俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

21th Elvis Costello (Part IV) -「The Delivery Man」

2004年発売の「The Delivery Man」。

 

個人的コステロのフェイバリットアルバムの上位に来ます。特に2000年代のコステロのアルバムだと個人的にはNo.1ですね。2000年代のコステロで一枚勧めろと言われれば間違いなくこれを選びます。

 

ザ・デリヴァリー・マン

ザ・デリヴァリー・マン

 

  

テーマはアメリカ南部。

コステロは何度もアメリカをコンセプトにしたアルバムを作ってます。例えばこんな感じ。

1981年の「Almost Blue」・・・これはカントリー。ナッシュビル
1986年の「King Of America」・・・アメリカーナ。ロサンゼルス
1998年の「Painted From Memory」・・・イージーリスニングアメリカン・ポップス。ロサンゼルスとニューヨーク
2004年の「The Delivery Man」・・・スワンプ。ミシシッピのオックスフォード
2006年の「River In Reverse」・・・R&Bニューオリンズ
2009年の「Secret, Profane & Sugarcane」・・・カントリー。ナッシュビル

前述したように、このアルバムはアメリカ南部。

同じインポスターズで録音したタイトでソリッドな「When I Was Cruel」と比べると、スワンピーでグルーヴィーな演奏。たぶんだけど、ベースがブルース・トーマスだとこうはならなかったんじゃないかな。驚くのはピート・トーマスで、アトラクションズの縦のリズムは彼が土台となっていると思ったんですが、想像以上に器用なドラマーで、このアルバムで聴かれるような跳ねた、スウィングしたようなリズムでも余裕で叩けていて、改めて上手いドラマーだなと思います。

フォーク/カントリーテイストの曲も多くて、エミルー・ハリス、ルシンダ・ウィリアムスが参加していたり、コステロのキャリア初期の頃からバックを務めていたジョン・マクフィーも参加。カントリー風の曲だと彼のペダルスチールは良い味を出します。

ブックレットも結構面白くて、誰がどのパートを演奏したかという情報に加えて、どの楽器を使ったか、ということまで書いてます。この曲はギブソンのSuper 400、この曲はフェンダーテレキャスターとか。スティーヴ・ナイーブは、アップライト・ピアノとハモンド・オルガンが多くて、「Bedlam」では珍しいテルミンを使っていたりしますが、彼のトレードマークと言っても良いようなVOXコンチネンタルの出番は減ってます(2曲だけ)。こういうところにもアメリカ南部寄りサウンドの傾向が出てます。

 

個人的にはこのアルバム発売の頃は、ちょうど父が死んだ直後で、新さっぽろ近くに住んでいた祖母に色々報告に行った帰りに新さっぽろの玉光堂(今はもうない・・・というか移転したのかな)で購入しました。突然亡くなったので衝撃と悲しみが覆っていた心に、とても染み込んだアルバムで未だに良く聴きます。

社会的には、これどれだけ売れたんでしょうね・・・。これより2年前はコステロブームと言っていいほど話題になってましたが、この頃には洋楽ファン以外、というかコステロファン以外はあまり気になっていなかったような雰囲気です。

 

・Button My Lip

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この有無を言わせないカッコよさ。なんというか、音の洪水。パターンミュージック。ミニマルミュージック。ブレイクビーツ
ニック・ロウに「コード多すぎ」「曲分けろ」と怒られたあのコステロがワンコードの曲。コステロは歌ってはいるが、メロディは殆どあってないようなものです。コステロ版のマイルス・デイヴィス「オン・ザ・コーナー」なのかな、という気もする。

ちなみに「Lip」シリーズでは、「Lip Service」「Lipstick Vogue」以来、26年ぶり3曲目。


・Country Darkness

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音の洪水から一転、抑制の効いたカントリー・バラード。この構成が見事。言っておきますが、これは超名曲です。21世紀のコステロでも5本の指に入る美しい曲。ジョン・マクフィーのペダルスチールが効果的。

あと、インポスターズでやっと出来るようになったのが、サビでのハーモニーで、個人的にはカントリー・バラードにハーモニー・コーラスが必須だと思っていまして、デイヴィがしっかりとコーラスを入れてます。DVDのライブ・イン・メンフィスでも見れます。カントリーが苦手&歌が歌えないブルース・トーマスだとこの曲は出来なかったのではないかと。


・There's A Story In Your Voice

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ルシンダ・ウィリアムスとの共演。女性ボーカルと一緒に歌うことは過去にもあって、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターと一緒に歌いましたがアンネの場合は澄んだメゾ・ソプラノでしたが、ルシンダ・ウィリアムスはザラツイたアルト・ボイス。このアルバムの中ではほぼ唯一と言って良いポップソングだけど、カントリーテイストでもある。


・Either Side Of The Same Town

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「Piece of My Heart」などで有名なジェリー・ラゴヴォイとの共作ですが、こっちは「Country Darkness」よりは、カントリーバラード色は薄まっているものの、サビのハーモニー・コーラスは絶品。言っておきますが、これは超名曲です。21世紀のコステロでも5本の指に入る美しい曲(2曲ぶり2度目)。「She」だけ有名で、これとか「Suspect My Tears」が無名だなんて世界はどうかしている。

・Bedlam 

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コステロってあまりファンクな曲ないんですが、「Spike」の「Chewing Gum」くらいですかね。あっちは都会的なファンクですが、こっちは泥ファンク。


・Monkey To Man

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このアルバムのリーダートラックでシングルカットもされてます。スワンプ・ロックの名曲。

ライブバージョンばかり聴いていたせいで、久しぶりにスタジオバージョン聴いたら違和感。リフから始まらないんだっけ?と。でもこのバージョンはなんか良いですね。自然に始まる感じで。そろそろリフ入れようか?みたいな感じで歌の途中でいきなりリフが入る。ビートルズの「I Call Your Name」のカウベルみたいな?このアルバムには珍しくVoxコンチネンタルが入ってるけど自然ですね。


・Nothing Clings Like Ivy

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エミルー・ハリス参加の美しいバラード。 

ちなみにメロディが、ビートルズの「She's Leaving Home」もしくは「A Day In The Life」の一節に似ている。と思ったら、ベースはヘフナー使ってるんだな。

 

・She's Pulling Out The Pin

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曲名に「Pins」と入っているせいか、「Needles And Pins」を思い出してしまいますが、この曲もなんとなく60'sなテイストを感じるのは気のせい?


・The Judgement

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前妻ケイト・オリオーダンとの離婚以来、「Baby Plays Around」はご無沙汰ですが、なんとここに来てケイト・オリオーダンとの共作曲。名バラード。これはサビでハモってますが多分コステロ自身のダブルトラック。

 

次回は「Il Sogno」だが、果たして感想を書けるのだろうか。