俺の記憶ストレージ Part 1&2

色事を担当する色男

「重版出来」第6話とaikoの「あした」

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なにやらサイゾーが視聴率がどうのこうの言ってますが、視聴者にとってはどうでもいいですよね。「重版出来」の第6話は非常に良かったです。

 
(以下ネタバレあり)
 
あらすじとしては、
 
東江絹(あがりえきぬ)は、漫画家デビューを目指す学生で、絵は上手いがストーリーを作るのが苦手。オリジナル作品でのデビューを目指していたが、編集者の安井(※ 演じてるのは我が北海道の安田顕)が原作付きの作品の作画をオファーし、葛藤しながらも仕事を受ける。
 
安井のお得意の手法は、原作付きの漫画を右も左も分からない新人を使ってメディアミックスしてプロモーションし、確実にヒットを出すというもの。だが漫画家に対してはドライかつ冷酷で周囲からは「潰しのヤス」と呼ばれている。
 
彼がそういう態度になったのは過去に理由があった。かつては休日出勤も厭わない熱血社員だったのだが、過去に担当した雑誌は売り上げが伸びず最終的に廃刊となり、担当していた漫画家からは三行半を突きつけられ、さらに家庭を疎かにしたことで離婚を突きつけられる。
 
これが彼にとってのターニングポイントとなり、新しい雑誌では自分は冒険せずに確実にヒットを出す、セーフティネットとしての役回りとなり、自分以外の編集者、漫画家が冒険しやすい環境を作っていた、というお話。
 
うーん、面白かった。
 
ただ、一方で漫画家を使い捨てにしているのも事実。彼に担当された漫画家にとっては残酷な話ではある。完全に美談にはならない所もリアリティがあって良い。世の中、WIN-WINの関係になんかそう簡単にならないわけだから。
 
で、この回で使い捨てにされた東江絹ですが、なんとなく、aikoのデビュー時の話と被るんですよね。
 
デビュー前からオリジナル作品を既に作っていて、「ドーテイオムニバス」というコンピを仲間内で作ったり、「astral box」や「GIRLIE」という全編オリジナルのインディーズ盤をリリースしていて、オリジナル曲のストックは十分あったはずなのに、どういうわけかデビューシングルが当時、SMAPの作品でヒットを連発していた「あした」という小森田実の作品。それも、SMAPの作品に比べると若干質が落ちる。個人的にはそんなに良い曲だとも思えないし、当時の自分のJ-POPの苦手なエッセンスを凝縮したような曲。まあその辺各自好みはあるでしょうが、その後のaikoの路線とは確実に相容れない感じの曲ではあります。
 
 
デビュー前からaikoを知っていた椎名林檎も、なぜ自作曲でデビューしていないのか不思議だったそうだ。
 
この曲は「新生トイレの花子さん」の主題歌で、aikoとしては、ボーカリストとして参加、みたいなノリだった模様。サントラのある一曲だけボーカルで参加しました〜、みたいな。デビュー前の鈴木雅之が変名で大滝詠一のレコードで歌ってましたとか、スターダストレビュー根本要が、アニメのオープニング曲を歌ってました、とかそんなイメージだったのだと思う。
 
だが、どういう訳かaikoとして、メジャーデビューシングルとしてリリースされます、と聞かされ非常に困惑したという。
 
作詞は本人ではあるが、映画製作サイドにかなり修正させられ、作曲も自分ではないし、これが自分のデビューシングルとしてリリースされることにかなり揺れ動いたそうだ。だが、これはラジオでのプッシュの成果もあり以外と売れたらしい。そして、売れたおかげでポニーキャニオンとの契約も、もともと「あした」一本だけの契約だったのを、専属契約として再契約したそうだ。
 
この辺の話は「aiko bon」に書かれているので読みたい人は原著を当たってください。

 

aiko bon

aiko bon

 

 

つまり「あした」が売れなければどうなってたかというと、才能のある人なので世に出てないということはないかもしれないけど、少し違った形で出てたかもしれないし、ここまでの地位を築いてないかもしれない。まあ「もし」の話をしてもしょうがないんですけどね。
 
よく「売れれば好きなことさせてあげるから我慢して」なんて嘘に乗っちゃいけないとかいう話を聞くけど、aikoの場合はそのパターンで世に出てきてるわけですね。aiko本人も「あした」には微妙な感情は残っていたようでデビュー直後のライブでも歌ってません。だけどその10年後にライブで解禁したというのは、一方でこの曲に恩義を感じてるのかもしれない。
 
「重版出来」の東江絹の話も、ストーリーは外注だし、メディアミックスの弊害というか、実写化された時の主役の女優のイメージに合わせて髪型変えてくれだとかいう注文があったりとかで悩む姿が描かれてたり、表紙も自分のイラストじゃなくて、写真になってたりとか、処女作が自分の思い描いていた理想の形じゃないというのも似てます。さらにそんな状況にも関わらず売れた、というのも同じ。
 
 
ひょっとして原作者はaikoからインスパイアされていたりして。まあ、この手の話はその業界だとよくある話なのかもしれませんが。よく知りませんけど。
 
ビートルズジョージ・マーティンに「How Do You Do It」歌わされそうになってたし。エルヴィス・コステロはレックレス・エリックとデビューアルバムをシェアさせられそうになったそうだし。
 

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ビートルズが断ったのでジェリー・アンド・ペースメーカーズに渡り一位を獲得。ビートルズは代わりにオリジナルの「Please Please Me」をリリースする。