俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

コステロとの馴れ初めを振り返る

エルヴィス・コステロが来日することになってチケット取ってから、しばらく予習復習の意味を込めてコステロばかり聴いていたのだけれど、コンサートの直前くらいから、ポール・マッカートニーが来日したせいでポールばかり聴いていたり(NEWは正直凡作だったけど・・・あれが高評価の意味がよく分からない)、なぜかそこから70年代ソウル的な音がマイブームになって、アイズレー・ブラザーズあたりを聴いていて、コステロの予習復習を全然していなかった。

 

そんなこともあり、「My New Haunt」が演奏されても、全く何の曲だか分からなかった。Wise Up Ghostに漂う曲調は、普段殆ど聴かないジャンルではあるんだけど、雰囲気似た感じのThe Bridge I Burnedなんかはかなり好きだし、このアルバムも結構好き。だけどデラックス・エディションで追加された曲は一回だけしか聴いてなかったのでちゃんと聴いとけば良かった。とは言ってもThe ImpostersバージョンはThe Rootsバージョンと全然違うので、聞き込んでいたとしても分かったかどうかは自信がない。

 

大抵、自分の場合はコンサートが終わると満足してしまって、しばらくいいや、と思い、別のミュージシャンばかり聴いてしまうんだけど、今回は様相が異なり、未だにコステロばかりを聴いてしまう。好きなミュージシャンは沢山いるけど、やっぱり自分の中のナンバーワンはコステロなのである。

 

ということでエルヴィス・コステロについて振り返ってみよう。

 

僕が始めてエルヴィス・コステロの曲を聴いたのは高校一年生の頃、学校のスキー学習に向かうバスの中である。(しかし、これは実はスキーではなかったかもしれない。記憶がかなり曖昧。どちらにせよ、1992年~1993年頭の頃の話だ)

 

当時、氷室京介のシングルを網羅しようと思って、レンタルビデオ屋で既発のシングルを借りてきて、ハイポジのカセットテープにダビングして、それを高1の春に札幌地下街ポールタウンで衝動的に買ったSONYウォークマンを使ってバスの中で聴いていたのだ。その時に聴いていたのが、デビッド・ボウイのSuffragette Cityとエルヴィス・コステロのAccidents Will Happenのカバーだったのである。

 

とりわけ、Accidents Will Happenのカバーには衝撃を受けた。サビに行くまで下降し続けるベースラインと流れるようなメロディに、スゲーなこの曲!と思い、その曲ばかりをリピートして聴いていた。これは、一体誰の曲なんだろう?と思って作曲クレジットを見るとElvis Costelloと書いてあった。

 

こんな名前、聞いたことすらない。一体誰なんだ?

 

エルヴィスっつったらプレスリーだよな、コステロってあれか?まんが道手塚治虫が漫賀道雄と才野茂に始めてあった時に、君たちアボットコステロみたいだね、と言ってたあのコステロ

 

うーん、得体の知れない人だな、と思いながら、その後僕はビートルズにハマる。近所の本屋で「ビートルソングス」というソフトカバーの赤い本を買って読みながらビートルズを聴くというのが高校2年生の頃の過ごし方だった。そしてその本の中でたまにビートルズの曲に言及していたのがまたもやエルヴィス・コステロ

 

さらに、布袋寅泰の「Radio Pleasure Box」(←名著です)というびあ刊行のムックがあり、ここに布袋氏が影響を受けたアーティストが大量に紹介されており、なんとここにもエルヴィス・コステロが見開きページで登場する。

 

うーん、コステロか。どうやらそこそこ有名な人みたいだし、Accidents Will Happen以外にも良い曲があるかもしれないと思い本格的に聴いてみたくなってきた、という思いを強くしていたら、ある日中古CDショップにエルヴィス・コステロのCDが大量に売っていたのを見つけたのである。

 

時期的にはRykoDiscのボーナストラック付きリイシューが一挙にリリースされていた時期だったので、今まで持っていたCDを手放した人がたぶんいたんだろうと思う。

 

