全然違うものでした。デモって聞くと、アコギでジャカジャカ曲の骨格だけ分かるみたいなイメージですが、これはそうではなく、将来のアレンジを見据えたプリプロ、もしくは本プロのラフミックスみたいな感じです。で、DVDでは「Put It There」という映像作品ではちょっとしか見られなかった制作過程が、目一杯見られます。これだと、当時のポールバンド(ヘイミッシュ・スチュワートとかがいる)と、コステロが一緒にセッションしたりしてるんですよね。

 

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「Flowers In The Dirt」って、エルヴィス・コステロとのコラボのことがメインで語られがちなんですが、実際にリリースされたオリジナル盤については、コステロの比重はそれほど高くなく、あくまでもポールのアルバムにコステロがちょっといる、みたいな感じなんですよね。それはコステロ側の「Spike」もそうで、アラン・トゥーサン、ロジャー・マッギン、クリッシー・ハインドなどの錚々たるゲストの中に、ポール・マッカートニーがいる、みたいな感じです。

 

だがしかし、デモはコステロとのコラボに比重が割かれてて・・・というかコステロとの共作曲しかないんですよね。ポール単独作のデモが全然ない。ちなみに、このデモの中に「Back On My Feet」と「Veronica」がないのは、このセッション以前に持ち寄った曲だからなんだと思います。「Veronica」はポールと共作するにあたり、コステロがポール風の曲を手土産に持っていったからだそうな。「Veronica」は極めてポール的ですが、実は殆どコステロが作ったということなんでしょうかね。

 

「1988デモ」がここまでの完成度を誇っていたにも関わらず、リリースされなかったのは、ポールとコステロの商品化時のアレンジの方向性に違いがあったからだと付属のブックレットに書かれてました。なるほど、確かに「Flowers In The Dirt」には、コステロは絶対やらないだろうなという、トレヴァー・ホーンのいかにも80年代的なアレンジの曲があったりするので分からないこともありません。なんとなくですが、コステロとの共作曲は「Spike」に含まれててもおかしくないアレンジだと思うですよね。「You Want Her Too」は最初こそサージェント・ペパーズみたいですが、アウトロはビッグバンド的なアレンジだったりするし、「That Day Is Done」のニューオーリンズ風のアレンジなんかは、「Spike」の「Deep Dark Truthful Mirror」を彷彿とさせます。とはいえ、「Spike」に収録されている「…This Town…」なんか、ドラムサウンドにゲートリバーブかかってたりして、割と80年代サウンドなんですけどね。

 

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個人的には、ポール側のジョージ・ハリスンに対する対抗心みたいなのがある気がしてるんですよね。ジョージ・ハリスン側はご存知の通り、ボブ・ディラントム・ペティ、ジェフ・リン、ロイ・オービソンとトラヴェリング・ウィルベリーズを結成し、なかなかのヒットをするわけです。これが1988年。「1988デモ」を仮に「マッカートニー&コステロ」名義でリリースした場合、80年代当時「終わった人」扱いされていたポールが「ジョージに倣って」コステロに助けてもらった構図になるのを嫌ったんじゃないかと、個人的には思うわけです。ブックレットによると、ポール自身、このリイシューの前まで殆ど聴き返してないアルバムだそうです。「やっぱり他人に助けてもらって俺の色が薄いのがちょっとなぁ・・・これが傑作とか言われるのは癪だなぁ」とか思ってたのかなぁと妄想してしまいます。直近のベストアルバムにも「Flowers In The Dirt」からの曲はまったく収録されてないですし。コステロ側は、ビル・フリゼールやら、アラン・トゥーサンバート・バカラックザ・ルーツなどとコラボアルバムをリリースしてますし、コラボ作のリリースには全然抵抗なかったと思うんですよね。やはりリリースを嫌がったのはポールサイドなのかな?

 

80年代には「終わった人」扱いだったポールが復権した現在、もう全部出しても良いんじゃねーの?的な感じで今回リリースしたのかなと。でもちょっと気恥ずかしいから、安い方の「スペシャル・エディション」ではなく、「デラックス・エディション」を買った人にだけこっそり聴かせますよ、ということなのかもしれない。ちなみに「デラックス・エディション」にはダウンロードオンリーの音源もあって、そこには「Shallow Grave」と「Mistress And Maid」のカセットデモ、というのもあってこれもなかなか。レコード・コレクターズ誌は買いましたけど、僕の好きな「Shallow Grave」に触れられてなくてちょっと悲しい。

 

 

 

ちなみに、個人的にはポール・マッカートニーのソロ以降の傑作と言って良いのは「Chaos And Creation In The Backyard」だけだと思ってます。あとは好きな曲はあってもどうにも全体的には中途半端だなぁと。「Flowers In The Dirt」も然り。ポールファンには怒られるかもしれませんが、僕にとってポールの比重はそんなに高くない。でも、アンソロジープロジェクトの直前までは割と世間的にもそういう存在だった気がしますけどね。アンソロジーあたりでビートルズ神格化が進むにつれて、ポール不可侵な空気が醸成されていったような気もします。僕はどちらかと言うとコステロ>ポールというスタンスなので、「ポール・マッカートニーを復活させたコステロ」という構図は嬉しくもあるのですが、こういう時にしかコステロが語られないというビートルズ至上主義的な空気はどうも釈然としないものがあります。僕にとってコステロはポールの存在有無に関わらず、超重要人物なわけですよ!!!同時期のコステロのアルバムにだってポールとの共作曲はあるし、そっちの方がアルバムの完成度は高いと、個人的には思うのです。「Spike」「Mighty Like A Rose」「All This Useless Beauty」、全部素晴らしいんですけどね!何度も書きますが、本屋に行くとビートルズの本は死ぬほど出てますが、コステロの本なんてありませんよ。たまーーに置いてるところもありますけどね。

 

さて、ここから妄想タイム。幻の「マッカートニー&コステロ」が実現していた場合のランニングオーダーはどうすれば良いのか、しょうもないことを個人的に考えてました。

 

Side-A
  1. My Brave Face (Paul McCartney - Flowers In The Dirt)
  2. Twenty Fine Fingers (Paul McCartney - Flowers In The Dirt 1988 Demo)
  3. So Like Candy (Elvis Costello - Mighty Like A Rose)
  4. Veronica (Elvis Costello - Spike)
  5. Mistress And Maid (Paul McCartney - Off The Ground)
  6. Pads, Paws & Claws (Elvis Costello - Spike)
  7. The Lovers That Never Were (Paul McCartney - Off The Ground)

 

Side-B
  1. You Want Her Too (Paul McCartney - Flowers In The Dirt)
  2. Shallow Grave (Elvis Costello & The Attractions- All This Useless Beatuty)
  3. Don't Be Careless Love (Paul McCartney - Flowers In The Dirt)
  4. Back On My Feet (Paul McCartney - Single B-Side)
  5. Playboy To A Man (Elvis Costello - Mighty Like A Rose)
  6. Tommy's Coming Home (Paul McCartney - Flowers In The Dirt Original Demo)
  7. That Day Is Done (Paul McCartney - Flowers In The Dirt)

 

Bonus Track
  1. ...This Town... (Elvis Costello - Spike) ※
  2. My Brave Face [Live] (Paul McCartney - Tripping The Live Fantas)

 

コステロ単独作ですが、ポールがヘフナーを弾いてます。