俺の記憶ストレージ Part 1&2

寂しさは琥珀となり密やかに輝き出す

笑いのメカニズム

笑いのメカニズムって考えたことありますかね?

自分は大学生活の最後の最後で、なんとなーく「認知心理学」を履修してみたのですが、その授業を聞いていたら「ああ、なるほど」と思ったことがありまして、人間の顔を見てそれが誰か認知する時に、顔のパーツ全部を一つ一つ見るわけじゃなくて、全体をぼんやり見て、脳内にインプット済みのパターンとおおよそ合っているかどうか照合するんですね。

顔の認知だけじゃなくて、誰かが何かを喋ろうとした時に、話しかけられた方は話そうとしている人の表情を見て、これからどんな話をするのか予測するんですね。話し始めたあとも、文章の流れからどういう話かを予測しながら聞くわけです。

つまり、これから起こるであろうことを、いろんな情報を総合的に判断して予測できるのが人間という生き物で、つまりその予測が裏切られた時に人間が笑うんだな、と授業を聞いていて思ったんですね。松本人志が「笑いとは裏切り」って言うのはそういうことなんだなーと。

例えばサンドウィッチマンの漫才だと、ハンバーガーショップの漫才がありますが、あれはハンバーガーショップでは通常ありえない出来事が無数に起こるわけですね。例えば、「メニューは?」と聞くと店員が笑いながら「お客さん、踏んでますよ」と言う。メニューが床に置いてあるということは、通常のハンバーガーショップでは床にメニューがあることなんてないんです。ハンバーガーショップに行ったことがある人であれば、「メニューはカウンターにあるもの」と思い込んでいる。そこのギャップに笑ってしまうんですね。

まあ、「あるあるネタ」なんかは「裏切り」とはまた別のメカニズムのような気がしますが、基本的には「裏切り」で現代の漫才/コントは成り立っているはず。

ナイツの言い間違いネタなんかは、フォーマットができてしまっているので、裏切ってないと思う人もいるかもしれないけど、あれはフォーマットがあるだけで、そこにまぶしている小ネタは裏切りで成り立ってますね。

僕は「ミクロ裏切りパターン」と名付けました。

で、ナイツにはたまにそのフォーマットに沿わないネタもやったりします。例えば歌ネタ。吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」に突っ込んでいく、というネタがあるんですが、あれは、フォーマットが確立したナイツだからこそ、そのフォーマットに沿わないネタをやる、という「大きな裏切り」。僕は「マクロ裏切りパターン」と名付けます。

さらに、今更「俺ら東京さ行ぐだ」に、やけにクソ真面目に突っ込むという「裏切り」、しかも佐賀出身が標準語で突っ込むという「裏切り」もあるし、そのネタで最後までやるんだ?という「裏切り」。(この吉幾三ネタ、自分は大好きなんだけど、あまり理解してもらえない)


ちなみに、正月のネタ番組でそこまで笑えないのは、年末の賞レースで初めて見せた新ネタと同じネタをやるってところにあるのだと思います。漫才の中に「裏切り」があったとしても、一度見たネタであれば、「次はこう来るな」と脳にインプットされてしまっているので、意外性が無くなっているからなんですね。知っているネタを見て、それを答え合わせしたところで笑うわけじゃない。

音楽聴くのとお笑いを見るのは全然違う。音楽は、初めて聴いた時のインパクトはあるにせよ、基本的に何度でも聴ける。気持ちいい旋律や演奏は何度聴いても良いんだけど、お笑いは基本、初見勝負なわけですね。

さて、THE MANZAIを見ていたんですが、ある話題性のある芸人さんが出ていまして(アンタッチャブルのことじゃないですよ)、これがどうにもこうにも意外性という観点で見ると、まったく遠い所にあって、「たぶん今回もこういうこと言うんだろうな」と予想通りの展開になっていて、クスリともしなかった。

ネット上では賛否両論で、「よくぞ言ってくれた」とか「自分の思いを言ってくれた」みたいな感じで絶賛する人もいたんだけど、それってお笑いなのかな?と。基本的には政治的アジテーションの中で、3つくらいのお笑いポイントを入れていったみたいなネタなんですけど、個人的にその政治的主張はどちらかというと同意するものであったんですが、だから何なんですか?という感じで、全く面白くなかった。

優先度がおかしいんですよね。政治的主張の方が強くなっている。コメンテーターと何が違うのかなと。ツッコミ役の人も「そこツッコめよ」と思いながらみてしまったが、ボケ役の人が許さないんだろうなと。   

「自分の言いたいことを言ってくれた」は裏切り要素が全くない。自分は「自分が考えつかないこと」を言ってほしいと思うし、前回と同じパターンなのであれば、そこに載せるお笑いポイントはインパクトがないと面白くない。あれは一体どこで笑えば良かったんですかね?

 

お笑いポイントがないお笑いは、もはやお笑いではないし、ただ裏切っていけば面白いわけじゃない。面白い裏切りを僕は聞きたいのです。

 

あと、「言ってやったぜ」感は、あの会場にいたビートたけしに向かって「おい刀出せ」と言ってから出してもらいたいものです。

 

※ 以前書いたエントリ

shintaness.hatenablog.com