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俺の記憶ストレージ (Part 1 & 2)

溢れ出る 色の渦 巻き込む パレード デイドリーム

Out Of My Tree / Sykes

不遇のアルバムというのがある。僕にとってジョン・サイクスの「Out Of My Tree」がそれに当たります。


ジョン・サイクスの簡単なバイオから。

ジョン・サイクスは1959年イギリス生まれのギタリスト。NWOBHMブームに乗ってレビューしたタイガース・オブ・パンタンのギタリストとして1980年にデビュー。1983年にシン・リジーに電撃加入しシン・リジーをヘヴィ化し解散まで在籍。1984年ホワイトスネイクに電撃加入。1987年に発表した「白蛇の紋章(サーペンス・アルバス)」ではメインソングライター兼ギタリストとして参加し全世界で800万枚を売り上げてメガヒットさせるが、アルバム完成直後にサイクス含めたメンバー全員、暴君デヴィッド・カヴァーデイルによりクビを宣告される。その後1988年に実質的ソロプロジェクト、ブルー・マーダーを結成し2枚のアルバムを残すも大した成功せず。1995年から2000年にかけてソロとして4枚発表するも大した成功を収められず。同時に1996年頃からフィル・ライノット抜きでシン・リジーを再結成しツアーを行うがアルバムは発表しないまま2009年脱退。現在は何しているか不明です。凝り性なのでなかなかアルバム作れないとの噂が。

 

で、1995年にソロになった時にバンド名を「サイクス」にして発表したアルバムが「Out Of My Tree」になります。

 

Out Of My Tree (1995)

 

1995年当時、僕は予備校生でした。予備校生ながらバイトもしようと思い、国営の某巨大賭博施設で警備員のバイトをしていたのでした。そこで仲良くなった人が貸してくれたのがホワイトスネイクの「白蛇の紋章(サーペンス・アルバス)」。

 

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ホワイトスネイクは実は「Slide It In」まで聴いていて、R&Bベースの渋めのハードロックをやるバンドだという認識だったのですが、これを聴いて「なんだ?モダンなハードロックやってたんだ」と驚いたのです。明らかに前作までとは違う作風、サウンド。どう考えてもジョン・サイクスというギタリストの影響が大きい。カヴァーデイルの作風はディープ・パープルでデビューした頃から、ホワイトスネイク初期~中期の頃まで聴いていたので分かっていました。どう考えてもカヴァーデイルの作風じゃないです。となると主導したのはジョン・サイクスオジー・オズボーンバンドはギタリストによって作風が大幅に変わりますが、それと似たような感じです。パープル・ファミリーで最も商業的に成功したのはホワイトスネイクのこのアルバムと言われていますが、実際の貢献者はジョン・サイクスなのです。それでこのギタリストは凄い、と思っていた矢先、酒井康がやっていたラジオ番組「HM SYNDICATE」で「I Don't Wanna Live My Life Like You」がオンエアされます。これイイじゃん、誰?と思ったら、そのジョン・サイクスだったという運命。僕は発売日に買いに行きました。今でも買いに行った時の風景を覚えています。桑園あたりでチャリ漕いでたら雨が降ってきて、しかも雨降っているところと振っていないところのちょうど中間に立っていて、その時カバンの中には買ったばかりのサイクスのアルバムが入っていて・・・みたいな風景。

  

ホワイトスネイク脱退からこのアルバムの間に2枚出してます。ブルー・マーダーというバンドで1枚目「Blue Murder」。このアルバムは僕にとってはちょっと重たい。俺が800万枚のアルバム作ったホワイトスネイクのソングライターだったんだぞ的な気負いがかなり重い。2枚目「Nothing But Trouble」はこっちはちょっと軽いんですが、なんか統一感がないというか。数曲選んで聴くだけ、みたいなアルバムです。で、「サイクス」というバンド名に変えて「Out Of My Tree」をリリースするというわけです。

「Out Of My Tree」はジャケットのユニオン・ジャックに象徴されるようにブリティッシュ色を全面に押し出したアルバムで、まあちょっと中途半端なところもあるんですがブリティッシュ・ロックの歴史をアルバム一枚に集約した、みたいなある種コンセプト・アルバム的なところがあります。ハードロック版ドクター・ジョンの「ガンボ」みたいな感じですかね。

巷での評判はそれほど芳しく無かったです。というのはジョン・サイクスのファンというのは殆どハードロックのファンなわけです。ハードロックファンは排他性が強く、ある種の純血主義的なところがあってハードロック以外の要素が混入されるのを嫌います。特に当時はメロコア/パンクとかシアトル系のグランジ要素を混入しようものならバッシングを受けていました。マキシマム・ザ・ホルモンが異端児扱いされてたりヘビーメタルが排除されてるのを見ると、未だにそうなんですかね。ブリティッシュなロックというのはハードロックだけじゃありません。ビートルズ、モッズ、パンクあたりもブリティッシュです。これが入ってしまい、散漫だと言われて評価が低かったのだと思います。僕はビートルズも聴いていたので全然気にならなかったですが、友達の中にもビートルズなんて良さが分からん、みたいな人がいて、そういう人はあまりこのアルバム受付なかったんじゃないかと思います。

