俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

サンダー史 Part 22:8th「Robert Johnson's Tombstone」


2006年10月30日、英国にて「Robert Johnson's Tombstone」がリリースされた。

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前作のリリースが2005年2月なので、2年連続での新作リリースとなった。当時の平均年齢46歳のバンドとしてはかなり早いスパンのように思える(1年8ヶ月)。
だが、実は2021年の「All the Right Noises」と2022年の「Dopamine」のスパンの方が短く、こちらは約1年2ヶ月のスパンだった。
ただ、この時はコロナ禍でライブ活動ができないということも影響していた(要するにレコーディングくらいしかできない状況だった)。
山下達郎の最新作「Softly」も2022年だが、この時もライブ活動ができないのでアルバムを出したと本人が言っていたので世界的にそういう傾向にあったのかもしれない。

チャートアクションとしては56位となり、第2期再結成期としては一番高いのだが、それでも一般的なレベルだと無風と言って良いレベルだろう。
「The Magnificent Seventh」が70位、「Robert Johnson's Tombstone」が56位、次作の「Bang!」が62位と、やはりマスを相手にしようとするとインディーズだと心許ない。
なお「Shooting At The Sun」に至ってはランクインすらしていない。

earMUSIC、BMGなどの準メジャー/メジャーレーベルから配給された第3期再結成期はこの時期よりもかなりチャートアクションが良い。

「Wondar Days」が9位、「Rip It Up」が3位、「All The Right Noises」が3位、「Dopamine」が5位で、なんと企画盤である「Please Remain Seated」までもが8位になっており、初期サンダーを彷彿とさせるチャートアクションとなっている。


2006年12月16日にはシングルカットされた「The Devil Made Me Do It」が英国チャート40位に食い込む。
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サンダーとしては、「The Devil Made Me Do It」が旧来型フィジカル展開した最後のシングルとなった。
これ以後、ダウンロード販売や、コレクターズアイテムとしてヴァイナル、プロモCDや、EP扱いのものはリリースされるが、「普通の」シングルとしてはこれが最後である。

「The Devil Made Me Do It」は最初に書かれた曲で、前作のようなリフ主体のコンパクト路線を踏襲した明るいハードロックとなっている。
イメージとしてはブライアン・ジョンソン時代のAC/DC(「Highway To Hell」、「Back In Black」など)とか、サミー・ヘイガー時代のVan Halenのような(「Best Of Both Worlds」)雰囲気である。

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しかし、このアルバム中でも白眉の出来と言えるのが、タイトルを冠したリーダートラック「Robert Johnson's Tombstone」である。

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個人的には、第二次再結成期のサンダー作品の中で最もお気に入りの1曲かもしれない。

曲名を目にした瞬間、「ロバート・ジョンソンってたしかブルースど真ん中の人だったよな…ちょっと苦手かも」と身構えた。
イントロが始まると、スライドギターが絡むアコースティックなブルースで、予想どおりの始まり。
しかしそこから突如、オーバードライブされたエレキギターのリフが切り込んでくる。
実は“裏”から入っているリフだがが、すぐには気づかず、やがて後から加わるバスドラムのパターンによって、ようやく拍の位置がズレていたことに気づく。
まあ正直これは王道のトリックかもしれないが、こういう仕掛けには心をつかまれてしまう。

曲全体は、4つの異なるパートで構成されたプログレッシブなブルース・ロック組曲変拍子やクセのあるシンコペーションも交えつつ、サンダーお得意のポリリズム的グルーヴで流れるように展開していく。
プログレ的とはいえ、唐突なリズムチェンジは一切なく、むしろあまりに自然に流れるため、パターンが切り替わったことすら気づかないリスナーもいるかもしれない。
アウトロでは、まるで幕を閉じるかのように、冒頭と同じスライドギターのアコースティック・ブルースへと回帰し、静かにフェードアウトしていく。リプライズ的であり、余韻を残すエンディングである。

ルーク・モーリーが自分の曲を「この曲はツェッペリンみたいなだね」と評することがあるが、この曲に関しては“ツェッペリン風”を超えてツェッペリンという存在の“概念”をもオマージュしているかのようにも感じる。そして、これを4分近くでコンパクトにまとめているのにも驚く。
まったく無駄のない名曲である。
いや、この曲は人を選ぶ。迷曲と言って良いかもしれない。人によっては何が良いのか分からないかもしれない。
少なくとも個人的にはある意味似たタイプの「Empty City」を遥かに超えた曲だと思う。


前作に続き、「公報誌」BURRNでのインタビューも実現した。
BURRN2007年3月号。

ーさて、順調なペースで新作スタジオ・アルバムもリリースされましたね。昨年2月の来日時のインタビューでは「忙しくてロクに曲作りの時間も取れない」と言っていましたが、いつ頃から曲作りに取り掛かったのですか?スランプに陥ることもなくスムーズに曲がけましたか?


