俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

ボウズ・アンド・モーリー

2連チャンのサンダー話。ボウズ&モーリーというユニットを知ってますか?

 

サンダーのフロントマンのダニエル・ボウズ(Vo)とルーク・モーリー(G)の二人が、サンダー解散中に結成したユニットで、2枚アルバムを残してます。このブログでしつこいくらいルークのソロアルバム「El Gringo Retro」を推してきましたが、ボウズ&モーリーもなかなかの良作なのでちょっと紹介してみようかなと。ずっと書きたかったんだけど、ようやく書くことにしました。

 

その前に個人史としてサンダーとどう接してきたかも書いておこう。ここは「俺の記憶ストレージ」でもあるし。

 

1996年、一浪の末なんとか大学入試に成功。大学生となった僕はかねてから念願だった軽音楽部に入部する。ある日僕は同じタイミングで入部した同級生から一枚のアルバムを借りた。それがサンダーの「Behind Closed Doors」だった。サンダー自体は名前は知っていて、ほぼ聴くのは初めてだった。サンダーはBURRN誌でプッシュされていたし、名前から想像するにモータヘッドみたいなサウンドを想像して聴いたら、全然違っていた。当時は、覚醒前の(ゴージャス・メタル化する前の)ホワイトスネイクっぽいとも言われていたけど、それもまたちょっと違う気がした。ホワイトスネイクよりはブルース色は希薄だし、ブギー色も希薄。サンダーは、トラディショナルなロックの範疇でファンクやR&Bを取り入れたサウンド、という感じで一発で気に入ったのだ。この「Behind Closed Doors」とスティーヴィー・サラスの「Back From The Living」、奇しくもどちらも1994年発売のアルバムだが、この2枚をキッカケにファンク系ロックに大いにハマるのである。

 

それからサンダーは僕の大学生活に欠かせないバンドとなっていた。琴似のペニーレイン24でのライブも見に行った。「River Of Pain」や「Love Worth Dying For」はコピーバンドでコピーしたし、家で弾くのはサンダーやスティーヴィー・サラスばかりだった。ヴァン・ヘイレンは目立つので、コピーバンドでコピーしてたけど、音楽的に好きだったのはサンダーだったのだ。

 

やがて僕は大学4年になり就職活動に突入する。就職活動中にリリースされた「Giving The Game Away」は、以前よりアンニュイなサウンドとなり、その後の就職活動の辛さを暗示しているかのようだった。それでもなんとか就職も決まり、社会人になるまでのモラトリアムを満喫していた11月、サンダーは解散を表明する。「なんでだよう・・・」とショックが凄かった。そして、ちょうど社会人になったタイミングの2000年の4月に解散する。ちなみに翌月5月にこれまた大ファンだったブランキー・ジェット・シティも解散表明。立て続けの解散で自分の青春はそうやって終わっていくんだなと思ったものだ。

 

楽しかった大学生活とは打って変わって、社会人になってからは残業地獄の日々。幸いなことに人には恵まれたが、休みが少ない。この仕事いつまで続けられるのだろうか、と悶々と過ごす日々。そんな中、サンダーのギタリスト、ルーク・モーリーがソロアルバム「El Gringo Retro」をリリースするというニュースが流れる。2001年の2月9日、僕はそれほど期待せずに発売日に買いに行った。

 

この頃、鈴木茂の「バンドワゴン」とか佐橋佳幸の「Trust Me」なんて全く知らない時期だったし、ギタリストが作るソロアルバムの殆どが退屈だと思っていたのでまったく期待してなかった。それでハードルがかなり下がっていたのもあるのかもしれないが、仕事で疲れた心と体にスーーーッと入ってきた。インストもあるが、基本的に歌モノ。レイドバックした雰囲気がすごく心地よかった。ちょうど世間的にはラブ・サイケデリコの「Greatest Hits」が大ヒットしていたけど、俺はこっちの方が良いや、と毎日こればかり聴いていた。

 

やがてダニエル・ボウズとルーク・モーリーがまたタッグを組んでアルバムを作るというニュースが流れました。これが今回紹介するアルバム。

 

Moving Swiftly Along (2002)

「Moving Swiftly Along」は2002年発売のボウズ&モーリーの1作目。時はサンダー解散中。2001年にはルーク・モーリーのソロ「El Gringo Retro」がリリース。「El Gringo Retro」はサンダーとはまるで違う、R&B/Soul、ラテン、キューバ、ウエスト・コースト風サウンドを取り入れた会心の一作だった。「Moving Swiftly Along」は基本的にその路線を引き継ぎつつ、サンダーで演奏してもおかしくない曲もある(ただしハードロックなサンダーではないが)。元々はダニエル・ボウズのソロ契約からユニットに発展したプロジェクトだが、サンダー解散後、傷心していたファンにとっては歓迎の一枚だった。その後、再結成するが、再結成後の「Shooting At The Sun」は僕にとっては凡作だったが・・・。

