俺の記憶ストレージ Part 1&2

寂しさは琥珀となり密やかに輝き出す

サンダー Part12:4th「The Thrill Of It All」

 

Thrill of It All

Thrill of It All

  • アーティスト:Thunder
  • 発売日: 2015/08/14
  • メディア: CD
 

 

暗黒の1995年が明けて1996年。EMIから離脱したサンダーはキャッスル・コミュニケーションズと契約し、サブレーベルとして「B Lucky」を立ち上げました。

 

(ところで、この頃から日本のメディアでの「Luke Morley」の読み方が「ルーク・モーレイ」から「ルーク・モーリー」に変わりました。まあどうでも良いけど。メンバー紹介ではどう考えても「モーリー」と言っているのでモーリーが正しい)

 

ルークは次のアルバムのためにスペインで曲作りし、スタジオ入りします。

スタジオはウェールズにあるロックフィールド・スタジオで、なにやらど田舎にあるらしく、レコーディングに集中できたとのこと。芸森スタジオみたいな感じなのかな?

 

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ミカエル・ホグランドは公式にはまだ在籍中でしたが、実際はすでにスウェーデンに戻っていて、ベーシスト不在の状態。なのでベースはルークがプレイしてたとのこと。

 

そして出来上がったのが、4thアルバム「The Thrill Of It All」で、ファーストリリースは日本で、本国よりも半年以上早くリリースされています。日本でも東芝EMIからドロップし、ビクターエンタテインメントと契約し、以降、2回目の解散の2008年までサンダーのアルバムはビクターからのリリースになります。

 

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本国英国では遅れること1997年の2月にようやくリリース。英14位。

 

シングルカットは1996年9月(アルバム発売と同月)に「Don't Wait Up」。英27位。

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翌年1997年1月に「Love Worth Dying For」。英60位。

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シングル、アルバムと3枚のジャケ写を見て気づくのは、とてもじゃないけどハードロックバンドとは思えない、ということ。加えてダニーはロングヘアーをバッサリと切落し、超ショートになったのもこの頃です。これには当時、賛否両論を結構見た気がします。ハードロック寄りの人からは音楽性も含めて軟弱になったと批判されていました。僕は全然そういうのに拘らない、というか音が良くてジャケットに合ってれば良いんじゃないのと思ってました。

 

で、アルバムは「ハードロック」からは大分離れたテイストで、ハードロックと呼べるのはパープル風の「Cosmetic Punk」のみ。これもハードロック・パロディ的な曲で、純粋にハードロックな曲は1曲もない。

 

前作は、カッチリ作り込んだ雰囲気でしたが、今作はルーズ、リラックスというムードで、R&B色もかなり強まってます。

 

オープニングトラックは「Pilot Of Dreams」で、これ結構好きです。16ビートでグルーヴィなロック。ギターソロで何故かエスニックになるのが面白い。

 

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「Living For Today」は終始三拍四連で進行する変わった曲。最初だけルークが歌ってます。

 

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バラードサイドは、2ndシングルにもなった「Love Worth Dying For」。このPVではルークはテレキャスター弾いてますねぇ。レスポールからテレキャスってのも、結構なイメージチェンジだと思うんですよね。テレキャスってハードロックだとほとんど使われないですから。リッチー・コッツェンくらいかな?

 

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最初のシングル・カットの「Don't Wait Up」ですが、バンドの意思表示ですね。この路線で行くぞ、という。R&Bにかなり寄せた作風。

 

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1998年頃からセットリストのオープニングナンバーを長らく努めた「Welcome To The Party」。再結成直後の2002年もオープニングナンバーでした。再々結成以後は、こんな曲ありましたっけ、的な扱いでなぜか一度も演奏されない。

 

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 ハチロクバラードの「You Can't Live Your Life In A Day」。すごく良い曲なんだけど、前作でデモを録った時にこの曲は要らないと言われたとか。耳が悪いのではないか?