ルーク:曲の一部は、2005年の10月頃から書いていたんだ。その頃に4曲か5曲は書いてあったと思う。そして日本でDVDの撮影をした後、家に戻ってまた沢山書いた。だから、曲の大半はその時に書いたことになるね。基本的には、自由な時間が取れる日が2~3日もあれば、曲作りに専念していたよ。スランプなどは特になく、かなり早く書けた。全部上手く書けているといいんだけど。(笑)


ーアルバムにはとても”THUNDERらしい”曲が満載ですが、ファンが喜ぶTHUNDERらしさを貫きつつ、パンド自身が退屈せずに新鮮な気持を保ち続けられるというのは稀有な、難しいことに思えます。モチヴェーションを失わずにいられる秘訣というのはあるのでしょうか?


ルーク:いや、特にはないよ。ただ、凄く楽しんでやっているのは確かだ。楽しいことは、多少なりとも早くやれるし、上手くやれるものだ。それに、THUNDERは既に8枚のスタジオ・アルバムを作っているから、自分達のやっていることがよく判っているんだ。あとは、これだ!と思える曲が書けるかどうかだと思うけど、どうやればそれが出来るかは、何とも言えないよ。(笑)ただやるしかないんだと思う。俺達は昔から自然なバンドだからね。曲を書いたらスタジオに入ってプレイする。それをやっているうちに、自然と上手くやれるようになっているのかもしれないな。


ー特に設けたテーマやゴールはありましたか?


ルーク:なし。(笑)いつもそうなんだ。いつも、ただ曲を書いて、バンドとして満足出来る曲が12~13曲揃ったら、バンドとして質の高いものに仕上げられると思える曲が揃ったら、スタジオに入るだけ。THUNDERはコンセプトのようなものを決めてアルバムを作るバンドじゃないからね。そういうのはIRON MAIDENやMARILLIONのようなパンドがやることであって、THUNDERのやり方じゃないよ。独立した曲を書くだけさ。


ーアルバム・タイトルを「ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE」にしたわけは?


ルーク : 勿論 "Robert Johnson's Tombstone" という曲があるからだけど、曲はロバート・ジョンソンと彼のライフ・スタイルについて書いたもので、この曲を仕上げて、アルバムのタイトルについて考えていた時に、これをアルバムのタイトルにしたら面白いんじゃないかと思ったんだよ。THUNDERとしては興味深いタイトルだし、面白いストーリーになっているし、ヴィジュアル・イメージとしても良いものが出来るし、とにかくクールなタイトルだと思ったんだ。


ロバート・ジョンソンと言えは歌詞にもあるとおり、悪魔に魂を売って凄まじいギターの才能を手に入れたという伝説がありますが、あなたは魂と引き替えに悪魔が何かをくれるとしたら、何を望みますか?


ルーク:(笑)良い質問だ。だが、もしかしたら俺はもう何年も前に悪魔に魂を売ってしまったのかもしれないな...ロックン・ロール・バンドに入った時にね。(笑)...うん、良い質問だ。特にロック・バンドでプレイしているプロフェッショナルなミュージシャンの人生というのは、悪魔に非常に近いところにあるのかもしれないからね。多分、俺も、何年も前に悪魔に魂を売ってしまったのかもしれない。(笑)


ーアルバムのクレジットに “No devils or graves were harmed during the making of this album (このアルバムの制作中、悪魔や墓地には一切危害を加えておりません)”と喜かれていたのがおかしかったんですけど、あなたは悪魔もしくは精霊といった、この世ならぬものの存在を身近に感じた経験はありますか?


ルーク:いいや。俺はそういう理論は信じていないんだ。信仰心のある人間ではないからね。悪魔というコンセプトを信じるなら、まず神の存在を信じなくてはいけないし、そのためには宗教心のある人間でなくてはいけない。でも、俺はそういうタイプじゃないんだ。神と悪魔は、善と悪のメタファーだと考えているし、善と悪というのは総ての人間が持っているものだと思う。別々のものではない。誰でも善になるし、誰でも悪になる。神に近づこうとすることは、俺にとっては、出来るだけ善い人間になろうとすることを意味するんだ。


ークレジットにはもう一言、“And finally ... Harry James has left the building (again)"とありました。これの意味するところは?


ルーク:(笑)エルヴィス・プレスリーさ。エルヴィス・プレスリーラスヴェガスでコンサートを行なう時、彼がステージから消えても、バンドはまだ演奏を続けているんだ。そして司会者が "Ladies and gentlemen... Elvis Presley has left the buiding (紳士淑女の皆さん・・エルヴィス・プレスリーはもう会場を去りました)”と言うんだよ。で、俺達がツアーをしている時、ハリー(ジェイムズ / ds)はTHUNDERで唯一の喫煙者なので、煙を吸いたくない俺達とは離れて、彼だけが別のドレッシング・ルームを使うんだ。ハリーだけが専用のドレッシング・ルームを使っているから、俺達は彼をエルヴィスと呼ぶようになったんだよ。(笑) それで、彼をエルヴィス・プレスリーに見立てて、そのフレーズを使ったわけ。(笑)


ーでは1曲ずつ詳しくお訊きしますが、まず。あなたからそれぞれの曲についてコメントしておきたいことがあれば話していただけますか?


