俺の記憶ストレージ Part 1&2

寂しさは琥珀となり密やかに輝き出す

なんとなくゲートリバーブでクリスタル

なんか最近、空気が重い。自分の周りはそうじゃないけど、外界、ネットとかテレビとか見てると殺伐としてる。いつも誰かが誰かのせいにして嫌な空気。陰湿な人が多いのかね。

 

さて、そんな空気感なので、ゲートリバーブで吹き飛ばそうかしら。

 

半年くらい前のラジオになるんですが、たまたま聴いていたらコステロのお話が出てきました。

 

natalie.mu

 

萩原健太さん(痩せすぎ)の番組に佐野元春さんがゲストで来た時の会話で、80年代の録音技術、機器についての話。佐野元春大滝詠一の「君は天然色」のレコーディングを見に行って、自分もスペクターサウンドをやりたいといって作ったのが「Someday」で、その後録音技術についてのお話。

 

https://www.youtube.com/watch?v=4OPEo7MtRzc

 

萩原:80年代ってのは幸せなことだったのか不幸なことだったのか微妙だと思うんです。僕はリスナーとしてはこれは不幸なことだったと思うんですけど、デジタル技術が中途半端に入ってきた時期ってあるじゃないですか。特に80年代前半。で、誰も結局それを使いこなせないうちに、でもスタジオは全部そっちの仕様になってしまって、それのすごく中途半端な時期にサウンド的に完成度の低いものがついできてしまったことってありますよね。

佐野:あります。

萩原:でも90年代になるとデジタルがすごくアナログな手触りを実現できるようになりましたよね。

佐野:自分もレコーディングアーティストとして80年代90年代現在までずっと現場でやってますからね、いま健太さんのおっしゃったことはよく分かって、で、このデジタルを使ったいろんなイクイップメントが出た。60年代、70年代のレコーディングでは得られなかったような、大げさなサウンドが実現できた。だから僕たちはおもちゃを与えられたようにもう・・(笑)

萩原:あれば使いたいですよね。

佐野:でもこれは面白いことに、僕はのちにエルヴィス・コステロ氏とあってお話してなるほどなと思ったんですけど、90年代に入ってエルヴィス・コステロ氏が80年代の自分の作品をまとめたベスト盤を出すという時に『Moto、一番俺が恥ずかしく思うのは80年代でスネアに大げさなリバーブをいれてしまったことだ』(笑)

萩原:ゲートリバーブかけちゃったみたいな。

佐野:で、『今聞くとやっぱあれは不自然だからベスト盤を出すときには密かにリミックスしてそのへんのエコーは全部下げてるんだ』って話をしてましたね。

 

このコステロとの会話はいつなんでしょう?「ナポレオンフィッシュ」の頃はまだ80年代なので、そんな話をしないと思うし、89年リリースのSpikeは曲によってはゲートリバーブが残ってるのでこの頃じゃないはず。ミュージック・フェアで共演したのが2000年。この時ですかね。 この時期であれば「The Very Best of Elvis Costello」あたりですかね。それか1994年の「The Very Best Of Elvis Costello & The Attractions」。

 

ゲートリバーブが有名になったのはピーター・ガブリエルの1980年の「Intruder」だそうです。自分が聴いてきた音楽でいうと、XTCの「Black Sea」(1980)とか「English Settlement」(1982)とか。でもその前の「Drums And Wires」(1979)からその兆候はあるような気がします。曲は好きなんですけど、やっぱり音が良いともっと良い曲に聴こえるはずなのになぁと思ってしまう。

 

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パワーステーションの同名アルバム(1985)なんかが、かなりゲートリバーブ色強め。「Some Like It Hot」は、すごいですね。ゲートリバーブってどんなの?って聞かれたらこれを聴かせればOKみたいな。

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パワーステーションは僕は当然後追いで聴いていたんですが、そういえば新卒の頃、16歳年上の音楽好きの上司が、「パワステはかっこよかったなぁ、すごい先進的で」と言っていて「へぇ(でも音がなぁ・・・)」なんてやり取りを思い出しました。

 

あとYesの「Owner Of A Lonerly Heart」(1983) ですね。これはゲートリバーブにさらにオーケストラヒットという80'sアイテム満載。さらに当時最先端と思われる空間系エフェクターやら、ハーモナイザーなんかもふんだんに使われていて、ここまで振り切られると清々しいというか。あまり80'sアレンジが好きじゃない自分ですが、これはイケます。これはゲートリバーブはパートによって使い分けてるんですよね。イントロとかギターソロの前に入るパート、ああいうのはなんていうんだろうか・・本チャンの演奏の前に録音済みテープを流すみたいなアレンジ。サンプリングに近いのかもしれないけど、その部分はエコーがふんだんに使われているんだけど、歌が入ると少なめでリズム隊はタイトな音像。ギターのリバーブが多めで、オーケストラヒットが入ってさらにドラムまでエコー多いと音像がグチャグチャになるので、若干タイト気味にしたのかな。非常に完成度の高いアレンジだと思います。