一枚1000円くらいだったのでこれは買いだろ!と思い、その時に買ったのがArmed Forcesのコロムビアから出ていたUS盤CD。リリースされたのは1986年頃でリマスターもされてないので音がかなり貧弱、しかもSunday's Bestが入ってないという代物。それと一緒にThis Year's Modelの、これもUS盤でChelseaとNight Rallyが入ってないというものを買った。その代わりに前者にはPLU、後者にはRadio Radioが入っていたのだ。ま、当時はUS盤とUK盤で曲が違うのを知らなかったのだけれど。

 

始めて聴いた時の感想は、声質がかなり特徴的でしかも低い!でもアルバムの中は良曲ばかりでかなりクオリティが高いな~、という印象。

 

Armed Forcesはキーボードが前面に出ていて変わったリズムの曲があったりしたが、全体的にはザ・ポップ!って印象を受けた。Oliver's Armyも凄くポップな曲で、売れそうだなと思ったらやっぱり売れたみたい。Peace Love & Understandingも良いなあ!でも作曲者がLoweと書いてあって誰これ?って感じだったけど、後にプロデューサーのニック・ロウだと分かる。この頃、北24条バスターミナルの上にあった小さいCDショップでこの曲の別バージョン(たぶんブリンズリー・シュワルツのオリジナル)が流れてて、何故この曲が??有名なのか?と不思議に思ったが、どうやらボディガードのサントラにPLUが収録されてるみたいなのでそれだったのかも。このアルバムは結構、というかかなり好きなんだけども、1987年に出たミュージックマガジン刊行の「エルヴィス・コステロのすべて」とか、1999年に出たコステロが表紙のレコードコレクターズによると、日本での評判は悪かったみたいだ。こんな名盤なのに?と思ったが、今になってみると、アルバム毎にコロコロ作風を変えるコステロへの免疫がこの頃はなかったのかもしれないなと思った。This Year's Modelを聴いて好きになったらThis Year's Model路線を期待する気持ちが分からないでもない。

 

そのThis Year's Modelは、ジャケットにまず惹かれた。曲調は畳み掛けるようなブリティッシュ・ポップ。このアルバムは普段洋楽を聴かないような友達にも沢山貸したが、かなり好評だった。Armed Forcesはトリッキーな曲もあったけど、こっちはストレートな曲が多い気がした。でも僕にとってはどちらのアルバムもメロディが素晴らしいと思っていたのでアレンジの違いなんて些細なものでしかないと思う。とにかく最初に出会ったこの2枚が僕のコステロ好きを加速させたのだ。

 

で、コステロについてもっと知りたいと思っていたら、どうやらパンクの文脈でよく登場する。パンク?これがパンクなの?パンクってあれでしょ、歪んだギター超単純なリフでアーイアムアアンチクライスト!とかヘタウマなボーカルで歌うやつでしょ?と思っていたので、いや全然パンクじゃないじゃん!と思ったのだ。(ちなみにピストルズも借りてきて聴いたけど、あ~こういう感じね、ボーカル苦手!みたいな感じで終了した)

 

だけど、90年代の所謂メロコア的な曲の始祖ではあるのかな?という気がしている。アレンジというよりはメロディの面で特にそう思う。Oliver's Armyを若手バンドがカバーしたのを最近YouTubeで見たんだけど、その思いをさらに強くした。

 

グリーンデイのバスケット・ケースなんて、コステロが歌ってても違和感ない。まあ、アトラクションズのアレンジだと、もう少しテクニカルな感じにはなりそうだけど。

 

話はそれたが、これは他のアルバムも聴かないと、と思い、まだプリヴィにあった頃のタワレコでMy Aim Is TrueのRyko盤を買った。My Aim Is TrueはThis Year's Modelのブリティッシュな感じと全然違い、なんとなくスワンプ風な感じで(当時スワンプなんて言葉知らないけど)、アメリカンっぽいなぁと言うのが第一印象だった。実はバックバンドがCloverというアメリカのバンド(後のヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのニュース)だったからってのもあるんだろう。でもやっぱりメロディはとても良いのだ。Red Shoesなんて、ビートルズ軽く超えてんじゃないの?と衝撃を受けた。

 