ルーク:うん、いいよ。1曲目は"Robert Johnson's Tombstone”。この曲は、THUNDERにとって非常に重要な曲だと俺は思っているんだ。音楽的にも変わっているし、曲の構成も普通じゃない。ヴァース~コーラス~ヴァース〜コーラス~ソロ、という普通の構成ではなく、4種類の異なる要素が1つになっているんだよ。俺達はいつもそういうことをやっているわけじゃない。そういう意味で、まず、普通とは違う曲だということが判ると思う。それに、さっき話したように、この曲はロバート・ジョンソンの人生について書かれたもので、彼はとても若くして亡くなったけど、悪魔に魂を売ってギターのテクニックを自分のものにしたんだとか、彼には墓が2つあるんだとか、彼にまつわる伝説は色々あってね。そもそもこの曲を書いたのは、ラジオでロバート・ジョンソンの生涯についての番組を聴いたからで、非常に面白いストーリーだと思ったところからこの曲が生まれたんだ。この曲の総てが素晴らしいよ。ライヴでも最高だと思うから、さっき言ったように、THUNDERにとって非常に重要な曲の1つになると思う。次の曲は何だったかな?


ー"Dirty Dream”です。


ルーク:今度は典型的なTHUNDERの曲という感じだよ。基本的にはポップ・ソングだね。ビッグなコーラス、一緒に歌える部分が沢山あって最高だ。一緒に踊れるロック・ミュージックという感じだよ。“Dirty Love”みたいに、何年も前から俺達がやってきた音楽でもある。良いグルーヴの曲だ。これもやっぱりライヴにぴったりだろうね。それから、良いユーモアのセンスがある。ギター・ソロにすら、ユーモアのセンスがあるよ。そういう意味でも、典型的なTHUNDERの曲だね。


ーこの歌詞は体験談?(笑)


ルーク:そういうわけではないよ。(笑)殆どの人が想像したことがあるけれど秘密にしていることじゃないかな。(笑) ちょっとショッキングな内容だからね。男が他の男の奥さんの夢を見るなんて、イケナイことではあるけど、人間というのは、時にはそういうことも考えてしまうものだよ。


ーアルバムには他にも色々な恋愛についてのことが書かれていますが、そういうのって普段から書き留めているんですか?


ルーク:いいや。俺は記憶力がとても良いんだ。(笑)歌詞の良いところは、100%事実でなくてもいい点だよ。自分に起こったことでも友達に起こったことでも耳にしたことでも想像したことでも、何でもミックスして構わないんだ。書いたことに共感を覚えてくれるなら、それでいいんだよ。


ー次の曲は“A Milion Faces”です。


ルーク:情緒的に困難な時、恋愛が上手くいかなくて関係が壊れてしまっても、他にも大勢の人がいるということは判っているんだ。自分の人生にとって大切な人は、他にも100万人もいるんだよ…という内容だ。音楽的には、かなり長い曲だよ。アコースティック・ギターが入っている曲はこのアルバムに2曲入っているが、その1つがこれ。それで、ちょっと穏やかな感じになっている。スタートは、ちょっとROLLING STONESの曲みたいに聞こえるかもしれない。それが発展していって、LED ZEPPELINのギター・ソロみたいな感じになるんだ。俺が好きなものが色々ミックスされているという感じだよ。THUNDERに影響を与えた要素が幾つか入っているんだ。


一胸を揺さぶるこういうバラードを歌わせたらダニー・ボウズは絶品だと思います。


ルーク:ああ、そのとおりだ。彼は非常に上手くやっているよ。


ーダニーのようなヴォーカリストがいると、バラードを書くのも楽しいのでは?


ルーク:そのとおり。どんな曲でも歌える声のために曲が書けるというのは、素晴らしいことだ。


ーあなたが書くのが一番得意なのはどういう曲ですか?


ルーク:さあ、どうなんだろう…。(苦笑)それは他の人達が決めることかもしれない。曲の感じ方は人それぞれだからね。例えば、順調な人生を送っている時にはハッピーな曲が合うかもしれないし、苦しい時には悲しい曲の方が良いと思うかもしれない。曲を書くということは、他の人達に届けたい、他の人達と繋がりたい、という気持から出ていると思うんだ。だから、歌われている内容を理解してもらいたいと思う。誰かと自分の人生を分かち合うんだ。それが曲を書くということだよ。人間のフィーリングやエモーションを音楽に込めているんだ。


ー "Don't Wanna Talk About Love" は?


ルーク:(”愛については話したくない”というタイトルにかけて)もう話したからね。(笑)ごめんよ、ジョークだよ。(笑)これはかなり怒っている曲さ。裏切られたと感じている人間の曲だからね。ダニーのヴォーカル・パフォーマンスは素晴らしいし、リフもなかなか良い。これもTHUNDERらしい曲だと言える。静かなヴァースから、どんどん盛り上がっていって、かなり怒った感じのコーラスになる。変わったダイナミクスの曲だけど、実にシンプルな曲だ。それはこのアルバム全体について言えることだと思う。シンプルで、初めて聴いた時からすぐに頭に入ってくる曲が多いと思う。かなりパワフルな曲が、このアルバムには沢山入っているよ。だから、結構面白いことになると思う。昨年11月にイギリスでツアーをやった時は、この曲はやらなかったんだ。何故だかリハーサルしなかったんだよ。でも、日本に行く頃にはこの曲も覚えているんじゃないかな。


