俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

コステロ自伝 ANNEX Part 36

最終章の第36章は「ダウン・アマング・ザ・ワイン・アンド・スピリッツ(Down Among the Wines and Spirits)」

1986年の「スピニング・ホイール・ソングブック・ツアー」の話から始まるが、ゲスト司会者として何人か来てもらったが、トム・ウェイツの印象が一番強かったという。
ローマでは、後に「ライフ・イズ・ビューティフル」の監督&主演となるロベルト・ベニーニが司会をしてくれたようだ。

※ この映画、何度見たことか・・・

その時にイタリアの観客もウンザリするほどよく見る「イタリアンポップのプリンセス」が出てきて、コステロはその昔、ブレイク前の彼女を見たことがある、と書いてあるけど、一体誰のことなんでしょう?調べたけど分からなかった。

「スピニング・ホイール・ソングブック・ツアー」のついてはB&Cのライナーでステージセットの写真を見たときに、なんて面白そうな企画なんだろうと思ったものだ。

2010年にその企画が復活したと聞いたときは心が踊った。そしてそれが日本上陸したときはさらに興奮した。2013年の東京で2回見ているけど、あの巨大なセットはどうやって日本に運んだんだろうと思ったのだ。

このツアーでは何を演奏するか分からないので通常のツアーの倍のレパートリーをリハーサルするそうだ。この頃バンドで150曲、ピアノとヴォーカルだけならできる曲、ギター弾き語りでできる曲を合わせるとかなりのレパートリーになる。

私の敬愛する山下達郎のバックバンドもかなりのレパートリーだという話を聞くが、最近ツアーギタリストが変わったのでまたやり直しなのかな?


このコンサートを実際に見るまでは全曲をルーレットで決めるのかと思っていたけどそうではない。
オープニングから数曲まではいつも同じ曲を演奏する。その後、ルーレットタイムがあり、そこで止まった曲を数曲演奏。またレギュラーセットリストを挟み、その次にルーレットタイムがある、これの繰り返し。

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これの2年前に「Secret, Profane & Sugar Cane」をシュガーケインズのラインナップで録音、「National Ransom」も似たようなラインナップで録音したがリリースされた日にシュガーケインズは解散した。「National Ransom」は良いレコードだが、同じことの繰り返しだったな、というのがコステロの自己評価。この人はいつも何か新しいことをしないと気がすまない人。

それで作ったのがザ・ルーツとの共演盤である「Wise Up Ghost」だが、この辺になるとかなり最近の話だと思っていたがすでに10年近く経っていたのだな・・・。
「Wise Up Ghost」ではデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュにも歌ってもらいたいと思ってもう少しで参加する寸前だったそうだが、グラハム・ナッシュだけが乗り気でデヴィッド・クロスビーはそうではなく流れた。
さすがにスティーヴン・スティルスにはオファーしないか・・・。

2014年の「The New Basement Tapes」の話もここで出てくるが、この本自体は2015年に出ているのでかなり直近にリリースされたアルバムだった。
このアルバムは数回聴いた後、聴いていない。自分はつくづくディラン関係のものに引っかかりが薄い。
ちなみに、このアルバムは1967年にボブ・ディランが書いた歌詞に複数人で曲を付けてアルバムとしてリリースするという企画だ。

この章は最終章なので、書きそびれていることを一気に書いているような印象がする。話題が今まで以上に拡散する。

レコード会社のこと。初期のスティッフ、Fビート、デーモンに触れて誰の許可のなく好きなことが出来た、という。(レイダーが抜けているが)
その後のワーナーでも好きなことをやらせてもらえた、という。
アイランド・デフ・ジャム、ドイツ・グラモフォン、ヴァーブ、ブルーノートからアルバムを出したこともある。
知名度的に申し分ないのに、デビューから8年インディーズでそこからメジャーに行って、しかもあらゆるレーベルからリリースしているのはちょっと不思議だ。こんなにいろんなレーベルから作品出している人はこの人の他にいるのだろうか。