 

「El Gringo Retro」と比べると、ダニエル・ボウズが歌っているだけあって上手いは上手いんだが、やはり暑苦しい。「El Gringo Retro」は爽やかなアルバムだったが、「Moving Swiftly Along」は爽やかという感じではない。「El Gringo Retro」はルークの線の細いボーカルが良い味を出していて、楽器の一部の様で、BGMの様に聴ける。ダニーの声は主張が強い。「俺のボーカルを聴け!」という声だ。よって聴き流せない。それが悪いというわけじゃなく、サウンド的には似た路線のアルバムであっても受ける印象はかなり違う。

 

ライナーノーツは、サンダーでもお馴染みの大森庸雄氏と、メタルゴッド伊藤政則氏。サンダー解散中にリリースされたアルバムだったので、BURRN誌もサンダーに飢えていたファンの気を汲んだのか、インタビューやらライブレポートやら結構紙面を割いてくれました。その点は大変感謝しています。


Hypnotized

イントロのアコギストロークから始まるミディアムテンポの16ビートR&B。ホーンの存在が、明確にこのアルバムはサンダーとは違うよと言っているようであります。

Freakshow

サンダーでもファンキーな曲はありましたが、モア・ファンキーな曲。女声コーラスの存在もまた、明確にこのアルバムはサンダーとは違うよと言っているようであります。

Something About My Baby

サンダーにもソウル風のバラードはありましたが、モア・ソウルな曲。イントロのエレクトリック・シタールの存在もまた、明確にこのアルバムはサンダーとは違うよと言っているようであります。You Make Me Feel Brand New。Get Back In Love (Again)。

Powertripping

パワー・ステーションの秀逸なカバーですが、1stではなく、そんなに有名でもない2ndの、しかもボーナス・トラックの楽曲(英ではシングルのカップリング)。カッチョイイです。

Don't Take Your Love Away

ここからAway三部作。アンニュイ系バラード。

Dancing The Night Away

ファンク・ロック。サビでルークの手癖が出てます。ただ明らかにサンダーと違うのは間奏。鍵盤主体のラテン・ジャズ風のソロ。

You're Drifting Away

これはサンダーの「Giving The Game Away」に入っていてもおかしくない感じのバラード。アコギソロがサンダーっぽくはない。「Live At The Rock City」にライブバージョン収録。

Hesitate

スライ風のダーク・ソウル、ダーク・ファンク。掛け合いの女声コーラスはリンダ・ルイス。

Change

ジョーイ・テンペストらとの共作。そのせいかルーク色は薄め。好きです。エレピも何気に珍しい。「The Magnificent Five Do Xmas!」にライブバージョンが収録されてます。

The River Of Life

最もサンダーっぽいと言われている曲。ただ、ファンキー色多め。

Better Times

ルークにしては珍しいコードで始まる曲。ちょっとイーグルスっぽいかも。

Sick And Tired

このアルバムで異色なシャッフル&アップテンポの曲。イントロはB’zのギリギリchopに似てるが絶対に偶然だろう。

I'd Take The Stars Out Of The Sky

ラストを飾るソウル・バラード。アイズレー・ブラザーズのバラードを思い出しました。「Groove With You」とかその辺りの。

 

Moving Swiftly Along

Moving Swiftly Along

 

 

  1. Hypnotized
  2. Freakshow
  3. Something About My Baby
  4. Powertripping
  5. Don't Take Your Love Away
  6. Dancing The Night Away
  7. You're Drifting Away
  8. Hesitate
  9. Change
  10. The River Of Life
  11. Better Times
  12. Sick And Tired
  13. I'd Take The Stars Out Of The Sky

 

 

Mo's Barbeque (2004)

 2ndアルバムの「Mo's Barbeque」は、前作「Moving Swiftly Along」と比較すると、よりR&B/Soulに踏み込んだ路線になっています。ハードロックと言える曲はおろか、純粋にロックだねぇみたいな曲も全く収録されてません。理由としては前作作成後にサンダーが再結成されたことにより、サンダーに近いロック路線はサンダーで、R&B/Soul路線はボウズ&モーリーで、という棲み分けが出来たのだろう。残念なのは、ボウズ&モーリーはこのアルバムを最後に作品を発表していないのです。であれば一度目の解散前と同様にR&B/Soul路線もサンダーの作品として残して欲しいものだが、現状そうはなっておらず、2004年以降、R&B/Soul路線は封印されたままとなっている。これが僕自身が最近のサンダーがあまり好きではない原因。