ー次は "The Devil Made Me Do It" です。


ルーク:これもTHUNDERらしい曲で、素晴らしいユーモアのセンスがある曲だ。この曲は…何についての曲だったかな。(笑)誘惑についての曲だと思う。何をやっても、少々突飛だったり、物議を醸したり、人々にショックを与えたりするようなことなんだけど、それを悪魔のせいにしているんだ。(笑)自分がやったんじゃない、悪魔が俺にやらせたんだ、ってね。(笑)世界中で使われている言い訳じゃないかな。でも、かなりクールな言い訳だよ。(笑)さっきも言ったようにユーモアのセンスがある曲だから、あまり深刻に受け止めてはいけないよ。ビッグなコーラスで一緒に歌えるから、凄くライヴ映えする。去年やったショウでもプレイしたが、とても上手くいった。英国ではこの曲をシングル・カットしたんだけど、トップ40に入ったんだよ。凄くクールだ。このアルバムのために最初に書いた曲でもある。どんなアルバムでも、最初に書く曲というのは重要なんだ。その後の方向性を示唆する曲になるからね。
"Last Man Standing”は、俺達としてはちょっと変わった曲。多分、このアルバムで一番ヘヴィな曲だろうね。迫力のあるギター・リフで、LED ZEPPELINのようなフィーリングが感じられるがもしれない。ペース・プレイヤーのクリス(チャイルズ)と一緒に書いたんだけど、クリスがメインのリフを書いていて、俺はそれが凄く良いと思ったんで、それを曲にしてもいいかなと訊いたら、是非やってくれと言われたんだ。歌詞は、イラクの戦争について。俺の意見だ。ここに入っているのは、俺だけの意見だよ。俺は、英国と米国が今イラクにいるのは正しいことではないと思っている。非常に間違ったことだと感じている。だから、この曲にはアラビア風のテーマも入っているんだ。あの地域から生まれたフレーズを取り入れたかったんだよ。政治的な見解を歌詞に含めるのは俺達としては非常に珍しいんだけど、でも、この曲はそうなっている。誰も気分を害さなければいいんだけど。(笑)


ー"My Darkest Hour" は?


ルーク:これも、俺達としては非常に珍しい曲だよ。音楽的にはアコースティック・ギター1本とチェ口だけなんだ。この音楽は、ギターの曲として長い間温めていたものだった。3年、いや、2年ぐらいかな。でも、どうしたらいいか判らなかった。興味深い曲だということは判っていたけど、どういう風に使ったらいいか判らなかったんだ。でも、俺の友人に起こった出来事がインスピレーションになって歌詞を書いたら、自然にこういうものになった。ダークでメランコリーで悲しい感じに...。ヴォーカルを入れたら、チェロがその雰囲気を高めるのに効果的だと感じて、実際にとても上手くいった。かなりシンプルな曲だけど、他の曲とはかなり違っていて、非常に内省的で悲しくて...。後悔についての曲なんだ。そういうレヴェルで伝わればと思う。少なくとも、他の人達も俺と同じように感じてくれたらしいよ。(笑)


ー心に染みる曲ですね。


ルーク:そう思ってくれるんだね。良かった。


ーチェロを演奏しているのはどういう人?


ルーク:俺達の古い友人だよ。ジョアナ・クウェイルという女性だ。古くからの友人で、チェロを上手く演奏出来る人物が俺達の身近にいたというのは非常に幸運だった。彼女はTHUNDERのことをよく判ってくれているから、どういうムードが合うか、一緒に作り上げることが出来たんだ。


ープロのチェロ奏者なのですか?


ルーク:ああ。あらゆることをやっているよ。バンドもやっているし、色々なことに関わっている。


ー次は“Andy Warhol Said”ですが…


ルーク:非常にヘヴィでアグレッシヴなギター・リフの曲で、かなり怒っている。(笑)今イギリスでは、日本でもそうかもしれないが、“セレブリテイ”への興味が異常に高まっているんだ。雑誌もTV番組もセレブリティを扱うものがどんどん増えている。イギリスには、リアリティ番組というのがあって、それが大勢の人達を有名にしている。それは構わないんだが、俺が不満を感じるのは、何の才能も持っていない奴らが有名になっていることなんだ。演技や音楽やスポーツといった才能は何もないのに、ただTV番組に出ているだけで、何百万人もがその番組を観て、新聞がそれを記事にする。俺には非常に奇妙なことに思えるよ。俺が子供の頃は、どんな子供でも、何か得意なものを見つけようと思っていたものさ。機関士でもパイロットでもバスの運転手でもミュージシャンでも何でもいいんだ。とにかく子供達は何かになりたいと思っていたものだよ。しかし、今の子供達の多くは、ただ有名になりたがっている。何のためなのか、彼らには判っていない。ただ有名になりたいんだ。(苦笑)非常に不快な感じがする。アンディ・ウォーホルが「誰でも15分間は有名になる」と言った言葉は正しかったわけだ。彼の言葉は実に予言的だったと思う。彼は、セレブリテイそのものがカルトになりつつあるという事実を、既に認識していたんだ。これはそういうことについての曲だよ。アンディ・ウォーホルが40年ぐら前に観察していたことは非常に正しかった、ということを言っている曲だね。


ーセレブリティと言えば、イギリスのデイヴィッド・ベッカムが300億円の契約金でアメリカに渡る、というのが日本でも大いに報道されていますが、彼に言いたいことはあります?(笑)


ルーク:(爆笑)100万でいいから貸してくれ!(笑)


ー(笑)“What A Beautiful Day”は?


