俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

サイクスさん、そろそろニューアルバムおねがいします

前回のジューダス・プリーストがレゲエの曲をやってたって話でふと思い出したが、その昔、様式美メタルが好きな友達にスコーピオンズのあのレゲエ曲を聴かせたら、レゲエじゃなかったら良い曲なのに、レゲエにする必要が分からん、と言われたのを思い出した。
 
ハードロック/ヘヴィメタルのファンはかなり保守的なんですよね。BURRN のレビューなんかでもメタルのジャンルとしてカテゴライズされたもの以外のものにチャレンジしたアルバムにはかなり手厳しいし・・・。
 
クラッシュのロンドン・コーリングを最初に聴いたときに、典型的なパンクを期待してたから、あれ?これってパンクなの?と思ったが、典型的なパンクロック曲の枠に収まらずにクロスオーバーして行くスタイルもパンク的なのかな?と思うようになった。
 
そういえば、ピストルズが再結成した時に「金のため」と言ったことが「パンクらしからぬ」と批判があったようだが、それを記者会見で言ってしまうことが逆にパンクじゃね?とか思ったり、ジョニー・ロットンが「自分はアイアムア アンチクライストって歌ってたけど、俺はむしろ逆サイドの人間」とか言ったりしたらしいけど(Wikipedia情報なので真偽はわからないが)、そのスタンスも逆にパンク!
 
パンクとはこうあるべき、みたいな押し付けスタンスが、実はとても体制的だってことを考えれば、パンクなんだから別に何やったっていいんじゃないかという気がするわけで、逆にパンクとは何やってもOKみたいなのが体制的な考えなのであれば、ワンパターンなパンクソングに拘るのが反体制的。ということで、結局何がなんだかもうわけわからなくなる。
 
ま、そうは言っても結局のところ、パンクなら何でもアリな気がするんだけど、メタルの場合はなんかそんな感じにはならないですよね。
 
僕がハードロック/ヘヴィメタルなジャンルを熱心に聴いていたのは1994年〜1997年くらい。1997年位から段々離れていったのは、どうにもそのジャンルの持つ排他性に馴染めなかったから。BURRN誌のアルバム紹介とかで良く見る「これが気に入らないならこのジャンルは諦めた方が良い」的なスタンスもなんだか鼻についてしまい。諦めるっていうかこっちから願い下げだ!と思うことしばしば。
 
最もなんだかな〜?と思ったのが、ジョン・サイクス率いるサイクスというバンドの「アウト・オブ・マイ・ツリー」に纏わる評価。先行シングルの「I Don't Wanna Live My Life Like You」をラジオで聴いて、キター!と思って発売日に買いに走った。その先行シングルは、当時台頭してきたメロコアに呼応したかのようなメロディックなパンクソングで、だけどやっぱりホワイトスネイクで世界的ヒットを出したブリティッシュ・ハードロック直系のギタリストなもので、レスポールの野太いサウンドの早弾きギターソロもあったり、そうかと思えばビートルズのBirthdayから引用したフレーズがあったり、遊び心いっぱいの名曲だった。
 

John Sykes - I Don't Wanna Live My Life Like You ...
 
他の曲も全体的に「ブリティッシュ」というテーマでまとめていて、ディープ・パープルのStormbringerみたいな曲もあったり、サイケっていうかブリットポップみたいなのもあったり、かなりの名盤だと思ったが、世間的な評価はイマイチだったようで、パンクなんてやるなよ!とか、前身バンドのBlue Murderの様なブリティッシュ・ハードロックをやれ!だの、なかなか散々だった。ジョンとしては、かつて在籍したThin Lizzyの様に特定ジャンルに拘らない姿勢をかなり表面に出した作品だったと思う。実はその前の作品、Blue MurderのNothin' But Troubleでもハードロックの枠にとらわれず、Small Facesのカバーなんかもやったりしてるから彼にとっては路線変更って思いも少なかったんじゃないかと思うけど、とにかく評価はイマイチだったわけ。
 
ちなみにSmall Facesのカバーってのは、Itchycoo Parkです、これね↓
 

Blue Murder - "Itchycoo Park" (2/12) | Nothin ...
 
この時、そうか、ハードロック/ヘヴィメタルのファンは前作から逸脱したりすると手厳しいんだな!と思うようになった。
 
同じように、僕が好きだったThunderもファンキーっぽくなったり、ソウルに手を出したら否定的な意見が増えて、再結成後はそういう意見を反映したのか、彼らの趣味的なソウル路線はソロアルバムだけに留められてしまった。
 
僕はハードロックから入った人間じゃなくて、ビートルズコステロを聴いていたので、前のアルバムとまったく違うことをされたとしても曲が良ければ関係ないと思っていた。だから別にハードロック的じゃなくても全然問題ないのだけれど、一般的なハードロックファンは(おそらく)変化を求めてないので、バンド側も今までのファンを繋ぎとめながらどうやって新しいことをやるか、みたいな感じになる。つまりチャレンジの幅がかなり狭くなり、抜本的に変わることが出来ない。
 
サイクスはこの後、さらにパンク色を強めたアルバムを出したり、デジタルロックに手を出すが売上はあまり良くなく、結局もう10数年アルバムを出していない。才能があるのに勿体無い。彼がハードロック枠じゃなかったらもうちょっと受け入れられてたんじゃないかと思う。なにやら、久しぶりのニューアルバムを作ろうとしているみたいなニュースがあったけど、その後どうなったんだろう。出す出すといって伸ばしまくってたガンズみたいなことにならなければ良いけど。