「Last Concert In Japan」・・・このタイトルを聞くと今でも複雑な心境になる。
ラスト・コンサート・イン・ジャパン~紫の燃焼(紙ジャケット仕様)
- アーティスト: ディープ・パープル
- 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
- 発売日: 1998/05/15
- メディア: CD
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ディープ・パープルの「Live In Japan」でパープルのライブの凄さを知り、「Made In Europe」「Scandinavian Nights」をなけなしの小遣いで購入したのは高校3年生の頃。
「Last Concert In Japan」は第4期パープルで、ギタリストがトミー・ボーリン。ここまでは分かっていた。僕はリッチー以外のメンバーも凄いと思っていたので、当然このアルバムも凄いんだろうな、と思って、なけなしの1,900円を出して購入したのだ。
家に帰ってラジカセのトレイに入れて、再生。
「むむむ・・・なんじゃこりゃ」
ギターの音がなんか小さい上に、さらに空間系のエフェクトが過剰に掛かっていて輪郭が分かりづらい、何弾いてるか分からない、時にノイズみたいなサウンド。そして、ソロが・・・音こそ外してないけど、同じポジションで同じフレーズの繰り返しばかり。また、妙な休符が入ったり・・・酷い箇所だと単音をひたすら弾くのみのギタープレイ。イアン・ペイスとグレン・ヒューズは張り切っているけど、それはトミー・ボーリンの不調を穴埋めするように張り切っているのか、それが逆に物悲しい。
後で知ったけど、この時のライブは薬物のやり過ぎでヘロヘロだったとのこと。
こりゃ解散するよな・・・と思わせるライブ盤だった。僕のなけなしの小遣い、どうしょうもないライブ盤に消えて心底ガッカリした。いや、本当に。
ライナーノーツは伊藤政則さんだがかなり苦しい文章だった。ライナーノーツとして纏めるのに苦労しただろうな。古い曲、4期の曲、ソロから、と選曲が多彩で素晴らしい、みたいな。選曲しか褒めるところが無かったのか、と。
トミー・ボーリン追悼盤、というクレジットがあるけど、これが追悼盤になるのは悲しい。
・・・が、ですよ。
時期的にこの後にライブ録音された「On The Wings of a Russian Foxbat」というロングビーチでのライブが凄かったんだな、これが。
On the Wings of a Russian Foxbat
- アーティスト: Deep Purple
- 出版社/メーカー: Connoisseur Coll.
- 発売日: 1998/06/30
- メディア: CD
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トミー・ボーリン=ライブでヘロヘロ、は日本公演だけの話でした、と。「This Time Around - Live In Japan '75」という「Last Concert In Japan」でオミットされた曲も収録された完全盤が2000年以降にリリースされていて、「これを聴いたらそんなに悪くない、「Last Concert In Japan」はミックスが悪いだけ」と言ってる人がいたけど、いやいやいや、ミックスの問題じゃないんですよ、トミーは全然弾けてないの。素人レベル。それに比べてロングビーチの上手さといったらもの凄い。
同じフレーズ繰り返すにしても、トミー・ボーリンお得意のベンドしながらプリングしたり、トリルしたりのジェフ・ベックやCharを彷彿とさせるプレイ。ソロも流れるようにプレイするし、とにかく上手い。上手いんだよボーリンは!!!日本公演なんか目じゃないくらい!
あとですね、「Smoke On The Water」終わりで「Georgia On My Mind」をグレン・ヒューズが歌うんですがこれがまた物凄い高音で。まあ、トミー・ボーリン関係ないんですがね。
この音源を初めて聴いたのが酒井康がやってたHMシンジケートというラジオで、当時自分はパープルコレクターだったので遅かれ早かれこの盤は買ってたんだろうけど、それでもこの音源がオンエアされて、凄さに鳥肌が立ってすぐ買いに行ったんですね。今、酒井康はバッシングされがちだけどやっぱりあの頃、パープルのエバンジェリストだったことは間違いない事実。
残念ながらこの半年後くらいにパープルは解散。トミー・ボーリンは1976年12月に25歳で還らぬ人となります。
遺作は「Private Eyes」というタイトルですがジャケットになぜか漢字で「富墓林」と書いてあるのが印象的です。そして「墓」という文字が含まれていることも。