ルーク:とても気に入っている曲だ。ハッピーな感じで、その前の2曲とは良いコントラストになっている。誰かを見掛けた時の曲なんだ。とても天気の悪い日で、雨が降っている。大変な嵐の日に歩いていて、とても美しい人を見掛けた。すると、天気なんか大したことではないように思えるんだ。太陽が輝いているような気分になる。ひとめ惚れの曲だね。音楽も陽気なアップテンポの曲で、これも典型的なTHUNDERの曲だと思う。つい最近話をした人から、ちょっとTHE WHOっぽい曲だと言われて、とても嬉しくなった。大好きなバンドの1つだからね。良い感じの、アップテンポでハッピーなTHUNDERらしい曲だよ。


一曲の終わりに何か言っている声が入っていて、レコーディングの空気そのものを伝えているようですが、この声を残した意図は?


ルーク:レコードを作っている時には、ちょっと孤独に感じることがあるんだ。スタジオに独りきりでいて、オーディエンスがいなくて、機械に囲まれで…。でも、人間らしい瞬間も、レコードを作っている過程では沢山訪れる。思いもよらないことが起こって、笑ったりする。これもそういう瞬間の1つだよ。この曲のバッキング・トラックをレコーディングしていた時、俺はエンディングでとんでもないヘマをやってしまったんだ。「おっと、今のは中止してくれるかい?もう一度やり直さなくちゃ。エンディングを間違ったから」と言っているのは俺だよ。(笑)スタジオの雰囲気が伝わってくると思ったから、そのままにしておくことにしたんだ。


ー今回もレコーディングの作業全体はスムーズに進みましたか?


ルーク:ああ。今の俺達は、さっきも話したように、THUNDERのレコードを作ることにかけては経験豊富だからね。曲も何もかも用意出来ていれば、複雑なプロセスはないよ。ただスタジオに入ってやるだけさ。今でもお互いの存在を楽しんでいるし、よく一緒に過ごしている。大変なのは曲を書く部分だね。これだと思える曲を書かなくてはいけない。でも、それが出来てしまえば、あとはただ、それをレコーディングするだけだよ。


一次の“It's All About You”は、個人的にとても気に入っている曲です。


L:そうかい?なるほど。これはダークなバラードで、恋愛関係にフラストレーションを感じている曲なんだ。相手が自分との関係に興味を失っていると感じていてね…。音楽もそのムードを反映しているよ。その関係の将来に危惧の念を抱いて、相手が自分から去っていくだろうと感じているんだからね。それは決して良い感覚ではない。自信も失ってしまう。この曲を歌っているキャラクターは、将来に大きな不安を感じているんだ。音楽はその歌詞を反映したムードになっている。THUNDERのバラードは、普通はかなりハッピーだ。“Love Worth Dying For”も“A Better Man'”も、どれもポジティヴだろう?ネガティヴだったり、ダークだったりするものは殆どない。でも、このアルバムでは2曲がそういう感じのものになっている。何故だか判らないけど。(笑)もしかしたら、俺のムードがそういう感じだったのかもしれないな。


ー切々と胸に訴えてくるギター・ソロも素晴らしいですね。


ルーク:ありがとう。俺もこの曲のソロはとても気に入っているよ。ミュージシャンとしては、長いパッセージ(楽節)があれば、総ての感情をギターに込めて、曲のムードをさらに高めるような演奏をしたいと思うものだよ。


ー最後は“Stubborn Kinda Love”。


ルーク:これは楽しい曲だ。前の曲とは興味深い対を成している。殆どの人達には多分理解出来ないだろうが、マゾヒスティックなレヴェルで上手くいっている関係についての曲だからね。愛と憎しみが入り混じった関係の曲だよ。相手を他人のように感じていたのに、次の瞬間にはいかに相手を愛しているかに気付くんだ。そういう精神状態について書いた曲だよ。ユーモアや皮肉を込めて書かれている。BAD COMPANYのような、良いグルーヴがある曲だ。途中のインストゥルメンタル部分は、かなり変わっている。ネオ・クラシカルというか、DEEP PURPLEのような感じが凄くするんだけど、それがどこから出てきたのか、俺にも判らないんだ。(笑) まだ誰もやったことがないような感じがあるから、クールだよ。


ーギターも活躍していて、そこはかとなく明るさを漂わせつつフェイド・アウトしていくのがいい感じだと思いました。


ルーク:うん、かなりポジティヴな感じになっていると思う。楽しいヴァイブがあって、アルバムのエンディングとしては良い終わり方だと思うな。


ーこれをアルバムの締め括りに...という曲順の構成を決めるのは簡単でしたか?


