俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

サンダー Part3:テラプレイン2nd「Moving Target」

サンダーのヒストリーは、何故か次々と障害が現れて、でもそれを何とか乗り越えてみたいなストーリーがあって、そういうのが判官贔屓な日本人の琴線に触れる感じがあって、それが狭い界隈ではあったけど日本で割と人気があったのかなと思わなくもない。

 

さて、その最初にして最大の障害がテラプレインのセカンドアルバム「Moving Target」です。これが問題作になったのは、まあなるべくしてなったのでは?と思わずにはいられない。

 

ムービング・ターゲット

ムービング・ターゲット

 

 

エピック側はテラプレインを「ハードな曲も演奏するポップなバンド」だと思っていて、テラプレイン側は「ポップな曲も演るロックバンド」と思っていました。軸足を何処に置くか、という問題ですが、そもそもその頃のエピックは前者のようなバンドがほとんどでした。

 

エピックにその頃所属していたのはワム!なんですが、ひょっとすると、テラプレインをワム!の代わりにしたかったんじゃないだろうかという疑念が湧くわけです。1985年にテラプレインの1stアルバムが出ますが、翌年ワム!アパルトヘイトを理由に解散してしまうわけです。それで、次なるワム!を作らねば、とエピックがテラプレインの2ndがポップ路線になるように誘導したのではないか、と思うわけです。なぜなら、1984年頃のテラプレインのCDジャケットは、こんな感じでバンドを押し出しています。(これはダサい・・・なんとなく聖闘士星矢を思い出すのは自分だけ?)

 

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これが、ルディ・リヴィエラが入った途端に、こんなジャケットになるんです。

 

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ダニーとルディのみ。裏ジャケに残りの3人はいるんですが、これだと2人ユニットに見えてしまう。ホール&オーツとか、ワム!とか。うーん、やはり第2のワム!を作りたかったんじゃないか?と思わずにはいられないわけで。

 

こんな感じで。(Wham! / Freedom)

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エピックは、おそらくダニーをジョージ・マイケルにしたかったんじゃないかな。見た目も良いし。 

 

まあ、ワム云々は証拠があるわけじゃないので、僕の予想ではありますが、エピックは結局、次のアルバム向けにカルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ」の作曲者のフィル・ピケットという人をプロデューサーとして召喚するわけです。

 

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で、その人とルークが共作したりと、今だとなかなか不思議なコラボレーションですね。ただ、ルーク自身も失敗作だったとはいえ、フィルからは学んだことも多いとのこと。

 

リリース履歴としては、1987年1月にシングル「If That's What It Takes」のリリース。

 

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半年後の1987年7月にシングル「Good Thing Going」、

 

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翌月1987年8月にシングルの「Moving Target」のリリースがあり、

 

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1987年9月に2ndアルバム「Moving Target」がリリース。(3ヶ月連続のリリース)

 

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間が空いて、1988年の2月にシングル「If That's What It Takes」のリイシューがあり、これがテラプレインとしての最後の公式リリースでした。

 

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この一連の作品群、売れ線を狙って作ったはずが、これがかなりの不評で、人気は急降下。テラプレインは坂道を転げ落ちます。1stは国内盤もリリースされたのに、2ndアルバムは見送られたようです。

 

この頃には長かった髪を全員短くされて、服装もスタイリッシュにされました。まあこれに関してはこっちの方が良いと思うけど。ちなみに2020年現在、サンダーのメンバーはルーク以外は短髪になってます。ハリーはサンダー加入時からずっとスキンヘッド。ダニーは1996年ごろにショートへ。クリスは加入後すぐにショートへ。ベンも近年ショートへ。

 

政治的に加入させられた疑惑のある黒人ギタリストのルディも、本当はテラプレインよりもさらにメタル寄りのギタリストなので、この路線大変だったんじゃないかなぁ。パッと見、この路線にピッタリのギタリストに見えてしまうんだけど、実はそうでもないという。ちなみに、真偽は定かじゃないが、ルディはこのアルバムでは弾いていないという噂も。だとすれば、ルディがアルバムで弾いたのは1stの「Talking To Myself」だけということになりますが。しかもシングルバージョンの「Talking To Myself」は、エンディングのルディのギターソロはバッサリカットされているわけで、音楽的な貢献はあまりなく、やっぱり単にエピックのポリコレ対策のために呼ばれた感がありあり。

 

