2003年発売の「North」。
この発売前後に、コステロはダイアナ・クラールと結婚しますが(この結婚は当時かなりの衝撃でした)、ということはケイト・オリオーダンと離婚したという訳です。その離婚からダイアナとの再婚までが、曲順に語られるという作品。つまり、序盤は暗めの曲が多く、中盤が明るめ、後半が穏やか、というコステロの心境が時間的推移と共に曲調に現れるというコンセプト的なアルバムとも言えます。歌詞も全編ラブソングで、サウンドよりも歌詞の方で本当にこれコステロなのか?という感じです。
発売時はコステロがジャズに挑戦したという触れ込みでしたが、みんなが思い描くようなハード・バップみたいなジャズではなくて、ジャズ・ボーカルものと言ったら良いのかな?ジャズ・アレンジではないけど、演奏がジャズ的(特にドラムとベース)という曲もあり、このアルバムはジャズです、と正面切って言うほどジャズでも無い気がする。ジャズ・テイストの小品を集めた作品集です、ならしっくりくる。
コステロのジャズ・テイストの曲はこれまでにたくさんありましたが、最初期に披露されたのがおそらくジャズ・スタンダードの「My Funny Valentine」だったと思いますが、このテイストですね。
個人的にはマイルスのバージョンが好きですが。(イントロのレッド・ガーランドのピアノが美しい)
「North」の曲はおそらく歌詞先で作られているんじゃないかと推察するんですが、どうなんでしょうかね。全体的に曲の上に詞が乗っているというよりは、詞に合わせて曲がついてくるみたいな印象があります。
これより前年に「Smile」がヒットしましたが、「Smile」が良いなーと思って「When I Was Cruel」を買った人は、全然テイストが違うじゃん、となったと思うんですが、どちらかというと「Smile」のテイストに近いのはこちらの方。
ただ、「She」の様に起承転結がはっきりしている曲は少ないし、「Smile」の様にポップな曲も多くない。唯一、このアルバムのリーダートラックになったオリジナル曲「Still」は例外で(なぜかこれらの曲のスペルが「S」から始まるのが不思議)、これは「She」「Smile」に匹敵する曲だと思うのですが知名度的には圧倒的に下です。シングルカットもされてないのでしょうがないのですが。
・You Left Me In The Dark
序盤のダークサイド。
・Still
中盤の明るいサイド。名曲。
テレビでも披露しています。
Elvis Costello Still- Letterman
・I'm In The Mood Again
ラストの穏やかサイド。
こういう作品を歌う時のコステロの歌を聴くとやっぱり改めて上手いなと思います。
本編は最後まで同じテイストで展開していくので統一感があるんですが、ボーナス・トラックで一変します。「Impatience」はラテン、「Too Blue」はストレートなジャズ、「North」は当時、シリアルコードを入れた人がダウンロードできる曲で(今は多分無理なんだろうな)、これは本編にテイストが似た曲で結構お気に入り。なんで本編から漏れたんだろう。タイトルトラックなのに。
・Impatience
ラテン。いきなり本編とテイストが全然違う。演奏はなんとインポスターズにマーク・リボーを加えた編成。ラウドな「When I Was Cruel」には入れられないし、アメリカ南部に舵を切った「The Delivery Man」ともテイストが違うし、ここのボーナス・トラックしかいれる場所がないよね、と思います。
次回は「The Delivery Man」。