ルーク:そうだね…曲順を決めるのはいつだって難しいよ。皆の注意を50分なり何なり引きつけることが出来て、最後まで通して聴いてもらえて、しかもそれぞれの曲が前の曲とは違う感じで、というものにしたい。自然な感じが大事だと思うし、旅に連れて行くような、そんな曲順にしたいと思うんだ。“'Stubborn Kinda Love”はそういう旅の終わりにぴったりの曲だ。


ー日本盤にはボーナスで"I'm In Heaven”と"The Girl Is Alright”が入っていますが...。


ルーク: “The Girl Is Alright”は、ケイティー・タンストールという英国のアーティストについて書いた曲なんだ。日本ではまだ知られていないかもしれないが、シンガー・ソングライターで、スコットランド出身の女性だよ。(註:東芝EMIから「EYE TO THE TELESCOPE」で2006年4月に日本デビュー済み) 俺の友人が彼女のツアー・マネージャーをしていたんだ。彼女のキャリアがスタートした時だから、3年ほど前かな。その頃、彼女がロンドンのとても小さなレコード店でプレイすることになったので、俺も観に行った。素晴らしかったよ。とても小さな店だったので、人が大勢集まり過ぎてしまって、超満員だった。彼女はアコースティック・ギターだけでパワフルな歌声を聴かせるミュージシャンなんだ。本当に素晴らしいんだよ。この“The Gin Is Alright”という曲は、基本的には彼女のことを書いたものだ。彼女はイギリスとアメリカでは何百万枚もレコードを売っているから、日本でも知られていると思ったんだけど…。きっと近いうちに彼女の名前を聞くことになるよ。誰かに「凄く良いバンドがいるから観に来いよ」と言われても、俺はいつも疑ってかかるんだ。あまり期待していない。(笑)でも、彼女は本当に素晴らしかった。人から聞いていたよりも、実際に観たらもっと素晴らしかった。そういうこともあるんだ。若くて才能のあるミュージシャンが出てくるのを見るのは嬉しいことだね。彼女はとても上手くやっているよ。
それから、もう1つの"I'm in Heaven”は、ちょっとオールド・ファッションなロックン・ロール。正確にはジャムではないが、書いていた時からリズムは8分の12拍子(3連)のドラムのグルーヴだったから、このアルバムの中では変わったテンボだね。それで、ギター・パートもちょっと変わった感じになっている。何となくVAN HALENみたいなフィーリングもあるかな。とにかく、非常にルーズな感じだ。いつもの俺達の曲のようにきっちりとした構成にはなっていないと思う。書いたのもあっという間だった。あっという間に音楽を書いて、歌詞を書いて、すぐに出来上がった。全部で2時間もあればもう完成していたよ。そんなところだね。他に話しておくこともない。良い感じのロックン・ロールさ。


ーこれらの2曲がアルバム本編に入り損ねた理由は何でしょう?


ルーク:俺は、アルバム本編は長過ぎてはいけないと考えているんだ。50分から55分の間に収めるのがベストだと思っている。それ以上、注意を引きつけておくのは難しいからね。だから、ベストだと思う曲を選ぶのは大切なことだよ。俺達は、最初の11曲がこのアルバムを最も強力なものにする曲だと言じているんだ。だからだよ。


ー日本盤には“Fade Into The Sun” "I Love You More Than Rock 'N'Rol"の、2005年の「Shepherd's Bush」でのライヴ音源もボーナス収録されています。この2曲を選んだ理由は?


ルーク:2曲とも前のアルバム(「THE MAGNIFICENT SEVENTH」)の曲だけど、どちらもビッグなライヴ・ソングになったからだよ。その雰囲気が、とても良い感じで伝わると思ったんだ。ロンドンでレコーディングされている。ロンドンでのライヴはいつも良い雰囲気になるんでね。この2曲のライヴ・ヴァージョンを知ってもらうのに、ぴったりだと思ったんだ。


実はこの時期、「公報誌」BURRN以外の媒体でインタビューを受けているが、かなり珍しいことだった。(まあ、ヤングギターとかには載っていたこともあるが純粋な音楽雑誌としては珍しい)
ただし、インタビュアーの奥村裕司さんは昔BURRNにいた人なので、メタル畑の人ではあるのだが。
ストレンジ・デイズ2007年4月号。

ー日本ではこの2月に発売予定の新作「ロバート・ジョンソンズ・トゥームストーン」ですが、すでにリリース済みのイギリス本国やヨーロッパでの反応はいかがですか?


ダニー:最高にいいね!いい作品ができたという手ごたえみたいなものはあったけど、ファースト・アルバム(「バックストリート・シンフォニー」/90年)以降、こんなに素晴らしい反応をもらったのは初めてかもしれない


ー制作に当たってアルバムの方向性は決めていましたか?それとも、できあがった曲をどんどん詰め込んでいったのですか?


ダニー:そういう質問は大歓迎だよ(笑)。でも、僕たちは計画性のあるバンドではない。オーガニック”にナチュラル"に、アルバムにできるだけの楽曲が溜まってくると、ただレコーディングする!それだけさ


ー本作もほとんどの曲をルーク・モーリーが書いていますが、あなたは歌詞や歌メロの部分でどの程度ソングライトに関わっていますか?


ダニー:そんなことに関わるワケがない!(笑)。今回は一曲だけクリス(・チャイルズ)が共作しているものがあるけど、それ以外はいつも通りに全曲ルークが書いている。ハリー(・ジェイムズ)もよく曲を作っているけど、ほとんどはルークが作って、すべてを決めているよ。彼はサンダーの音楽ディレクターなのさ


ーでは、ルークが書いてきた歌詞や歌メロを直すことは?