不思議なのは、だいたいこういうポップなアルバムは、ジョージ・マイケルボーイ・ジョージ、デヴィッド・シルビアン、サイモン・ル・ボンなどなど、みんな声が軽やかなんですが、ダニエル・ボウズは暑苦しい。ブルージーな声なんです。このマッシブな声と、軽いポップスが合うのかと言われたら、まあそんなに合わない。まあ、上手いは上手いですけどね。この人の場合。気に入らない曲だとか言いながら上手く歌えてしまうのはさすがという他ありません。

あと、サウンドはかなり時代を感じますが。いかにも80'sなゲートリバーブ全開のサウンド。まあ、この頃逆にゲートリバーブ使ってなかったのはほとんどいないわけで(山下達郎くらい?)、致し方なしではあります。

まあ、ただアレンジはアレですが、曲自体はそんなに悪くない。エルヴィス・コステロの「Goodbye Cruel World」にも通じる話ですが、ゴテゴテと時代感丸出しの装飾のせいで台無しになっちゃったけど、曲自体は悪くないという。同じ感じです。

 

曲単位だと、ルーク単独で作った「If That's What It Takes」なんて全然悪くない。ルークもこれが一番良いという自己評価。なんかこれはアレンジ変えたら普通にサンダーの曲でありそうな。4thアルバムあたりに。

 

↓このバージョンはいじくり回した 19th Nervous Breakdown Mix で、この時代ならではの、オリジナルよりも遥かにしょうもないアレンジですが。

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メディアからボロクソに言われた「Good Thing Going」だってB.J.トーマスを80s風にした感じのなかなか良い曲。山下達郎の「永遠のフルムーン」にたメロディが出てくるし。アメリカの日曜昼ドラみたいな雰囲気。ちなみに80年代ならではですが、これのエクステンドバージョンも作られてて、ダニーは「一体この曲の何をエクステンドする必要があんねん」とセルフツッコミしてました。

 

Good Thing Going

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「Promised Land」だって、ボウズ&モーリーでやってもおかしくないくらいの鈴木雅之の雰囲気。

 

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「Moving Target」は、これは80'sのクイーンをトレヴァー・ホーンがアレンジしたみたいな曲。

 

Moving Target

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「Hostage to Fortune」はホワイトスネイクの「Here I Go Again」のリメイク版にちょっと似てる。時期的に同じです。これはルークは作曲に絡んでません。80'sサウンドと一括りにされがちだけど、80'sって割と年単位でサウンド変わりますね。これは'86〜'87特有のサウンド

 

ま、「Heartburn」みたいにガチでしょーもない駄曲もありますが。


ただ、今自分はこのアルバムの再評価みたいなことを書いてますけど、1997年にCD化されて初めて聴いた時はこんな感想ではなかったです。

 

「甘ったるいわー、なにこれ?本人たちの言う通りイマイチなアルバムだなぁ」なんてことを思ってました。今はAORも普通に聴けるようになって、ようやくこれが受け入れられるようになった、ということです。

 

ただ、エピックが悪者にされがちなこのエピソードですが、そもそも既に大人のテラプレイン側も合意して作ったアルバムですし、ルーク本人も自分で決めて自分で作ったから自分の責任、と言ってます。ルークのこういうところ好きです。実際のところ、エピック側もテラプレインに対しては決して消極的だったわけではなく、1stでも何枚もシングル切ってますし、2ndも3枚シングル切ってるわけで、頑張って売ろうとしていたんじゃないかなと。ただ、バンドへの理解が足りないとか、安直で強引な変更が何をもたらすかがわかってなかった、ということなんでしょう。

これ以降、ルークとダニーはレコード会社の言うことをあまり聞かなくなりますが、これには当然功罪あるわけで、サンダーデビュー直後は、この時の反省が生かされる、ということにもなるわけですね。

 

 1987年に再度レディングフェスティバルに出演しますが、観客の反応はイマイチ。ダイレクトに客のリアクションを聴いたテラプレインは落ち込んだことでしょう。

 

この頃彼らは27〜28歳くらいで、そこそこいい年齢です。1987年頃はちょうどボン・ジョヴィホワイトスネイクエアロスミスが復活して大ヒットしたりとか、ガンズ・アンド・ローゼズのデビューとか、モトリー・クルー等のLAメタル勢がブレイク。そんな彼らを横目に、坂道を転がり落ちるテラプレイン。一体どうするべきか。

88年にルークとダニーは市場調査のためにアメリカに旅立ちます。そこで彼らはある決断をすることになるんですね。

 

次回に続く。

 

 

We Survive

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Singles Collection

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