 

解散前はあんなにあったのになぁ。「Play That Funky Music」はカバーだけど、「Fly On The Wall」「Too Scared To Live」「Don't Wait Up」「Hotter Than The Sun」「Rolling The Dice」「Time To Get Tough」「It's Another Day」などなど・・・。残念でならない。2回目の解散前の「Bang!」はR&B/Soul路線はないものの、アメリカ南部のルーツ路線っぽい曲とかゴスペル風のバラードもあって、それはそれで面白かったのだけれど。どうも「原点回帰」を掲げると、昔の焼き直し風の曲というかルークの手癖が目立つというか、「やっぱりそのコード来るか~」とか「そのメロディ来るよね~」とか思ってしまう。そう思わせないような曲が欲しいです。聴きたいです。

 

あとこのアルバムは「El Gringo Retro」「Moving Swiftly Along」に比べると渋めの曲が多いです。明るい曲も極端に少ない。より「大人の」アルバムって感じですね。

ライナーノーツは、前作同様、大森庸雄氏と伊藤政則氏に加え、印南敦史氏(!)。印南敦史氏はR&B系のライナーノーツを多数書いている方とのこと。最近は音楽評論に留まらないようです。印南氏はサンダー関連のライナー、これがはじめてだったんじゃないだろうか。

 

ちょっと脱線しますが、サンダーのことを書いてくれるのって大森庸雄氏と伊藤政則氏以外にもいるんですよね。たまに音楽誌で名前を見る人見欣幸氏が「El Gringo Retro」を名盤として評価しています。もうこれだけでこの人の紹介する音楽は信用しても良いくらい。渋谷◯一は聴く前から馬鹿にしていたらしいけど、どうしようもないな。

 

 

hit2japan.exblog.jp

 

 ※ この文章で述べられている、コリーヌ・ベイリー・レイのデビュー・アルバムが素晴らしいというのも全面的に同意します。

 

話を戻して、BURRN誌でのレビューは幅由美子氏のシングルレビューで85点。点数はそこそこ。前作ではBURRN誌のインタビューがあったのに、このアルバムではなかった。あまりにBURRN誌の路線とかけ離れていたので、パスしたのかも知れない。(だったらブラックモアズ・ナイトってなんなの?って感じですが)

 

Desire

オープニングに相応しい勢い重視のホーン・セクションありのファンク・ロック。

Living For The City

お馴染みスティーヴィー・ワンダーのカバー。オリジナルに比べるとギターカッティングが目立ってます。

On a Day Like Today

ひたすら暗いマイナー・バラード。間奏のトランペットが目立つけど、鍵盤主体のラテン風のアウトロも聴きものであります。

Why Did You Do It

ストレッチのカバー。オリジナルは聴いたことなかった。ファンキー。

Since I Left Her

この中では一番サンダーっぽいバラード。典型的なサンダー風ではないが、「Giving The Game Away」の頃のサンダーっぽい。エンディングとか。

Come Together in the Morning

そこそこ有名な、フリーのラストアルバムからの1曲。このアルバムは明るいバラードが少ない。

Waiting for the Sky to Fall

おそらくアイズレー・ブラザーズの「Hope You Feel Better Love」にインスパイアされたであろう曲(ルークは「The Heat Is On」がお気に入りとのこと)。

Illogical

再結成後のサンダーでもよく見られるタイプのマイナーバラード。「The Xmas Show - Live 2006」にライブバージョン収録。

How Could You?

オリジナルだがルークの手癖が希薄。リフ主体のマイナー・ファンク。サンダー時代だと「Don't Wait Up」「Hotter Than The Sun」あたりが近いかも。

That's Not Love

やや明るめのソウルバラードだが、テラプレイン時代に書いたものをリメイクしたとのこと。そのせいかルークの手癖がまだまだ希薄で新鮮。この曲好きです。女性コーラスは誰なんだろう。

I Can't Stand the Rain

アン・ピーブルズのカバー。オリジナルは聴いたことありませんでした。エンディングの「ナナナナーナーナー」は「Pilot Of Dreams」を思い出しました。

  

モーズ・バーベキュー(CCCD)

モーズ・バーベキュー(CCCD)

 

  

  1. Desire
  2. Living For The City
  3. On a Day Like Today
  4. Why Did You Do It
  5. Since I Left Her
  6. Come Together in the Morning
  7. Waiting for the Sky to Fall
  8. Illogical
  9. How Could You?
  10. That's Not Love
  11. I Can't Stand the Rain