ダニー:自分では直さない。彼に言うんだし"気に入らないね”って(笑)。32年間もバンドを一緒にやってきたんだから、二人の間には言葉にしなくても相通じるやり方がある。ぼくは気に入らないものは歌わないし、彼はその理由がわかっている。それに、自分がウマく歌えない曲は、なぜかいい曲にならないんだ」


ー新作のアルバム・タイトルの由来は?


ダニー:タイトルを考えながら曲目リストを見ている時に、「ロバート・ジョンソンズ・トゥームストーン」という曲がアルバム全体をウマくまとめているような気がしてね。ルークは、ロバート・ジョンソンの生涯や伝説を採り上げたラジオ番組にインスピレーションを受けてこの曲を書いたんだけど、そこには、欲情、誘惑、愛、欲望といったすべての感情が表現されている


ー新作中、もっともヘヴィな「ラスト・マン・スタンディング」は、イラク戦争について言及したナンバーだそうですが、サンダーがそういった政治的なテーマを採り上げるのは珍しいことではないでしょうか?


ダニー:そうでもないよ。まぁ、政治を前面に持ってくるつもりはないけど、曲を作りたくなるほど心が打たれるような出来事や話題があれば、それを妨げる必要はないと思っている。セカンド(「ジャッジメント・デイ」/92年)収録の(ロウ・ライフ・イン・ハイ・プレイセス)ではホームレスや政治、欲望について歌ったし、サード(『ビハインド・クローズド・ドアーズ』/95年)の (イット・ハプンド・イン・ディス・タウン)は誘揚されて殺害された女の子のことを歌にした。この曲を歌う時、首の血管がよく切れたものさ...。だから、ライヴでは歌ったことがないんだ(笑)


ーやはりサンダーと言えば、「ダーティー・ドリーム」や「スタボーン・カインダ・ラヴ」のように、ちょっとエロいオトナの恋愛事情を歌ったものが定番ですが、これらの歌詞はあなたやルークの実体験に基づくのですか?


ダニー:もちろん実体験もあるだろうけど、そうしたエロい面はたぶんポルノ好きから出てるんだろう...。つまり、世の女性のことを考えて作ってるんだよ(笑)。でも、愛の曲、それにまつわる悲劇や苦しみもよく採り上げてるよ


BURRN2019年11月号のダニーのインタビュー。

ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE 2006年


「ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE」はスペインで作った。スペインに家を借りて、そこに機材を沢山持ち込んでレコーディングしたんだ。あれは素晴らしく楽しかったな。太陽の下でアルバムを作るのは最高だった。これまた素晴らしい曲の数々が出来上がったけど、アルバムを作り、リリースした裏では、それを自分達でマーケティングして売らないといけないという責任がどんどん膨らんでいった。


2015年ヒストリー本「Giving The Game Away」より。

ダニー:僕たちはSTCレーベルで創造的なことを始めたんだ。『They Think It’s All Over』や『They Think It’s All Acoustic』といったアルバムの再発をしたり、インターネットを通じて『Six Shooter EP』をリリースしたりね。2005年6月には、初のダウンロード・シングル『I’m A Lucky Man』を出したよ。その年は素晴らしいライブもたくさんやった。ヨーロッパをツアーして、ダービーシャーでのRock & Blues Custom Showではヘッドライナーを務めたり、Brands HatchでのHawk Kawasakiパーティーではアコースティックセットを披露したりね。それに初のコンサートDVDも数本リリースした。ルークはすぐに8枚目のアルバム制作に取りかかって、休む暇もなかったよ。この時点で、レーベル運営やマネジメント会社の経営についてもかなり理解が深まっていて、全てが順調に進んでいたんだ。


ルーク:2006年に入っても勢いは続いていた。1月にはUKツアーをやって、その後また日本、そしてヨーロッパを回って、さらに国内外のフェスでディープ・パープル、アリス・クーパー、ジャーニー、テッド・ニュージェント、ステータス・クォー、ドクター・フィールグッドと共演したんだ。次のアルバム『Robert Johnson’s Tombstone』はちょっと変わった作品だった。ソングライターとして、自分がヘマをすることを恐れてちゃダメなんだ。新しいことに挑戦しないとモチベーションが続かないし、ワクワク感もなくなっちゃうからね。もちろん、うまくいかないこともあるけど、何度もやるうちに上達していく。それはどんな職人技でも同じだよ。ある年齢に達したバンドが陥りがちなのは、アルバム作りに興味を失ってしまうことだ。ただのツアーの口実になってしまう。でも僕にとってはそうじゃない。アルバム制作も同じくらい楽しんでるんだ。
『Robert Johnson’s Tombstone』のきっかけは、アンディ・テイラーの息子(彼も才能あるミュージシャン)にデモ制作のアドバイスをしていた時だった。場所はエクセターで、帰り道に車でラジオ2の深夜のブルース番組を聞いてたんだ。DJがブルース・ミュージシャンのロバート・ジョンソンについて話していて、彼の死にまつわる毒入りの酒や売春婦の話が出てきた。それを聞いて「これはまさにロックンロールだ!」と思ったんだよ。家に帰ってすぐにロバート・ジョンソンについて調べ始めて、そこから作品ができていったんだ。