 

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まとめていて、思ったんですが、このアルバムの曲って1曲もサンダー公式のYoutubeにないんですね。契約的な問題なんだろうか。

 

アルバムの中でも有名なものをピックアップしましたが、要らない曲は一つもないくらいのハイクオリティなアルバムです。

 

個人的なサンダーのフェイバリットアルバムを3つ上げるとこのアルバムが入ってくるんですが、(あと2つは3rdと5th)おそらくこのアルバムはそれほど人気がない。ハードロックファンにはレイドバックしすぎていると思うし、R&B色が強いのもハードロックファンには印象が良くないだろう。

 

B誌もR&B好きな人はおそらくいない。この雑誌の中ではカリスマギタリストのリッチー・ブラックモアが、パープルのR&B化に抗議して脱退してレインボーを使ったって経緯もあり、なんかR&Bに対して、敵意とまでは行かないまでも、無関心な感じを受けます。まあでもR&Bに限らずメタル以外は認めない的なところがあるので、メタル以外に排他的な感じがありますね。

 記憶がおぼろげだけどB誌の評価でもこのアルバムは評価がそんなに高くなく、このバンドに必ずあったパーティチューンがアルバムを追う毎にパンチ力が弱くなっていっている、と書かれていて、「うーん、そうか?」と疑問に思った記憶があります。基本的にB誌の感覚と自分の感覚が違いすぎて、このアルバム以後はアルバム・レビューを見るたびに「違う」と思いながら読んでました。

 例えば「Love Worth Dying For」シングルのレビューなんかは「カップリング曲がハードロック的で良い曲なのに、なんでアルバムにこれを入れなかった?」と書いてたんですが、確かにリフがあって、BPM高めでギターソロがあって、ハードロック寄りのフォーマットではあるんだけど、肝心の歌メロのクオリティ的には、まあアルバムには入らないような2軍の曲だな、という印象でした。B誌的にはハードロックのフォーマットに近いかどうかが評点のウェイトの多くを占めるんだなと思ったわけです。自分は歌メロの方が重要と思う。B誌のストライクゾーンが狭いからってのもあります。

 

ただ、実はこのアルバムのバンドスコアも出ていたし(自分も持っていたんだけど、部室に置いていたら誰かに持っていかれた)、実は以外と人気があった説もなくはない。

 

さて、日本では1996年の9月リリースでしたが、本国英国では半年以上遅れてリリースされます。何故かはよく知らないけど、ベンが腱鞘炎でツアーが延期になったことと、ルークのパワー・ステーション参加が影響してるのかな。

 

ルークは、アンディ・テイラーの誘いで再結成パワーステーションのツアーメンバーに誘われ、「サンダーの活動につながるなら」ということで引き受けます。(ということはカヴァーデイル・ペイジはサンダーの活動につながらないってことになるな)

 

このパワー・ステーションの活動は1996年の11月〜12月あたりのツアーで日本にも来てます。このサポートは1997年の9月あたりにもあったので、この時期のルークは長期間に渡って、サンダーの実質的なリーダーと、パワーステーションのサポートメンバーを掛け持ちしていたことになります。

 

この頃の映像はYoutubeを探せば結構出てきます。

 

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ルークのアイコンと言っても良い白のレフティーのギブソンレスポールも出てくるですが、この時にはフェンダーテレキャスターも併用して使っていて、音楽性的にもファンク色が濃いので音が分厚いレスポールよりもシングルコイルのテレキャスの方が向いているとも言えます。

 

 ルークはコンポーザーとしてでもなく、派手なギター・ソロを弾くわけでもなく、サイドギタリストとしての参加でしたが、ハードロックファンの前でなく、メインストリームなロックをファンの前で演奏したことが、サンダーの活動に影響を与えたのではないかと思ってます。実際、このアルバムの「Hotter Than The Sun」というファンクな曲はパワー・ステーションでの活動が影響しているとのこと。

 

さて、アルバムリリース後に空席だったベーシスト枠に新メンバーが埋まることになります。新メンバーはクリス・チャイルズ

B誌にはクリス・テイラー、と名前を間違われてましたが。クリス・ペプラーだと思っていたのか、アンディ・テイラーが混じったのかは定かではありません。一つ言えるのは、校正が通った音楽誌でも名前を間違えられるくらい無名だった、ということ。

