俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

サンダー Part17:ボウズ&モーリー 1st「Moving Swiftly Along」

 

 

さて、ルークソロの翌年、2002年のお話ですが、時を戻そう。

 

1995年。まだサンダーがEMIにいた頃のお話。

EMIのジャン・フランソワ・セシヨン(フランス人)が、ダニーの声が好きだったらしく、ソロ・アルバム制作の話を持ちかけてきた。ダニーは快諾したが、しかしダニーは曲を書けない。プロデューサー&作曲家はこちらが用意するみたいな、なんだか60年代アメリカのような制作体制で作ることになりました。

 

で、ゲイリー・グレインジャーと、

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そしてもうひとり、ニック・グラハムと

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一緒にデモテープなんかを作っていたんですが(すみません二人とも私はよく知りません)、仕事が遅くて進まず。そうこうしているうちに肝心の話を持ちかけてきたジャン・フランソワ・セシヨンもまたEMIをクビになり、ソロ・アルバムの契約だけが残るけど担当者が誰もおらず、宙ぶらりん状態のまま放置されていたようです。

 

それから4年経ったある日、東芝EMIの森氏からダニーに連絡があり、

「例のソロ・アルバムってどうなってんの?」

「それは完全に死んだ状態だよ」

「だったらお金出すから作らないかな?」

という会話かどうかはわかりませんが、そんな流れでダニーのソロ・アルバム制作が再始動されます。ということでこのアルバムの配給元も東芝EMIなわけです。

 

で、手を貸したのが盟友ルーク・モーリー。当初はダニーのソロ・アルバムの予定だったけど、ルークが手伝ってくれるならデュオにしようと。ということで出来たのが「ボウズ&モーリー」というユニット。

 

スクイーズも主要メンバーの二人がディフォード&ティルブルックというデュオを組みましたが、まあそういう感じですね。


なんだよ結局元サヤかよ、と思いがちなのですが、音楽性がサンダーとは全く違うものになっていて、サンダーの延長線上、というよりはルークのソロ路線の延長にある作品で、ルークのソロ第2段をダニーが歌った、と言っても良い作風になってますね。

 

ただ、ダニーの声って、暑苦しいんですよ、どうしたって。なのでルークソロはなんとなくAOR的な感じがしたんですが、このアルバムはAOR色は薄まって、R&B色がより強まった、という印象。

 

これもまた個人的にはかなり好きなアルバムですが、サンダーのファンからするとまたもや遠い音楽性で、当時のBurrnを見てても、どの曲がサンダーっぽいか、とかそういうノリで書かれてたりします。ただ、Burrnにしては、こんな場違いな音楽性にも関わらずクロスレビューの上、80点台後半というなかなか意外な評価でした。

 

 ちなみに過去にこんなのを書いてます。

shintaness.hatenablog.com

 

 

これが2002年の5月リリース。

 

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引き続きベースはクリス・チャイルズでしたが、ドラマーはハリー・ジェイムズではなく、ジョン・トンクスという人。

Musician-Drummer

 

2000年リリースのデュラン・デュランのアルバムでドラムを叩いている(この頃、デュラン・デュランはドラマー不在)ので、アンディ・テイラー繋がりなのかなと。

 ハリーだとサンダーっぽくなり過ぎるんだそうな。ちなみにハリーはBig Thanksとしてクレジットだけはされてます。

 

あと、パワー・ステーションのカバー「Powertrippin'」でギターを弾いているのは後にルークとユニットを組むことになるピーター・ショルダーで、この頃若干17歳だったそうな。

 

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個人的には、サンダーの路線とは全く異なる「Something About My Baby」がベストトラックかなと。トニー・マイヤーズが弾いたシタールも入っていて、アレンジも含めて完全なソウル・バラード。これ本当に良いですよ。テディ・ペンダーグラスとかマーヴィン・ゲイを意識して作ったそうな(ルーク談:2002年のインタビューより)。

最後に作った曲だそうなので、この時点での最新曲。この後にサンダーの再結成が控えてるので、この後に「Somebody Get Me A Spin Doctor」やら「Loser」やらのハードロック・ソングを作ることになりますが、なんて振り幅なのかと驚かされます。

 

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ちなみにこの曲のコーラスにはリンダ・ルイスが参加してます。

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あと最後の曲も好きですね。「I'd Take The Stars Out Of The Sky」。こっちはおそらくアイズレー・ブラザーズのバラードを意識して作ったんじゃないかと。アウトロのギターソロは「Summer Breeze」みたいだし。

 

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 あとはファンクな冒頭2曲も良いですね。サンダーでもファンクはやってましたが、このアルバムのファンクはアレンジがサンダーとは違う。パーカッションの入れ方とか。ホーンもふんだんに入ってます。

 

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あと、このアルバムのきっかけになった曲が「Change」で、何やらソングライター研修会みたいな怪しげなセミナーで、EUROPEのジョーイ・テンペストらと一緒に作った曲だそうな。そのせいか、ルークの手癖が希薄ですね。いやーそれにしてもめちゃくちゃ歌上手い。

 

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ただ、これまた名盤なんですけど、R&Bのファンには全然リーチしておらず、本当にもったいないと思います。サンダーの屋号は外れても、やっぱり「元サンダー」なのでハードロックファンにしか届かなかった。ハードロックもソウルも好きな人なんて少数派なんだな、やっぱり。

 

そして2002年7月には来日公演。


サポートメンバーは、ベースがクリス・チャイルズ。ドラムがhooverphonicにいたマリオ・グーセンス。ギターに幼馴染のトニー・マイヤーズ。キーボードがサンダーファミリーのティム・オリバ。コーラスがタラ・マクドナルド。妹?のアナ・マクドナルドは不参加。

 

この時の様子がYoutubeに上がってます。どなたかわかりませんが、感謝感激。

 

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「Change」の演奏動画もUPされてました。

 

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さて、来日公演を行い、その後のイギリスでのショーも控えていたので、てっきりボウズ&モーリーとして活動していくのかと思ってたんですが、急転直下の大ニュースが報じられます。

 

(上の動画で伊藤政則さんがネタバレさせてますが・・・) 

 

続く。