俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

21th Elvis Costello (Part V) -「Il Sogno」

2004年「Il Sogno」、イル・ソーニョと読みます。

 

Il Sogno

Il Sogno

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
  • 発売日: 2004/09/21
  • メディア: CD
 

 

コステロの歌が入ってない純クラシック作品です。これは難易度が高い。このシリーズ最大の難関です。そもそも自分はクラシックに疎い上に、 コステロファンを自称しながらあるまじき行為ですが、所有しているものの2回くらいしか聴いてなかったのです。

なので、この回はごめんなさいするつもりだったのですが、コステロファンと言いながらそんなことで良いのだろうか?と数秒間自問自答しました。

コステロはパンク・ニューウェーブの文脈で出てきた人ですが、コステロ自体はジャンルを縦横無尽に横断するので、時には聴き手側の受け入れ体制が出来ないこともあるのです。それが僕にとってはこの作品。なんせクラシックほとんど聴かない。クラシックなんて、20年以上前に、リッチー・ブラックモア推奨のバッハのブランデンブルク協奏曲のCDを買ってから、それ以来ほとんど聴いてない。その前は・・・音楽の授業でバッハの小フーガを聴いたくらい。(バッハばっかり)

クラシック作品と言えば、「Juliet Letters」もそうですが、これはまだ歌があるので聴きやすかった。でもこれはインストだから・・・。

 

私はかねてからエルヴィス・コステロに関して書かれた本があまりにも少ない問題について、不思議に思ってました。知名度、人気の割に少なすぎる。モリッシーXTCでも結構出てるのに、コステロは全然ない。少し前に「THE DIG Special Edition エルヴィス・コステロ」というナイスな本が出ましたが、これはかなり久しぶり。 

THE DIG Special Edition エルヴィス・コステロ (シンコー・ミュージックMOOK)
 

 この前だと、「マイ・エイム・イズ・トゥルー」という自伝的な本が20年くらい前。ストレンジ・デイズとかレコード・コレクターズが特集したのも大体その辺りで、そこからしばらくなかったのです。 

コステロについて書かれた本の少なさについて、何故なのかと考えたんですが、あまりにもジャンル横断しすぎてて、各ジャンルの専門的なことを知らずに評論文を書くのはちょっと難しいのではないかと。世に出て活字として残ってお金を取る以上、このブログみたくテキトーなことを書けるわけじゃない。それなりの専門的な評論を求められた際に、ロック畑のそれメインで評論してきた人にはかなり難易度が高いのではないかと。

(ここから余談)

ジャンルって一体なんでしょうね。宮治淳一さんがサンソンの新春放談でレコード棚の整理方法について語っていて、ジャンルで分けると、ジャンル横断しているようなミュージシャンは整理しづらいので、ミュージシャンでAtoZで分けてると言っていて、たしかにそうなんだよなぁと。CDショップのジャンル分けも妙に細かいジャンル分けしているところがあって、一体どこ探せばいいか余計わからなくなってることも多々あります。僕もCDの棚はだいたいミュージシャン毎に並べてて、ジャンルで分けるとグチャグチャになる(特にコステロに関しては)。

別にジャンル分けなんて無くなれば良いとは思ってなくて、そりゃある程度の傾向がジャンルで分かるので便利なものではあるんです。ただそのジャンルに対して排他的になる人がたまにいて、ちょっとそういうのは自分のスタンスと違う。洋楽しか認めないとか、メタルしか認めないとか、アイドルの曲は認めないとか・・・。

某BURRNなんか、異ジャンル混入させるとあからさまに低評価になるほどのメタル優生思想だったり、はたまた、自分の番組でメタルなんて絶対流さないと公言してる有名音楽評論家もいるわけで。レッテル貼って聴かずに拒否するなんて、差別的な人だなぁ。そういうの嫌いです。

ちなみに、この前の山下達郎のサンデー・ソングブックは毎年恒例の干支による棚から一掴みで、サンハウスジミー・スミスマイケル・ジャクソンニック・ロウインペリテリが立て続けにオンエアされて(ちなみにインペリテリは数年前にもオンエアいしている)、こういうの聴くと、やっぱり山下達郎って最高だなと。

(余談終わり)

 

そしてようやく本題の「Il Sogno」。

いつ買ったかというと、これも確か発売日近くに買ったはずです。おそらくタワレコ。前述したとおりですが、2度くらいしか聴かずにCDラックに収まったままでした。

バイオ的な話でいうと、2000年頃、「真夏の夜の夢」をテーマにクラシックを書き下ろすことになり、10週間でスコアを書き上げ、完成した「イル・ソーニョ」は、2000年に数カ所で披露されました。やがてこの作品を録音することが決まり、指揮者のマイケル・ティルソン・トーマスが訂正を加えて、改訂版のイル・ソーニョが完成し、それが2002年にアビーロードスタジオにて、ロンドン交響楽団の演奏により録音されました。が、これより前に「North」を出すべきという判断で、イル・ソーニョの発売はしばしペンディング。そして2004年にようやくドイツのグラモフォンレーベルから発売された、とのことです。

 

この作品、やっぱり、詳しく感想書いた記事って殆ど見当たらないんですよ。上記のようなバイオは書いてるんですが。特に日本語で探すと、ない。当時からほとんどなかった。まあーだから、自分が自分なりの、クラシック聴かない人なりの、受容への推移を書いてみようと思いました。

 

ということで、「Il Sogno」を15年振りに聴いてみました。数日間に渡って、集中的に聴きました。

 