2015年ヒストリー本「Giving The Game Away」より、ルークによる曲紹介。

Robert Johnson’s Tombstone
この曲にはヴァースもブリッジもコーラスもないんだけど、僕らが作った中でも最もエキサイティングな作品の一つだと思う。伝説的なブルースマンロバート・ジョンソンをめぐる神話や逸話に着想を得た曲なんだ。彼がエリック・クラプトンに大きな影響を与えたことは知ってたけど、Radio 2でブルース特集を聴くまでは、その“伝説”の存在を知らなかった。
どうやって、なぜ若くして亡くなったのか――あるいはどこに埋葬されているのかさえ、誰にも分からない。でも酒と女が関係してるってのは、誰もが同意するところみたい。彼のギター技術があまりにもすごかったから、当時の仲間たちは「悪魔に魂を売ったんだ」って言ってたらしい。
どこまでが真実で、どこからが作り話かはともかく、語り継がれるにふさわしい、魅力的なストーリーだよ。

Dirty Dream
誰にでも、知っている相手に対して“そういう目”で見たことがないのに、不意にちょっとエッチな夢を見ちゃうことってあるよね?
たいていは「なかったこと」にして、誰にも言わずに人生を続けるものだけど、この曲の主人公はその“禁断の欲望”の相手にどっぷりハマってしまうんだ。

A Million Faces
壮大なスケールのThunder流バラード。この曲は、友人の関係が完全に壊れてしまったとき、なんとか慰めようとする人の視点で書かれてる。…まあ「世の中には他にも人はいるよ」ってことさ!

Don’t Wanna Talk About Love
これは、さっきの曲に出てきた“慰められてる側”の話かもね。前の恋愛で心に深い傷を負ってしまい、もう恋の話すらしたくない…という状態。

The Devil Made Me Do It
このアルバムのために最初に書いた曲。テーマは“誘惑”。この曲の主人公は誘惑に簡単に負けてしまうけど、そのすべての行動を「悪魔のせいだ!」って言い訳してるんだ。
…正直、僕も過去のやらかしをそれで済ませられたらよかったんだけどね!

Last Man Standing
これはクリスがサンダーで初めて共作した曲。彼が素晴らしいリフとタイトルを持ってきたことで、曲全体の構想が生まれた。
ブッシュ、ブレア、サダム・フセインイラク戦争…そういう政治的な議論はさておき、はっきりしてることが一つある。それは、多くの無実の人々が命を落としたという事実。しかも、その根拠だった“大量破壊兵器”の話も、蓋を開ければ怪しい情報ばかりだった。
僕は普段ロックに政治を持ち込むのはあまり好きじゃないけど、毎日ニュースで報じられていることに背を向けるわけにもいかない。この曲は、そのテーマにふさわしい壮大さを持っていると願ってるよ。

※ クリスによる補足:
実はこのリフ、僕が『華氏911Fahrenheit 9/11)』って映画を観た後に書いたものなんだ。でもルークはそんなこと知らなくて、歌詞もまだなかったし、彼がつけたタイトルも僕の別のデモからのものだった。不思議だよね。

My Darkest Hour
これまでのThunderとは全く違うタイプの曲。音的にはアコースティック・ギター、チェロ、そしてボーカルだけという非常にシンプルな構成。内容は過去の過ちに対する後悔と、それを変えられないという悲しみについて。…ハンカチ必須だよ。

Andy Warhol Said
最近の“セレブ・メディア”の爆発的な増加に気づかない人なんて、もう海の底か他の惑星に住んでる人くらいじゃない?
昔から“有名人”への憧れはあったけど、最近は行き過ぎてて、メディアが新しい“セレブ”を毎日作り出さないといけないような状態。それで、文字どおり誰でも“有名人”を名乗れるようになってしまった。
この曲は、「アンディ・ウォーホルが言った“誰でも15分間は有名になれる”という予言が、現実になったのかも…」っていう皮肉を込めてる。

What A Beautiful Day
僕は根っからのロマンチストだから、“一目惚れ”っていう可能性についてずっと考えてた。僕自身には起きたことはないんだけど、どこかに本当にあると信じたい。
この曲の主人公は、ある女性を街で見かけて、その瞬間に完全に心を奪われてしまう。どんなに天気が最悪でも、彼には“なんて美しい日なんだ”って感じられるんだ。

It’s All About You
相手の気持ちが冷めてきてるのが明らかに見えるのに、それを認めようとしない…そういう関係は本当に辛いよね。気まずさを避けるために関係を引き延ばすのは、むしろ自分勝手ってもんだ。「もう終わりだ」と認めて前に進んだほうが、みんなのためになる。

Stubborn Kinda Love
“好きだけど憎い”みたいな、愛憎入り混じる関係――誰でも一度は経験したことがあるんじゃない?
そういう関係って、ものすごく疲れるし手がかかるけど、その一方で情熱的で刺激的だったりもする。おそらく、その“激しさ”こそが関係を保たせてるんだろうね…でも、突然壊れてもおかしくない、危うさも常にある。


ちなみに、個人的に好きな曲「Don't Worry About Forever」は当時日本盤のボーナストラックにも入らず、「The Devil Made Me Do It」のダウンロードシングルのカップリングでしか収録されていなかったが、実は名曲である。若干ソフィティスケートされた次のアルバム「Bang!」に入っていてもおかしくないバラードである。

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