 

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ゲートリバーブが出てきたのは1980年なのですが、全盛になったのは1983〜1985年あたりだと思います。コステロの場合、ベストに入っている曲でリバーブ多めなのはおそらく「Pills And Soap」(1983)と、「The Only Flame In Town」「I Wanna Be Loved」(1984) あたりですかね。「Every I Write The Book」は1983年の曲ですが、ゲートリバーブはない。

 

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このあたりのサウンドはたしかに自分も好きではない。1983年の「Punch The Clock」はまだマシで、1984年の「Goodbye Cruel World」は本当に当時最先端のサウンドで、今だと聴くに耐えない・・・。

 

コステロは1989年の「Spike」まで、ゲートリバーブ使っていたので、クライブ・ランガーのせいだとは思いませんが。

 

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「Spike」も全面完全リミックスしてくれないかなぁ。どうにもこうにもこのサウンドは・・・。

 

日本だと、吉川晃司なんかすごい使ってた印象。

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田島貴男さんのツイート。

 

デビュー時ということは、1987年くらいですかね?みんな当たり前のように使ってたわけですね。

 

サザンオールスターズを聴いてると、ゲートリバーブの歴史がわかるかもしれない。桑田さんも最近ラジオかなんかで、あの頃はゲートリバーブ多めでちょっと恥ずかしいなぁ、みたいなことを語っているのを聞いたことがあります。

 

シングルだとミス・ブランニュー・デイ1984)が初めてだけど、その前年のアルバム「綺麗」(1983) はすでにゲートリバーブ多めのサウンド。「マチルダBaby」とか。「人気者で行こう」(1984)〜「Tarako」(1984)〜「メロディ」(1984)〜「KAMAKURA」(1985) あたりはゲートリバーブ全開。特に「Computer Chirdren」なんかはゲートリバーブのお手本みたいなサウンド。この曲はまあデジタルサウンドをあえてやった、みたいな感じなのでそんなに違和感ないですが、他の曲もゲートリバーブばかりのサウンド。2枚組なのでお腹いっぱい。このアルバム好きなんだけど、ゲートリバーブじゃなかったらもっと好きだったかも。萩原健太さんの言うようにやっぱりリスナーとしては不幸だったのかな?ミックスやり直して欲しいくらい。

この後桑田さんはソロ活動に移るんですが、KUWATA BANDの頃(1986)になると、ゲートリバーブがそれまでよりは少し減った感があります。「BAN BAN BAN」なんかは、全体的にリバーブ/エコーが多めですが、ゲートリバーブ感はないですね。どっちかというとスペクターサウンドみたいな。その後のソロ(1988)、「みんなのうた」(1988)もエコーは多めですが、ステレオタイプな80'sサウンドじゃなくて、生音重視にシフトしていった感。「フリフリ'65」(1989)とか「希望の轍」「真夏の果実」(1990)になると、もう80'sサウンドとは決別して、やっぱ生音だよね?みたいな感じ。やっぱり自分はこの辺から音楽を聴き出したので、ゲートリバーブが流行った頃は当時からするとたかだか4〜5年前なのに、「すごい古い音だな」って思ってました。それくらい盛り上がって、一気に消えていった。「祭りのあと」のように。

 

一方、桑田さんの友人の山下達郎氏はゲートリバーブとは無縁のようです。これは2018年のラジオ。小林克也さんと山下達郎さんの会話から。

 

https://www.youtube.com/watch?v=qEp5Yo00Wfs

 

小林:70年代からボトムばっかりじゃなくて、今度はスネアをみんな加工するようになったりとか、そういう歴史がありますよね。

山下:ありますね。

小林:それは山下達郎としては追っかけましたか?それとも自分の中にこれは俺の領分だからという感じで取り入れたのか。

山下:トレンドなものほど陳腐化が早いので。だから僕はゲートリバーブ一回も使ってこなかった。ドラムループを一回も使わなかった。

小林:ゲートを使ってない?

山下:使ってない、歴史上。

小林:ゲートを説明しますと、1980年代のフィル・コリンズたちの「ギャッ(スネアの口真似)」っていう。

山下:デュラン・デュランとか。

小林:ああいった音は絶対使わなかった。

山下:使いませんでした。

 ゲートリバーブ全盛期にリリースされの時期といえば「Melodies」(1983)、「Big Wave」(1984)、「Pocket Music」(1986)あたりですが、見事にゲートリバーブがない。

 

ただ、どういうわけなのかゲートリバーブのブームが過ぎ去った1991年に「Queen of Hype Blues」というファンクな曲をリリースしてまして、これはかなり80'sなサウンド。ゲートリバーブじゃないんだけど、エフェクト的には80'sな感じ。同じアルバムの別の曲はこういうサウンドじゃないので、狙ってやった感じですね。

 

というわけで、ゲートリバーブについてつらつらと書いてみたけど、草野マサムネさんとかラジオで漫遊してくれないかな?