コステロの強みはメロディの良さだ。だからライブでアレンジを変えられても、曲の良さがバッチリ残っている。実は同時期にハードロックもよく聴いていて、ディープ・パープルもレッド・ツェッペリンブラック・サバスも、ギターをやっていたら当然通る道なので聴いていたが、彼らの曲はアレンジを変えたら魅力が半減する。でもコステロの曲の肝はメロディなのでそんな事にはならないのである。いつだか、コステロボブ・ディランと同じで英語が分からないと何も面白くない音楽だ、と書いてるのを見たことがあるが全然そんなことはないと思う。

 

話は逸れたが、別の日に同じ店でGet Happy!!のUS盤とTrustのUS盤も買った。Get Happyはまた前の3枚とは違う雰囲気で、タイトル通りとにかく楽しげな感じでこれまたよく聴いた。Trustは、変態曲が多いという印象だったが、やはりメロディは良い。

 

ビートルズの時もそうだったが、なんとなく発表順に聴かないとな、みたいなのがあり、Trustの次はAlmost Blueってカントリーのカバーアルバムかぁ、まあまた今度聴こう、と思ったまま手が伸びず、大学に入って軽音楽部に入った僕はギタープレイがメインのバンドばかりを聴いていた。ここから数年間はたまに思い出したように初期の5枚だけを引っ張り出してたまに聴いたりするだけがコステロとの繋がりだった。

 

この時期にはBrutal YouthやKojak Varietyが発売されたころで、もちろん出ていたのは知っていたが、やっぱりここでもリリース順に聴こうと思っていたので、手を出さずにいた。また、よくありがちなパターンで、初期のアルバムは良いけど最近のアルバムはガッカリパターンじゃないの?などと疑心暗鬼になっていたというのもある。(数年後にBrutal Youthを聴いて、どうしてこれをリアルタイムで聴かなかったんだろう?と激しく後悔することになるわけだが)

 

そして2001年頃、たまたま行きつけの中古CD屋でベスト盤を見つけて買ったことにより、コステロ熱が再燃する。そして、コステロはやっぱり全部聞かなきゃダメだろ?と思い、取り憑かれたようにアルバムを買い出す。順番に聴かなきゃと思ってたのに、Almost Blueはすっ飛ばしてImperial Bedroomから再開した。これがまた素晴らしい出来だった。初期の雰囲気とは全然違うけど、やっぱりこの男はただもんじゃないなと思ったのです。

 

この頃、コステロは目立った活動をしてなかったが、その数カ月後からタイミングよくRhinoの2枚組リイシューが始まったので、このシリーズを集め出したり、新譜が出れば発売日に買いに走り、行けそうなLIVEは行く(と言っても通算三回のみ。地方在住者には辛い・・札幌来てくれ!)という感じになった。

 

コステロの場合、再発盤が結構曲者で、Rhino盤を買ってもRykoDisc盤にしか収録されてないバージョンもあったりする。そんなわけで古いのを売るわけにもいかず、1stからBlood & Chocolateまでは2枚以上あるという・・・。特に2 1/2 Yearsもヤフオクで買っちゃったから、This Year's Modelなんて5枚くらいある。これはコステロファンあるあるですよね。

 

名曲を出し惜しみなくリリースする天才ミュージシャンなのに、本屋に並ぶのは音楽関連の本はビートルズを筆頭に、ストーンズとか、クイーン・キッス・エアロスミス、クラプトン、ツェッペリン、などなど(←別に嫌いなわけではないけど、納得いかず)。コステロの本など数える程しかないし、しかもほぼ廃盤ばかりだし、功績に比べてこの冷遇ぶりは何なんだ?と思うことしばしばですが、おかげでコンサートのチケットは取りやすくて、しかも間近で見るのもあまり苦労しなくて、それはそれでありがたい。

 

では、Accidents Will Happenをどうぞ。

 


Elvis Costello & The Attractions - Accidents Will ...

 

余談ですが、ブルース・トーマスのAccidents Will Happenにおけるベースプレイを聴きたいなと思って、Accidents Will Happen Thomas でYoutubeを検索しても、きかんしゃトーマスがヒットするのでご注意を!