2013年リリースのThe Rootsとのコラボアルバム。
ジャケットの元ネタはこれ。
Howl and Other Poems (City Lights Pocket Poets Series)
- 作者:Allen Ginsberg
- 出版社/メーカー: City Lights Publishers
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: ペーパーバック
これはレーベルがブルーノートなんですね。ジャズじゃないのに。今やブルーノートはジャズだけのレーベルじゃない?
アルバム聴く前は不安だったんですよ。これ自分に聴けるのかって。ヒップホップか・・・と。
音楽を聴き始めた頃はロックとポップス一辺倒で、そこからハードロック行ったり、ファンクだったり、R&Bに行ったり、ジャズに行ったりと基本的には雑食気味ではあるんですが、昔からどうにも聴けない&聴きたくない音楽があって、それがヒップホップ。
例外的に「今夜はブギー・バック」は聴けるんですけど、それ以外が苦手だし、聴きたいと全く思わないジャンル。だけど、それ風に作った曲なら聴けるんです。
チャットモンチーの「ぜんぶカン」、スチャットモンチー(スチャダラパー+チャットモンチー)の「M4EVER」、佐野元春の「コンプリケーション・シェイクダウン」とか。
黒人のガチなソウルは苦手だけど、ブルー・アイド・ソウルなら聴けるみたいな、そんなノリ。
このアルバムもヒップホップグループとのコラボなので、中身がヒップホップだと言われるんですが、個人的に感じているステレオタイプなヒップホップでは無い気がします。ラップがあるわけじゃないし、基本的に生音なので全然違和感がない。
自分が苦手としているヒップホップは、ラップがあって、ワンコードで、メロディなんてなくて、ドラムが機械で、重低音がやたらデカくて・・・みたいな感じ。このアルバムは全然そうじゃない。
感覚的にはスロー・ファンクを聴いているのと変わんないん感じ。そもそも自分はスティーヴィー・サラスとかTMスティーブンスやらP-FUNK系も普通に聴ける。それにメロディはやっぱりコステロなんですね。ポップサイドなコステロのメロディは流石に少ないけど、ダークサイドのコステロメロディは十分に聴ける。
なので、僕はこれをヒップホップ・アルバムとはあまり思ってなくて、スロー・ファンク・アルバムだと思ってます。おそらく、コステロ史上、最も黒っぽいアルバムになるかと。「Secret, Profane & Sugarcane」が最も白っぽいアルバムでしたが、そこから僅か4年で逆のベクトルへ。
で、僕はこのアルバム、最初は不安な感じだったけど今はかなり好きなんですけど、どうも抵抗のある人がやっぱり少なくないような雰囲気。毎回コステロの日本盤ライナーノーツを書いていた音楽評論家の方がこのアルバムは書いていなかったり、その人がこのアルバムに言及している文章を見なかったり(見かけない)と、あまり好きではないのかなーと。
で、今回これを書くにあたって改めて聴き直してみたら、ceroみたいだなーなんて感じた曲もあり、また新鮮な響きでした。
ceroは個人的には2016年あたりに聴いてたのでこのアルバムの3年後。それからあまりこのアルバムを聴いてなかった。cero自身はディアンジェロに影響を受けたと公言していて、クエストラブはそのディアンジェロの「VOODOO」制作に携わっているので、まあ似て来ますよね。なので、このアルバムはネオ・シティ・ポップを先取りしてたと言えなくもない。
※このアルバムと似てるわけじょないけど「Yellow Magus」は名曲ですよ!
このコラボがなぜ誕生したかは日本盤ライナーノーツに書いてますが、掻い摘んで書くと、ルーツのクエストラブの番組にコステロが出て意気投合、ということみたいです。で、これもライナーノーツに書いているんですが、クエストラブが、ある曲のコードをコステロに聴かせて、コステロはそのコードでコラボやろうぜ、というサインだと受け取ったらしいんですが。それが何の曲のコードかはコステロの意向で明らかにされていません。これって何の曲なんでしょうね。これは勝手な自分の予想ですが、ポール・マッカートニーとスティーヴィー・ワンダーの「エボニー&アイボリー」なんじゃないかという気がしています。(違うかね?)
ところで、コステロとヒップホップ的なものとの邂逅はこの時が初めてじゃなく、これ以前にも何度もありました。
最も古いのは1991年「Mighty Like A Rose」の「Hurry Down Doomsday (The Bugs Are Taking Over)」あたりではないかと。このリフはこのアルバムで引用されてます(非サンプリング)。
「Wise Up Ghost」以前で最もヒップホップ系に寄せたのは意外と耽美的な作品として知られる「All This Useless Beauty」でして、「Little Atoms」「Distorted Angel」なんかはかなりそれに近い。「It's Time」も手法としては近いけど、曲調はヒップホップじゃないかも。
その後のベスト盤に収録された「The Bridge I Burned」はかなりのヒップホップに寄せたアレンジ。これはかなり好きな曲。
2002年の「When I Was Cruel」でも再びヒップホップに近づき、「Spooky Girlfriend」「When I Was Cruel No.2」が結構ヒップホップ的な手法。
「All This Useless Beauty」とか「When I Was Cruel」みたいに本編にヒップホップ的な曲を入れると、その気分的なもののか、他の人にリミックスを依頼するのがコステロさんのようです。
例えば「All This Useless Beauty」の場合だと、「Little Atoms」「Distorted Angel」は他人によるリミックスが何件かあります。
「When I Was Cruel」の場合は、「The Imposter Vs The Floodtide (Dust & Petals)」(Dustと15Petalsのリプロ)「Revolution Doll」(Tear Off Your Own Headのリプロ)「Oh Well」「Peroxide Side (Blunt Cut)」(Episode Of Blondeのリプロ)みたいな(ほとんど聴かない)曲が続々と。
なので別に「Wise Up Ghost」で突然、ってわけでもないんですね。
曲作りにあたってはThe Rootsのクエストラブと共作したそうですが、作曲に使ったのはなんとiPadのGarageBandだったとか。最先端だなぁ。この数年前がブルーグラスで、フィドル、ドブロ、マンドリンとかでアナログなアレンジしていた人とは思えない(笑)。
「Wise Up Ghost」の楽しみ方としては、マッシュアップみたいな手法で過去のコステロの曲が散りばめられているので、「コステロはどこにいるでしょう?」的なちょっとしたクイズ的な楽しみもあります。それが「North」の「Can You Be True?」だったり「Spike」の「Satellite」だったりと割とマイナーな曲がチョイスされているのが、また面白い。引用まとめは以下に詳しい。
・Walk Us Uptown
これAメロが延々続くだけだったらあまり面白いとは思わなかったんですけど、Bメロ?サビかわからないけど、「No Matter What The Price」の箇所でベースが生き生きと動いてて「おおっ!かっちょいい」となるんですよ。このアルバムはここで掴まれたようなものです。やっぱりオープニングトラックは重要ですね。
・Sugar Won't Work
サビが来ると、ああやっぱりコステロなんだな、と思います。
・Refuse To Be Saved
これかっこいいですね。コステロには珍しくリフ主体。
・Tripwire
「Satellite」を作り直した?曲ですが、メロウサイドではこれが一番好きな曲ですね。
・Come The Meantimes
スローファンク。
・Cinco Minutos Con Vos
「Stalin Malone」が引用されてる?と思ったけど全然だった。