1回目。「ああ、こんなんだったかも・・」みたいな感じで、ほぼ聴き流す。


2回目。「ああ、また聴き流してしまった・・・、でも途中でジャズっぽい展開の曲があったな」


3回目。「結構気になるメロディがあったなあ。ラストの 『Wedding』 はオーラスらしく壮大で派手だなぁ。」

 

大昔にレッド・ツェッペリンを初めて聴いた時を思い出した。あれは「II」だったかな。その時、オールドなハードロックを聴く事自体が初めてだった。
歴史的名盤と言われて1曲目の「While Lotta Love」を聴いたものの「え、これが名曲なのか?何がなんだか分からない・・・」と思いつつも、高校生なので金がない。いまあるものを聴くしかない。と、2度3度と聴いていくうちにようやく良さが分かったみたいな。たぶん、ハードロックという未知のものに対して受け入れるモードになっていなかった。ただ、数回聴くと慣れてくる。慣れてくるといろいろ聴こえてくる。

 

4回目。「これ、弦楽器を使っているだけで、プログレと同じなんじゃないか?そうだよプログレだよ。別にプログレ詳しいわけじゃないけど、Yesの『Close To The Edge』も5回目くらいでやっと口ずさめるようになって・・・だんだん中毒みたいになっていったっけ。」

 

5回目。「小さい音で聴いても迫力ないなぁ」(どうやらこれはクラシックあるあるの模様。ダイナミックレンジが大きいのでマスターボリュームを大きくして聴くのがセオリーみたい)

 

6回目の前に、試しにYoutubeモーツアルトのピアノ・ソナタを聴いてみた。すげえなこれ。イングヴェイ・マルムスティーンみたい。好きか嫌いかで言うと、そんなに好きでもないけど、凄いのは確かだ。

 

さらに、他のクラシックを聴いて、改めてこのアルバムを聴こうと思ったので、TSUTAYAに行ってみた。水曜日はレンタルCD半額の日だったはずだが、いつの間にかそのサービスは終わっていた。変わりにTSUTAYAプレミアムというサブスク的なサービスが始まっていた。その店には月額1000円を払えば、いつでもCD100円レンタルと書いてある(ウェブページには全然違うこと書いてるが・・・)。うーん、定額で借り放題じゃないのか。サブサクと個別課金のハイブリッドサービスである。TSUTAYAは本当にこういうサービスが下手だと思う。景表法違反になったTSUTAYA TVもそうだが(今はどうだか知らないけど)、無料で見られる範囲が少なすぎる。ちょっと人気作を見たいと思ったら追加課金しないと見られない。Spotifyは月980円で聴き放題ですよ。もちろん、TSUTAYAにしかない音源もあるので、Spotifyが完全に優れてるとは言わないけど、TSUTAYAのサブスクには魅力がない。

 

結局、クラシック・ベスト200というコンピレーションを、T-POINTの割引などで、320円くらいで借りてきた。8枚組なのでお得感がある。一枚あたり40円。聴いたのは、バッハ、ベートーヴェンモーツァルトブラームスドビュッシーエルガーマーラーなどコステロが影響を公言している音楽家ばかり。

 

クラシック・ベスト200

クラシック・ベスト200

 

 

全部聴いたわけじゃないが、結構知っている曲が多かった。そうか、メロディを知っていれば普通に楽しめる。そう言えば大滝詠一の曲を井上鑑氏がクラシックアレンジにした「NIAGARA SONG BOOK」は普通に楽しめた。これはメロディを知っているからだな。

 

NIAGARA SONG BOOK 30th Edition

NIAGARA SONG BOOK 30th Edition

 

 

つまり、メロディを覚えれば楽しめるのかも(これが結論)。

この記事を書くことでちょっとオーケストラのコンサートを見てみたくなりました。 

 

でもね、クラシックって謎なんですよね。落語みたいなもので、基本的に作者=演者じゃない。作曲した音楽家が遺していった楽譜を元にいろんな楽団が演奏する。楽団によって多少の上手いとか下手とか好きとか好きじゃないとかあると思うんですが、ポピュラーミュージックのようにオリジナルと全く違う楽器を使ったりとか、大幅にアレンジするとかないはず(ですよね?)。ということは、素人ならまだしもプロのミュージシャンで構成されたオーケストラで、そこまで明確な違いが無い気がする。これ、いつかクラシック好きな人に聴いてみたい素朴な疑問。別に違いを楽しむとかじゃないんだろうなぁ。

 

ということで、「Il Sogno」で気に入った曲がこれら。

 

・Puck 1 

www.youtube.com

 

・The Court

www.youtube.com

 

・The State of Affairs

www.youtube.com

 

・Oberon and Titania

www.youtube.com

 

・Puck 2

www.youtube.com

 

・The Identity Parade

www.youtube.com

 

・The Face of Bottom

www.youtube.com

 

・Twisted-Entangled-Transform and Exchange

www.youtube.com

 

・Bottom Awakes

www.youtube.com

 
・The Wedding

www.youtube.com


ちなみに、2年後にリリースされたライブ盤「My Flame Burns Blue」には、ボーナス・ディスクで「Il Sogno Suite」(イル・ソーニョ組曲)が付属してます。ここから数曲抜粋・・・というか、数曲オミットした盤が付いて来ます。あまりにも当時聴かれなかったので、ボーナスで付けたんだろうか。

 

マイ・フレイム・バーンズ・ブルー

マイ・フレイム・バーンズ・ブルー

  • アーティスト:エルヴィス・コステロ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2006/01/13
  • メディア: CD
 

 

 さあ、最難関は乗り越えた。次は「Piano Jazz: Costello/McPartland」ですが、クラシックよりはジャズの方が書きやすい。