 

クリス・チャイルズは、実は最年長。バイオでは元ゼン・ジェリコと紹介されてますが、実際には解散後にマーク・ショーと仕事をしていて、それをゼン・ジェリコ2と名乗っていた頃に在籍していたようです。80年代には、アンディ・サマーズのソロ作にも参加してたりとセッションミュージシャンもやっていた模様。サンダーのオーディション前にはゲイリー・グリッターのオーディションを受けたとのことなので、これまたハードロック畑の人ではないんですよね。サンダーとの繋がりはゼン・ジェリコ2の頃にアンディ・テイラーと知り合いになったことで出来たとのこと。

 

ここからは僕の予想ですが、サンダーのメンバーになった決め手は「I'll Be Waiting」がうまく演奏できるかどうかだったのではないかと。

 

サンダーのオーディションで演奏した3曲のうちの1つに「I'll Be Waiting」があって、当初は何でこの曲なんだろうと思ったんですが、おそらく前任者のミカエルがこの曲に苦戦してたから。ミカエルはギーザー・バトラーが好きらしく、ソウル・バラードをラウドに弾いてしまい、サンダーのメンバーを困らせていたというエピソードがあって、それを確かめたかったんじゃないかな。

僕も先輩のハードロックなドラマーに、この曲はバラードなんで、もうちょっと優しくプレイしてください、なんてお願いしたことがあります。

ルークとしては、ミカエルが弾いたスタジオバージョンよりもクリスが弾いているライブバージョンがお気に入りらしく、2004年リリースのバラードベスト盤にもこの曲だけライブテイクで収録してます。ちなみにライナーノーツには1998年「Live」からのテイクと書いてありましたが、全然違うテイクです。ソロが全然違うし。

実際、この曲が収録された3rdアルバムのツアーではセットリストに入ってませんでしたが、クリスが加入した4thのツアーからはセトリの常連になり、2019年のツアーでも演奏されてますね。なので、クリス加入の決め手はR&B的なプレイが出来るかどうかだったと思います。

 

クリスは結構派手なプレイをすることがあるんですが、ビリー・シーン的なロック的なものではなく、フュージョン畑から来ました的なプレイです。解散ライブでは「Just Another Suicide」のメンバー紹介でベースソロを弾くんですがスラッピングでバキバキ言わせてからの、スティーヴィー・ワンダーの「I Wish」に雪崩れ込むという構成がめちゃくちゃ良い。自分のベーシストの好みとしても合ってて、良いメンバー入れたなぁと思いました。

 

クリスに関するルークのコメント:

Chris auditioned last, and he was so much better than anybody else that he was the obvious choice. He was so good – everything that we’d been looking for in a bass player. I’m sure Snake and Micke won’t mind me saying this, but I’m as good a bass player as they are – and it was nice to have someone in the band who was as fully rounded a bassist as Chris is, and who can play any style of music. He makes the band sound different and feel different; he meant that we could play songs that we couldn’t play before he came along. Everything I’ve recorded since, I’ve always asked him to play bass on it.

 

クリスは最後にオーディションを受けたんだけど、彼は誰よりも優れていたから、当然のように選ばれたんだ。彼はとても優秀で、我々がベーシストに求めていた全てを備えていた。スネークとミッキーはこんなことを言っても気にしないと思うけど、僕は彼らと同じくらい優秀なベーシストなんだ。彼はバンドを違ったサウンドにしてくれるし、違った感じにしてくれる。彼が来る前は弾けなかった曲を弾けるようにしてくれたんだ。それ以来、僕がレコーディングした全ての曲で、いつも彼にベースを弾いてもらうようにしているんだ。

 

Giving The Game Away - The Thunder Story より

 

新メンバーも入ったことだしメデタシ、と行きたいところですが、キャッスル・コミュニケーションズでリリースしたアルバムはこれだけで、レコード契約が不安定な状態は続いていきます。

 

続く。