 

Soul Stealer

巷ではホワイトスネイクっぽいと言われていたが、歌い出しの「Cold-Hearted Woman」とかタイトルがそれっぽいだけで曲調からあまりホワイトスネイクっぽさは感じなかった。スウィング気味のリズムにグルーヴィーなリフが載っているハードロック。個人的に質感が近いと思ったのはザック・ワイルド率いるプライド・アンド・グローリーの「Horse Called War」とかモトリー・クルーの「Dr.Feelgood」とかそういう路線。いきなりアメリカンじゃないかと言われそうだけど名曲です。サイクスのギター・プレイで好きなのが、低音弦でピッキングハーモニクスしながら大きめのヴィブラートかけるというもの。しかもそれにハモリを重ねたりするんですよね。これ聴くだけでサイクスだと分かります。この曲にも入ってます。

 

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I Don't Wanna Live My Life Like You

これはスウィートの「Action」っぽいと当時言われてましたが、当時台頭しつつあったメロコアも念頭にあったと思います。ギターソロの前はビートルズの「Birtyday」が人力でサンプリングされてます。これはシングルになってます。僕はすごく好きなんですけど、賛否両論でした。パンクに速弾きギターソロ入れるな!とかもありました。別に入れても良いじゃんと思ってました。

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She's All Action

おそらく'60sのモッズサウンドを意識したと思います。フーとかスモール・フェイセズとかその辺り。

 

Standing at the Crossroads

これはジミ・ヘンドリックスですね。ジミ・ヘンドリックスはアメリカ人だけどエクスペリエンスのメンバー、ミッチ・ミッチェルノエル・レディングはイギリス人なので多数決でイギリスのバンド!

 

I Don't Believe in Anything

これは元ネタ分かりません。ただ気怠い湿った感じはイギリスっぽいとは思います。だるーい時のジョン・レノンかも。

 

Black Days

これはもうあからさまにリッチー・ブラックモアが元ネタです。全体的にはレインボーの「Stargazer」で、ギターソロの辺りのリフはディープ・パープルの「Strombringer」、エンディングはこれまたディープ・パープルの「Mistreated」。パープルをチョイスするにもやっぱりギランではなくてカヴァデールなのがミソです。そもそも声質や歌い方がカヴァーデイルのクローンみたいです。僕の中での3大カヴァーデイルが、デヴィッド・カヴァーデイルとジョン・サイクスリッチー・コッツェン

 

Jesus & Mary

これはシアトル系、つまりグランジっぽいと言われて、コンセプトと合わないとバッシングされてましたね。まあ確かにそんな感じです。だからといって駄曲じゃないんですよね。むしろかっこいい曲なんですが。

 

Do or Die

ブルー・マーダーの前作「Nothing But Trouble」の「We All Fall Down」の焼き直しと言われて当時叩かれてましたが、僕はただ自分の曲をブラッシュアップしただけじゃんと思ってました。個人的に「We All Fall Down」よりこっちの方が断然好きなんですが。みんな焼き直しに結構うるさいんですよね。ある未完成の形態Aから、また別の完成形の形態Bに進化させると考えた場合、A'の段階でリリースされてしまったってだけの話だと思います(Aがデモ、A'が「We All Fall Down」でBが「Do or Die」)。焼き直しした結果完成度が下がっていれば駄曲の烙印を押せばよいだけであって(巷の大抵の焼き直しはこのパターンです)、流用元を上回っていればそれでOKだと思います。

 

If You Ever Need Love

これはあま~いバラード。ホワイトスネイク時代も「Is This Love」なんて甘いバラードを書いてましたが、イントロのギター・オーケストレーションブライアン・メイのようです。Bメロ~サビも壮大。デフ・レパードが書きそうなバラードです。名曲。aikoに例えると「ロージー」。

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Sleep On

これはビートルズですね。サイケデリックな頃のビートルズ。冒頭のニワトリはおそらくサージェント・ペパーズの「Good Morning, Good Morning」。エンディングの上昇コードは「I Am The Warlus」だと思います。

 

 

アウト・オブ・マイ・ツリー

アウト・オブ・マイ・ツリー

 
  1.  Soul Stealer
  2. I Don't Wanna Live My Life Like You
  3. She's All Action
  4. Standing At The Crossroads
  5. I Don't Believe In Anything
  6. Black Days
  7. Jesus & Mary
  8. Do Or Die
  9. If You Ever Need Love
  10. Sleep On