俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

ポールとコステロ

結局「マッカートニー・ミュージック 〜ポール、音楽、その全て〜」を買ってしまった。いい本ですよ、これ。

著者の鈴木さんのコメントも面白いけど、欄外に鈴木さん含めた3人の対談も載っててこれも面白い。あとレコスケくんの、2002年のレコード・コレクターズの続きのような、80年代ポール徹底擁護も面白い。(ちなみにレコスケくんの漫画オンリーの単行本も持ってます。)

あと、これは巷に溢れる妙な礼賛本と違って、駄作は駄作と書いてあるのもとても良いです。ポールっていうかビートルズ関連の本って、ホントに本屋に行ったら未だに新刊が出ていて、大抵パラパラめくった挙句に、ああ、またこの論調か、とか、単なる紹介本ね、それ知ってるよ、とかそんなのばっかりの中、これは別格!全曲レビューをうたってるからかどうかは分からないけど、冒頭で中山康樹さんに言及しているのも興味深い。ただ、引用されていたローリング・ストーンズの全曲解説本は僕は読んだこと無いんだけど。有名曲は知ってるけどストーンズに未だにピンと来てないもので。「ひとりぼっちの世界」は大好きだけど。

ポールは超名曲もあるけど、駄作も多いってのはある程度聴いてれば思うわけで、そこを誤魔化してない。特に最新作「New」についての言及とか。あれはポールが「Back to The Beatles」と言ったせいで、ビートルズっぽい曲だらけだと思われがちなんだけど、ビートルズっぽいのはPenny Laneライクな中期ビートルズ風の「New(曲)」だけで、あとはなんかパンチが弱い、ってのを隠さず書いてます。あと「Chaos And Creation In The Backyard」が傑作ってのも納得。あれは個人的にはポールのソロキャリアでの最高傑作だと思うので。本当に何回聴いたか分からない。

80年代のポールについてもここまできちんと書いてるのはあまり見たことないです。個人的になんかおおっ!と思ったのは80年代って80年代サウンドファッショみたいなところがあるってところ。これは本当にそうで、今聴くとやっぱりこれは無いな!と思うサウンドなんだけど当時はこれが大流行していたわけで、それは1980年代中盤から1990年頃まで続いていていて、ポールとそれに抗えなかったというのが興味深いですね。あのパワーステーションみたいなサウンド、個人的にはないなー。プレイリスト作ってると明らかに浮くんですよね80年代の曲って。Van Halenみたいな畑違いのハードロック勢も「5150」は完全に80年代サウンドになってたし、「フラワーズ・イン・ザ・ダート」も若干その頃のサウンドが残っていて、曲は好きなんだけどそこがマイナス。もっと生っぽいサウンドなら良かったのに。「オフ・ザ・グラウンド」になるともう90年代サウンドですよね。この辺のはそんなに嫌じゃない(リアルアイムだったってのもあるかもしれないけど)。

余談ですが、XTCの変名プロジェクト「Dukes Of Stratosphear」のサウンドは凄い。完全に60年代後半。サイケデリックロック!ヤードバーズとか、ドアーズとかクリームとかバニラ・ファッジとかディープ・パープルMk-I のサウンド!これが80年代の作品だってのに驚く。XTCは80年代サウンドファッショに抗ったアナーキーな存在として記録に残るでしょう。

あと、この本にはエルヴィス・コステロについての言及も結構あって、80年代の低迷期を脱したのはコステロのお陰ってのもすごく納得。

コステロ自身も自らライナーノーツで「あなたは最低の作品を手に取りました」とお出迎えする「グッドバイ・クルーエル・ワールド」(良い曲もあるんだけどね)を産み出した時代から脱却出来たのはポールの功績もかなり大きかったと思う。ポールのジャズアルバム「キッス・オン・ザ・ボトム」のピアノを弾いてるのはコステロの嫁さんだったりするし(ダイアナ・クラール)、何かと持ちつ持たれつの関係は今まで続いてるんだろう。

ポールにヘフナーで弾けば?って言ったのもコステロだけど、そもそもどういう経緯でコラボが始まったかはよく分かりませんが、二人の関係は結構長くて、1979年のカンボジア難民救済コンサートで会ったのが最初らしいです。あと、地味に「ロケストラのテーマ」にはアトラクションズのブルース・トーマスが参加したりしてます。音聴いてもよく分からんけど。その後、ポールの「タッグ・オブ・ウォー」とコステロの「インペリアル・ベットルーム」が隣のスタジオで作ってたみたいで、スティーブ・ナイーブが書いたオーケストラのスコアをジョージ・マーティンに添削してもらったり、プロデューサー/エンジニアのジェフ・エメリックが行ったり来たりしてたとかしてないとか。多分この時にも交流あったんでしょう。

ちなみに、コステロビートルズについて語っている文章があったので数年前に一生懸命翻訳したんだけど、同じ事を別の方がやってくれてました。(素晴らしい!)こっちの方が翻訳的にナイスなのでリンクされてもらいました。


結局コステロが一番好きなのは「And Your Bird Can Sing」なのかな?まあこれはジョン・レノンの曲で、しかもジョン曰く「クズみたいな曲」。でも僕もこの曲好きです。アンソロジーで笑いが止まらなくなってるバージョンも良いですよね。

コステロがカバーしたビートルズ関連の曲も結構多いですよね。

「You've Got To Hide Your Love Away」、「Step Inside Love」、「Junk」、「For No One」、「Baby It's You」(バート・バカラックだけど、多分ビートルズバージョンで知ったと思われる)、「You Really Got A Hold On Me」(これもスモーキー・ロビンソンだけどビートルズバージョンで知ったと言っていた)、「Leave My Kitten Alone」(これはビートルズのブートで知ったみたい)、あと「All You Need Is Love」とか「All My Loving」。YouTubeで「Penny Lane」も見たことある。

なんか途中からコステロの話になっちゃったけど、実は12/12と13にコステロを見に行くんで否が応でも盛り上がってしまっているのです。スピニングソングブックツアーでしたっけ?僕ら世代だと、志村けんの「だいじょぶだあ」のルーレットマンを思い出してしまうのでアレですが、そのツアーのDVD見てたら、観客にルーレット回させてるんですよね。呼ばれたらどうしようとか、WOWOWで生中継されてるからヤベー!とか要らない心配をしています。それにしてもルーレットが止まった後に、即座に演奏するインポスターズのメンバーはやっぱり凄い。まあ、ルーレットに書いてる曲はリハーサルやってるんだろうけど、それでも凄い。ルーレット回ってる最中、それっぽい曲演奏するんですよ。で、ルーレットが止まったらブレイク。コステロがタイトルを叫ぶと演奏が始まる。凄いかっこいい。これは見に行かないとダメですよ絶対。

過去に有楽町の東京国際フォーラムのコンサートに行ったことあるんですが、その時演奏されなかった「Accidents Will Happen」は是非聴きたいなあ。楽しみ。