次は、ロレッタ・リンとのエピソードや、スカーレット・ヨハンソンの話に飛ぶ。

ロスト・イン・トランスレーション」の日本のカラオケボックスでPLUを歌っていたシーンがこれだ。
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この映画は見ていないので知らなかった。
コステロはこのPLUはボディガードのサントラではなく、自分のバージョンに影響を受けているはずだ、という。

スカーレットつながりなのか「Scarlet Tide」の話へ雪崩れ込む。
アリソン・クラウスのバージョンは「コールド・マウンテン」のエンディング・テーマになる。
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アカデミー賞に出た時の映像がこれ。最後に不気味な音が入ってしまった、と書いてあるが、そこまででもない。
ギターはメンテナンスしてないのか、弦がネックに干渉してビビってる気はするが・・。
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こちらは「The Delivery Man」に収録されたコステロのバージョンだが、これも好きなテイク。
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エミルー・ハリスがツアーに帯同してくれた話に飛ぶが、このライブは作品化されていて何度も見た。

ルービン・ブラザーズとの話。
コステロの声が出なくなった時に、チャーリー・ルービンにウスターソースを勧められ恐る恐る飲んだら治ったようだ。

コステロとダイアナの間の双子の子供、デクスターとフランクの話。
そういえば、数年前、コステロとその息子、双子の弟フランクが「映像研には手を出すな!」を見ていたらハマったことが話題になった。
経緯はここに。
nme-jp.com

エルヴィス・コステロchelmicoとの出会いについてエッセイで次のように述べている。「ツアーに明け暮れていた生活から、一時的に空いた合間が授けてくれたことの一つは、ジュークボックスやレコードの山、映像エンターテインメントになったコミック本の世界を家族で囲み、楽しむ時間だった。双子の兄と母親が何か別のことに取りかかっていた頃、僕と息子のフランクはTVアニメ『映像研には手を出すな!』を全話観ることに成功した。絵コンテから最終カットまで、アニメーション制作のあらゆる側面が、3人の若い日本人女子高生の目を通して描かれる独創的な作品だ。各話は、ビートボックスとスライドギターに乗ったヴァースと韻を踏むフローがクールなchelmicoの“Easy Breezy”で幕を開ける」

このニュースは日本でも話題沸騰し、「英国のミュージシャンが日本のアニメを絶賛」と大騒ぎしてましたね。
まあ別に良いんですけど、普段日本礼賛系の話題を批判している音楽評論界隈までが喜んでいるのを見て「は?」という気持ちにはなりました。

amass.jp
miyearnzzlabo.com

まあ、でも面白い作品ではあります。

2006年に双子が産まれたが、その産まれる直前の話。
ジョージ・ジョーンズとのコンサートの前に、産まれてくる子供は男か女か聞かれ、まだ公表していなかったが、ジョージ・ジョーンズに会うのが最後かも、と思って、男です、と初めて家族以外に伝えると、ジョージ・ジョーンズがコンサートのMCで大々的にバラしてしまった話が描かれている。ちなみにこの時のジョージ・ジョーンズは75歳くらい。2013年没。

「April 5th」の話も書かれているが、これはこの頃のコステロで最も気に入っている曲だったはず。
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コステロ自身(たぶん)が選んだ100曲の中では1位。
ElvisCostello.com, April 30, 2013 - The Elvis Costello Wiki


この本の最後は一番最初の息子、マット・マクマナスの話で締められる。
1980年代初頭、マットの誕生日パーティでライトセーバー片手にスターウォーズごっこをしている子供たちの後ろでBGMをかけていたコステロ
最初はスターウォーズのテーマをかけたが、次にスーパーマンのテーマをかけてそれを交互に切り替え。
マットに他の曲はないかと言われてかけていたのがバーナード・ハーマンの「サイコ」。息子の友だちを迎えに来た親は、真っ暗闇でライトセーバーが光るなかこれが流れているのを聞いた、という。
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最後は三人の息子への想いを曲にしたMomofuku収録の「My Three Sons」の歌詞で締め。
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長かった。ひとまず完走できて良かった。